一流のクルマ、バイク、そしてファッションが集うグッドウッド・リバイバルは、今年も素晴らしいヒストリック・モータースポーツの世界を見せてくれた。
「夏の日にグッドウッドに来れば、世界の他の場所を忘れられます」
これは1959年にキャロル・シェルビーとともにアストンマーティンDBR1でル・マン24時間を制したレジェンド・ドライバーで、晩年はグッドウッド・リバイバルのアンバサダーとしても活躍したロイ・サルヴァドーリの言葉だ。

おそらくそれは、グッドウッドに集う人々にとって共通の想いだろう。1年にたった3日間だけ、1948年から66年にかけてグッドウッドでモーターレースが栄華を極めた時代を再現するこのイベントは、一流のクルマとバイク、ファッション、そしてカルチャーなど、時代を超えて愛される物、事に満ちた他に類を見ない週末であるからだ。
もちろん、さる9月12日に誕生75周年を迎えたフォルクス・ワーゲン・タイプ2の壮大なパレードランで幕を開けた今年のグッドウッド・リバイバルも我々の期待を裏切ることはなかった。
歴史を大事にするということ
今年のテーマに選ばれたのは、インディ500初制覇、そして2度目のF1ワールド・チャンピオン獲得から60周年を迎えたヒーロー、ジム・クラークと、グランプリ初のマニュファクチャラーズ・タイトル獲得から100年、世界スポーツカー選手権の初タイトル獲得から50周年を迎えたアルファ・ロメオ。

いずれも数多くの貴重なマシンが集まりパレードランを行ったのだが、特筆すべきはレーサーである前にスコットランドの農夫であることを誇りとしていたクラークにちなみ、スタート前に羊飼いと羊の群れがグリッド上に現れたことだ。およそ日本では考えられないことだが、なにより「歴史を大事にする」グッドウッド・リバイバルらしい素晴らしい演出であった。
一方、トラックで繰り広げられるレースは、多くの場面で雨に見舞われたこともあってクラッシュも多く、荒れた展開になったが、スタードライバーたちによるツーリングカー・レース、Stメリーズ・トロフィー、大排気量プロトタイプのウィットスン・トロフィーなどで最後まで手に汗握るトップ争いが繰り広げられるなど、今年も“モーター・レーシング”の素晴らしさ、楽しさを存分に見せつけてくれたのだった。
文=藤原よしお 写真=藤原功三
(ENGINE2025年12月号)