9月9日にワールドプレミアを果たしたばかりのフェラーリ849テスタロッサは、9月24日に早くもジャパンプレミアを迎えた。伝説の名を受け継ぎ、最新のテクノロジーをまとったこのマシンを、ENGINE副編集長のサトウが現場で直撃取材。会場の熱気とともに、初めて目にした興奮、そして“未来のフェラーリ”の全貌をお伝えします。
フェラーリ849テスタロッサがジャパンプレミア
2025年9月24日、東京・高輪ゲートウェイのコンベンションセンター。会場の入口から赤いライトが伸び、ホール全体をフェラーリ伝統のロッサ・コルサ(赤色)で染め上げていた。
光の演出とともにスピーカーから大音量のBGMが流れると、期待にざわめく来場者たちの会話も自然と小さくなる。ステージ背後のスクリーンには「849 TESTAROSSA」の文字が浮かび上がる。さらに音楽が一段と強まると、スクリーンの映像と光が激しさを増し、幕が上がった。スポットライトの光を浴びて登場したのは、フェラーリの最新モデル「849テスタロッサ」。来場者の多くがスマートフォンを掲げ、その瞬間を記録していた。
伝説的なネーミングを冠したその姿は、まさに跳ね馬の新時代を切り拓く存在感を放ち、私自身も胸の鼓動が速くなるのを感じていた。849テスタロッサは、フェラーリのプラグイン・ハイブリッド第一世代を代表したSF90ストラダーレの後継であり、さらに1984年の名車「テスタロッサ」の名を現代に甦らせたモデルだからだ!
伝説の名「テスタロッサ」完全復活
「Testarossa」という名は、1956年のレーシングカー500TR(通称500テスタロッサ)、さらに1984年に登場した市販モデル「Testarossa」に由来する。赤く塗られたエンジンカムカバーに象徴された“赤い頭”は、当時から跳ね馬のアイコンだった。
今回のモデル名「849」にも、フェラーリらしい意味が込められている。三桁の数字は8気筒で1気筒あたり490ccを示す(正確には499cc)。つまり、車名そのものがエンジンの構成と排気量を表しているのだ。こうした暗号のような響きに、フェラーリが伝統的に大切にしてきた「エンジンこそ心臓」という哲学が息づいている。
1050馬力! 驚異のパワートレインが生む異次元のパフォーマンス
心臓部は新開発の3.9リッターV8ツインターボ。これに3基の電動モーターを組み合わせ、システム総合出力は1050馬力を発揮する。0-100km/h加速はわずか2.3秒、0-200km/hは6.35秒、最高速度は330km/hを超える。
プレゼンテーションでは、フェラーリ・プロダクト・マーケティング・マネージャーのマルコ・スペッソット氏が「849テスタロッサはカテゴリーの絶対的頂点に立つ」と語り、その性能の高さを強調した。数字だけでも圧倒的だが、一見するとややコンパクトに見える車体に収められていると知ると(しかし、全幅はSF90ストラダーレの方が小さかった!)、思わず「本当にこのサイズでこの性能を出すのか!?」と驚かされる。


特筆すべきは、従来より大径のターボチャージャーを搭載しながらも、電動モーターの協調制御によって加速の遅れを抑えている点だ。これにより、大出力と素早いレスポンスを両立している。また、排気系にはチタンを用い、軽量化と鮮明なサウンドを実現している。
誰もが限界に挑める最新制御技術
どれほど強力なエンジンも、制御が不十分では意味を持たない。そこで849テスタロッサには、専用設計のサスペンションや幅広のタイヤに加え、最新世代のABS Evoとブレーキ・バイ・ワイヤを組み合わせている。これにより、強い制動力を安定して引き出せるようになっている。
さらに「FIVE(Ferrari Integrated Vehicle Evaluator)」と呼ばれる新しい統合制御システムも採用。ドライバーの操作傾向を学習し、車両の挙動を先読みして補正することで、誰でも安心して限界に近い走りを楽しめるようになっている。スペッソット氏は「誰もが自信を持って限界まで挑める」と語った。