2025.11.07

CARS

「GLC」「VISION V」「マイバッハSL」が登場 メルセデスが更新する“ラグジュアリーの定義”とは

東京ビッグサイトで開催中の「ジャパン・モビリティ・ショー2025」は、会期もいよいよ終盤へ。次世代モビリティの理想像が各ブースで競い合う中、メルセデス・ベンツは今年も独自の未来像を鮮やかに描いてみせた。ENGINE編集部から、注目の3台をピックアップして紹介しよう。

全ての画像を見る
世界的ベストセラーモデル「GLC」の完全電動版として登場した「GLC with EQ Technology」、未来の移動空間を大胆に提案するコンセプトカー「VISION V」、そしてプレスデーに発表されたメルセデス・マイバッハ史上もっともスポーティなロードスター「メルセデス・マイバッハ SL 680 Monogram Series」。それぞれに異なるアプローチで“未来のラグジュアリー”を提示していた点が興味深い。


伝統をまとう新世代EV「GLC with EQ Technology」




まず注目したいのは、次世代を象徴するGLCの電動版「GLC with EQ Technology」だ。300万台以上を売り上げた歴代モデルのDNAを受け継ぎながら、電動化によってラグジュアリーSUVの未来像を洗練させている。

外観で目を引くのは、新たに設計されたフロント・フェイスだ。往年の「280SE」を連想させる端正さに、最新技術が重ね合わさっている。象徴的なフロントグリルには計942個のLEDが埋め込まれ、走行状況や車両の動きに合わせて光が流れるように変化する。そのデザインは「継承と革新」を掲げるメルセデスの思想を視覚的に物語るものだ。

インテリアのハイライトは、助手席までを包み込む「MBUXハイパースクリーン」。ひと続きの大画面は、まるでガラスの中に世界が溶け込むような構造で、視認性と美しさを両立。加えて、動物由来の素材を使わないサステナブルな内装仕様も選べ、ラグジュアリーの価値観を新たに定義している。

一充電あたりの最大航続距離は713kmと公表され、実用面でも確かな手応えを与えてくれる一台となっている。





“移動するプライベートラウンジ”コンセプトカー「VISION V」



次に紹介する「VISION V」は、今回のショーでもっとも未来志向のコンセプトモデルだった。ブースに足を踏み入れた瞬間に現れるのは、広々とした後席空間。「移動するプライベートラウンジ」とも呼べる自由度の高い室内は、乗る人の時間そのものを上質に変えていく。

チューブ状に包み込むシートが備わる後席には、床下からせり上がる65インチのシネマスクリーンを配置。さらに側面や天井にはプロジェクション機能が内蔵され、360度に広がる映像空間を作り出す。音響はDolby Atmos対応の42基のスピーカーで構成され、乗員を音の殻で包み込むような没入感を実現。

面白いのは、用途に応じて空間を切り替える「可変型空間システム」だ。ビジネスの集中空間から、家族とのゲームルーム、あるいはリラックスのための静寂空間へ。車内の体験を移動ではなく滞在ととらえる視点が際立っている。

すでに2026年以降の市販化も予定されており、メルセデスが描く新しいラグジュアリーの世界観がこのモデルから始まる、と言っても過言ではない。




メルセデス・マイバッハの新境地「SL 680 Monogram Series」




最後に紹介するのは、プレスデーを沸かせた「メルセデス・マイバッハ SL 680 Monogram Series」。マイバッハとして初めての2シーター・オープントップモデルであり、その誕生にブランドの価値観の変化を見ることができる一台だ。

フロントグリル中央には“MAYBACH”の文字が刻まれ、繊細なローズゴールドのラインが気品を帯びて主張。中でも目を引くのが、最先端の「PixelPaint」技術で描かれたボンネットのモノグラムパターンだ。高精度インクジェットと複層コートの組み合わせで、所有者ごとに独自のデザインが仕立てられる。

インテリアには「MANUFAKTURクリスタルホワイトナッパレザー」が採用され、刺繍の意匠までも特別仕様。さらに「Burmesterハイエンド3Dサウンドシステム」が用意され、オープンスタイルのまま緻密な音響に包まれる体験は、これからのスポーツ・ラグジュアリーの象徴になりそうだ。

心臓部には585馬力のV8ツインターボが搭載され、専用ドライブモード「MAYBACHモード」では優雅かつ力強い走りを両立する。3650万円(税込)という価格は容易には手の届かない領域だが、価値は紛れもなく「唯一無二」である。




伝統と革新が同居する未来像

これら3台の展示が示すのは、単なるパワートレインの移行ではなく、「クルマが何をもたらす存在なのか?」という問いに対する新たな答えだ。メルセデスは、ただ移動の手段としてではなく、その時間自体を価値化させるためにデザインし続けている。伝統があるからこそ革新が映える。今回のブースには、そのブランド哲学が濃密に宿っていたと感じた。

文=佐藤 玄(ENGINE編集部) 写真=望月浩彦/佐藤慎吾(ENGINE編集部)/メルセデス・ベンツ

(ENGINE Webオリジナル)

advertisement

PICK UP



RELATED

advertisement