2025.11.09

CARS

ボルボに428馬力はオーバースペックか?EX30ツインモーターの試乗で見えてきた“圧倒的な扱いやすさ”

428馬力を誇るボルボEX30ウルトラ・ツイン・モーター・パフォーマンスに試乗。

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ボルボEX30のトップ・パフォーマーに箱根の峠道で乗って思い出したのは、かつて同じ場所で乗った同じボルボの同じ2モーターの、C40だった。428馬力の快速EVをENGINE編集部のウエダがレポートする。

いまの時代のホットハッチ

今でも思い出す。ボルボが初めて日本へ送り出した純電気自動車のC40は強烈だった。4.4mのハッチバック・ベースのクーペ・ボディに2つのモーターで408psというパワーを与え、足元は前後異サイズの20インチ。

その走りは、ボルボのエンジニアたちが明らかに楽しんで手を入れたな、と思わせるものだった。箱根の急な登りですら頭がのけぞるほどの加速力と、なんなく高速コーナーをクリアする引き締まった脚。

たまたまこの日偽装し走っていたテスト中のシビック・タイプRを見て「追いかけちゃおうかな……」と思えるくらい速くて楽しかった。ボルボが電動化へ邁進する宣言の少し後だったが、これぞ彼らのターニング・ポイントになる1台、と僕は頭の中で結論づけたのだった。

2023年にデビューしたボルボ最小のBEVとなるEX30。

次にボルボの2モーターの電気自動車に触れたのは三年と半年後。目の前には、あのときのC40と違いモーター駆動に特化した新プラットフォームを採用し、同じ2モーターでも428psと20psもパワーが増し、電池容量は8kWh減って69kWhなのに航続距離は50kmも伸びて535kmに達し、重量が280kgも軽く1880kgしかなく、0-100km /h加速はなんと1.1秒も縮まり3.6秒……というEX30がいる。

しかも価格は当時のC40より70万円も安い629万円。サイズはEX30のほうがひとまわり小さく、立ち位置もキャラクターも違うから直接比較に意味はない。でも、数字を並べて乗り比べると、著しい進化は一目瞭然。同じ場所で乗ったからよく分かったが、あれだけ速かったC40より明らかに速い! 単純な速さも進化の速度も、そら恐ろしいくらいだ。

EX30は当初1モーター仕様のみだったが、クロスカントリー上陸に合わせ計5車種に。

でも、それ以上にすごい、と思ったのはC40以上の自在感と胸のすくような加速感がしっかりEX30にはある上で、圧倒的に扱いやすいこと。C40は峠道を楽しめるいっぽうで、街中など低速域での乗り心地をある程度明確に見切っていた。

車体も強い負荷がかかってねじれるような弱さは感じなかったが、凹凸を乗り越えた後、衝撃そのものはすっと収まっても、強固な床に対し上屋の揺れが残るかのような、不思議な感覚もあった。ここはベースのXC40の内燃エンジンも搭載する共用プラットフォームだったせいもあるのだろう。

EX30は明確に違う。試乗車の足まわりは1モーター仕様に比べ前側が引き締められたが、突っ張るような感覚はさほどないし、何より車体のがっちり感が違う。50:50の常時4輪駆動のC40に対し、EX30は後輪駆動が基本で、走行モードの切り替えや状況に応じ前モーターが加勢するが、よどみなさは押し出し感がありありとあった記憶の中のC40とは大いに違う。

駆動が切り替わっていると思えないくらいステアリングの感触もずっと自然だ。それでいて3段階の回生ブレーキ&走行モードの選択次第で、電気自動車という身構えすら、いらない普通なものにもなる。この二面性がいい。

室内トリムは試乗車の2モーターのウルトラは写真の星空風の再生素材か亜麻を織った網目の荒いグレー生地を選択可能。

かつてホットハッチと呼ばれたクルマたちは、実用的なハッチバック・ボディに強心臓を組み合わせ、高速直進性やコーナリング性能を引き上げつつ、割り切った部分も同居していた。

時は変わり、一緒に乗る家族から文句が出るような仕立てのホットハッチはほぼなくなったけど、さすがにステアリングを委ねるまでは……と悩めるひとは多かったはず。EX30の2モーターなら、それすら気軽にできる。電動化が産んだいまの時代にふさわしいホットハッチ、だと僕は思う。

文=上田純一郎(ENGINE編集部) 写真=山田真人

■ボルボEX30ウルトラ・ツイン・モーター・パフォーマンス
駆動方式 前後2モーター4輪駆動
全長×全幅×全高 4235×1835×1550mm
ホイールベース 2650mm
車両重量(前軸重量:後軸重量) 1880(950:930)kg
バッテリー容量 69kWh
一充電走行距離 535km
最高出力(前/後モーター/システム) 156ps/6000-6500rpm/272ps/6500-8000rpm/428ps
最大トルク(前/後モーター/システム) 200Nm/5000rpm/343Nm/5345rpm/543Nm
トランスミッション 1段固定式
サスペンション(前) マクファーソンストラット/コイル
サスペンション(後) マルチリンク/コイル
ブレーキ(前後) ディスク
タイヤ(前後) 245/40R20
車両本体価格(税込) 629万9400円

(ENGINE2025年12月号)
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