高級時計をはじめとする機械式時計は、定期的にオーバーホールが必要だ。この時計のオーバーホールは、どのくらいの時期に行えばよいのだろうか。この記事では、時計のオーバーホールを受ける時期の目安、必要性、おおよその費用などについて解説する。
そもそも時計のオーバーホールって何?なぜ必要なのか
「オーバーホール」とは、「分解点検修理」という意味だ。時計においては、時計の分解、各部品の点検、パーツの洗浄、分解したパーツの組み上げ、組み上げ後の調整などの一連の作業を「オーバーホール」と言っている。
このオーバーホールは、定期的(数年に一度)に実施することが推奨されている。なぜ、定期的に時計のオーバーホールを行わなければならないのか。

その理由は、時計の精度や防水性能などを維持するためだ。
高級時計に多い機械式時計の内部には、数多くの歯車が入っている。これらをスムーズに動かすために潤滑油が使われているが、この油は時間の経過とともに劣化する。この劣化した油の洗浄と新しい潤滑油の注油のためにオーバーホールが必要なのだ。
また、時計は内部に水が入らないよう、裏蓋やリューズなどにゴム部品が使われているが、これも時間の経過とともに劣化したり硬化したりする。このゴム製のパーツを交換するためにも、定期的にオーバーホールを受ける必要があるのだ。
なお、防水性能を維持するためのゴム部品は、機械式時計のみならず、クォーツ式時計にも使用されている。つまり、クォーツ式時計も定期的にオーバーホールが必要となる。
高級時計をはじめとする腕時計のオーバーホールの時期はいつ?
時計のオーバーホールは、どのくらいの頻度で行えばよいのだろうか。実は、オーバーホールの時期はメーカーやブランドおよびモデルごとに異なるだけでなく、時計の使い方によっても変わるため、明確な答えはない。
ただ、一般的な目安として3年〜5年ごとにオーバーホールを受けることが推奨されている。

なお、先ほどメーカーやブランドなどによってオーバーホール時期が異なると述べたが、主な時計メーカーごとの推奨時期は次のようになっている。
・ロレックス:10年以内に受ける
・オメガ:5〜8年ごとに受ける
・グランドセイコー:3〜4年(機械式時計/スプリングドライブ/クォーツ)ごとに受ける
このように、メーカーによってオーバーホール推奨時期が異なるため、詳しくは各メーカーの公式ページや取扱説明書を見たり、正規販売店に問い合わせて確認するとよいだろう。
オーバーホールの費用はどのくらい?
時計のオーバーホールは、分解・点検・洗浄・組み上げ・調整を行うため、手間と時間がかかるだけでなく費用もかかる。
時計のオーバーホールの費用はどのくらいなのだろうか。ここでは、グランドセイコーの「コンプリケーションサービス(オーバーホール+ライトポリッシュ)」の費用を参考として掲載する。
【グランドセイコー「コンプリケーションサービス(オーバーホール+ライトポリッシュ)」の費用】
・クォーツ:5万8300円〜
・メカニカル(機械式):7万9200円〜
・スプリングドライブ:7万9200円〜
上記の価格は、シンプルな機構の時計で、必要最低限のオーバーホールとライトポリッシュを行った場合の費用だ。
そのため、クロノグラフやトゥールビヨンなど複雑な機構になれば、オーバーホールの基本料金が上がる。また、その他に部品交換が必要となった場合は、部品代も追加される。

これらを考慮すると、時計のオーバーホールは最低でも10万円前後、複雑機構の時計や時計が壊れている場合は10万円以上の費用がかかると思っておいたほうがよいだろう。
なお、オーバーホールにかかる時間は、時計の状態によって異なるため、早くても2週間程度、複雑機構の時計や部品交換などを伴う場合は2ヶ月ほどかかる。
時計のオーバーホールの時期は目安として考えておく
ここまでオーバーホールの時期や費用などを解説してきたが、これらはあくまでも目安だ。
日ごろ時計を使っていると、ぶつけるなど強い衝撃を与えてしまうこともある。このようなことをきっかけに、時刻のズレが大きくなったり、時計から異音がしたりすることもある。
もし、時計の時刻が1日で大きくズレたり、異音がしたりするなど、不具合や異常に気づいたときは、正規店に持ち込んで点検し、必要に応じて調整や修理を行ってもらうとよいだろう。

手に入れた時計を長く使い続けるためには、日ごろの手入れやメンテナンスだけでなく、適切な時期にオーバーホールを受け、時計の精度や内部のコンディション維持することが大切だ。
文=齊藤優太(ENGINE編集部)
(ENGINE Webオリジナル)