2025.11.16

LIFESTYLE

全世界で累計5億6千万個売れた“ベイブレード”が楽しめるバーが話題。大人が本気で回す夜

盤上で激しくスピン、ぶつかり合ってしのぎを削る。駄菓子屋の玩具を未来的にアップデートしたベイブレードはボーダーレス、ジェンダーレス、そしてエイジレスなトイ。今年8月にオープンしたばかり、大人も子供も集うBAY BLADE BARをレポート。

25年で日本の人口の5倍を売り上げてきた現代版ベーゴマ

独楽同士を弾き飛ばすベーゴマは、かつて男の子の定番おもちゃだった。その原理を生かして大ヒットしたのがタカラトミーのベイブレード。少子化によっておもちゃ市場がシュリンクしていた1999年に発売、連動したマンガ雑誌やアニメも奏功し、タカラ(当時)のミレニアム初頭を飾る大ヒットとなった。その後、トミーとの合併を経て、何度もアップデートを繰り返しつつ多くのファンを獲得してきた。現在は23年にデビューした第4世代の「BEYBLADE X(ベイブレードエックス)」が最新モデルとなる。




▲それぞれカスタマイズしたベイブレード。透明のカバーがついたスタジアムで試合が行われる。

遊び方はベーゴマと基本的に同じだが、プレイ開始にあたっては巻いた紐を引き抜くのではなく、ランチャーと呼ばれる発射装置を使う。勝ちパターンは相手のベイブレードを弾き飛ばす「オーバーフィニッシュ」、自分のほうが長く回り続けている「スピンフィニッシュ」のほか、相手のパーツをバラバラにする「バーストフィニッシュ」、そしてBEYBLADE Xで追加された「エクストリームフィニッシュ」(相手をスタジアム中央外側の「エクストリームゾーン」に弾き飛ばす)の4種類になる。


独創的なのは「最強をつくらない」というコンセプト。プレーヤーがベイブレードをパーツの組み換えでカスタマイズできるが、組み合わせによって攻撃力・持久力・防御力で必ず一長一短が生まれ、「最強」のベイブレードが存在しない仕組みに。また、カスタマイズ、テクニック、運がそれぞれ約1/3ずつで勝敗が決まるため、回すテクニックだけではなく、パーツの組み合わせをどうするか、手持ちのベイブレードの中からどれを使うかといった駆け引きの要素も重要だ。また。つまり、ある能力が強くなると他が弱くなるアンバランスさで勝負の先が読めない。回転が自動になる分、回すテクニックには重きをおかれず、パーツの組み方と手持ちのどれを使うかという駆け引きが主な決め手だ。

シンプルだが奥が深い持ち味は日本のみならず海外でも人気を呼び、デビューしてからの総出荷数は全世界で5億6千万個にも達するという。通常、おもちゃは10万個売れれば大ヒットと呼ばれることを考えると、この数字は常識を超えている。



▲店内には限定品やコミックの原画などが並んでいる。


▲ビールやカクテルのほか、ノンアルコールドリンクも充実。アニメ「爆転シュート ベイブレード」に出てくるドラグーンSをイメージしたノンアルカクテル。ストロベリー味ですっきり。850円 


▲トーナメント形式で試合が行われ、優勝を目指して熱い戦いが繰り広げられている。

お酒を飲みつつ子どもに還る。世代を越えてバトルできるバーが下北沢にオープン

大小の差はあれど、店頭イベントやタカラトミー主催のイベントは日本国内で年1万回以上(!)、国際大会も定期的に行われている。ベイブレード初の常設店舗「BEYBLADE BAR TOKYO」は、根強いファンだけでなく、ベイブレードを始めたばかりの人から、インバウンドの観光客まで多くのブレーダーが毎日バトルを楽しめる場所として今年8月に下北沢にオープン。バーと銘打つだけあって発売当初に子どもだった大人もターゲットだが、午前11時から営業しているので昼間なら子どもだけの入店もOK(18時半以降、16歳未満は保護者の付き添いが必要)。各回90分で1日6回あるが、事前予約をしておいたほうが確実だ。

取材に訪れた日も20時過ぎだったが、コアの男性ファンはもちろん、親子連れも多かった。興味深いのは女性客も少なくなかったこと。過剰なメカっぽさがなく、操作が簡単なベイブレードであれば、老若男女を問わず、参加へのハードルが低いのだろう。実際、大会で優勝する女性も結構いるらしい。また結婚情報誌『ゼクシィ』とコラボし、夫婦やパートナーなど「大切な人」と二人一組で対戦する大会も好評を博した。ベイブレードが闘争本能を刺激するバトルゲームだけではなく、スポ―ツにも通じるコミュニケーションツールでもあると考えれば、女性が楽しめるのもわかる気がする。


▲松原さんは家族4人で参戦。八王子からクルマで来たという。「子どもと大人が互角で楽しめるのがいい。親子で共通の趣味があるせいか、反抗期はないですね」と笑う。

本物そっくりの昭和仮面ライダーベルト、よりリアルなポーズを取れるように関節をより細かく曲げられるリカちゃんの大人向けラインなど、キダルト(キッズ+アダルト)と呼ばれる「遊び心をもった大人」をターゲットとした商品は、おもちゃ市場で注目を浴びるハイエンドのカテゴリーだが、良くも悪くも男女それぞれが自分の好きな世界観を楽しむようになっている証左でもあるだろう。

その一方、国も性別も年齢も問わず楽しめるベイブレードはまったく違うフィールドにある。昔遊んだ人も、名前だけ知っている人も、まずはこのバーでベイブレードの面白さを体験してみたい。リフレッシュの爽快感とともに、初対面の相手と遊びを通じて友だちになれた子供の頃の喜びが味わえるはずだ。

文=酒向充英(KATANA) 写真=松崎浩之

■BEYBLADE BAR TOKYO
東京都世田谷区北沢2丁目4-5mosia 4F
11時~21時30分 90分制6回開催
https://beyblade.and-gallery.com/

◆注釈
※16歳未満のお客様は18時まで、保護者同伴の場合に限り18時以降21時30 分までご利用いただけます。16歳以上18歳未満のお客様は保護者同伴の有無にかかわらず、21時30分までご利用が可能です。20 歳未満の方や車・自転車を運転される方へアルコールの提供はいたしません。

(ENGINE Webオリジナル)

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