創業133年の歴史を誇る時計販売の老舗、日新堂。中央通り7丁目沿いにそびえる銀座本店が2月10日に一部フロアをリニューアル・オープンする。一段と充実する店舗の内容と、新たに取り扱いを開始するブランドについていち早く紹介する。
伝統と革新が共存する銀座本店を体現
▲4階フロアにはVIPルームやサービス、修理対応コーナー銀座本店は2月から、数多くの個性溢れる=ユニークなブランドを導入する。店舗リニューアルの基本的な考え方・コンセプトや、新ブランド・注力ブランド選択の意図をショップマネージャーの新井泰隆さんはこう語る。
「量産や流行に左右されない独立性、そして、時計師の顔が見えるクラフツマンシップも選択のきっかけとなっています。銀座という特別な場所にふさわしく、時計を単なる商品として考えるのではなく、ブランドの世界観や作り手の想い、時計文化そのものの奥行きを感じていただける空間づくりをコンセプトとしました。130年以上続く当店の歴史と信頼を土台とし、『伝統と革新が共存する銀座本店』を体現することが今回のリニューアルの大きなポイントです」
▲多様なブランドが導入され、大きく変貌する5階フロア新たにお目見えするブランド、注力ブランドを紹介していこう(50音順)。
アーミン・シュトローム(ARMIN STROM)
アーミン・シュトロームは、スイスのビール/ビエンヌを拠点とする独立系の高級時計ブランドで、精緻なスケルトン加工と独自ムーブメント開発で世界的に評価されている。1967年に創業者アーミン・シュトロームが工房を構え、当初は手彫りによるスケルトン化の名手として名声を確立。その技術的背景は現在のモデルにも受け継がれ、“ムーブメントを芸術作品として見せる”という思想がブランドの核となっている。
▲グラヴィティ・イークォル・フォース・アルティメット 左がサファイアサーモン、右がサファイアブルー。自動巻き。ステンレススティール、ケース直径41mm、3気圧防水、パワーリザーブ約72時間。いずれも年間25本の限定生産で、594万円 2009年以降、同社はマニュファクチュール体制を整え、完全自社開発ムーブメントを搭載する現代的なブランドへ進化した。なかでも、二つのテンプを共振させて精度を安定させる「レゾナンス機構」は同ブランドを象徴する存在で、技術志向のコレクターから高い評価を受けている。その他にも、等時性を高めたGravity Equal Forceや、ボタン操作で針がカレンダーにジャンプするOrbitなど、独自性の強い複雑機構を次々と発表し、独立系ブランドの中でも技術挑戦型のポジションを確立している。
デザイン面では、ブランドの原点であるスケルトン表現を活かし、ムーブメントの構造がフロントから立体的に見えるモダンなスタイルが特徴。ブリッジやギアが層状に配置された立体感のある構造は腕に乗せたときの見映えが良く、視覚的なインパクトの強さもアーミン・シュトロームの大きな魅力だ。
「機械式時計のロジックと美を、正面から見せることを主とするブランド。高級感よりも構造や動きを理解したり、じっくり見て楽しみたい方におすすめしたいブランドです」(新井さん)
コンスタンチン・チャイキン(Konstantin Chaykin)
コンスタンチン・チャイキンは、ロシア出身の独立系時計師。卓越した創造性と独自の複雑機構によって世界的に高い評価を得ているブランドだ。特に、文字盤を“顔”のように見せるユーモラスな表示機構を備えた「ジョーカー」「コロボック」シリーズは、現代インディペンデントの象徴的な作品として国際的な成功を収めており、日新堂 銀座本店でも従来から販売に注力してきた。
ジョーカーやコロボックの、目が時と分を示し口のムーンフェイズが表情を作る独特のデザインは、時計という枠を超えたアートピースとして多くのコレクターを魅了している。
▲コロボック2 自動巻き。ステンレススティール、ケース直径40mm。440万円(左)/ジョーカー アイアン マスク 自動巻き。ステンレススティール、ケース直径40mm、975万円(中)/ジョーカー ゴールデン マスク 自動巻き。ステンレススティール、ケース直径40mm、975万円(右) チャイキンの魅力は、単なるデザイン性に留まらない。彼は複雑機構を自ら設計・製造できる稀有な時計師であり、作品ごとに完全新規のモジュールを開発する高度な技術力を持っている。
「ジョーカー・アイアンマスク」と「ジョーカー・ゴールデンマスク」も非常にユニークなモデルだ。 “ジョーカーインディケーション”は、マスクの表情を模したユニークな文字盤上で時刻を表示する革新的な機構。デザインには18世紀啓蒙時代の懐中時計を彷彿とさせるクラシカルな装飾技法が巧みに取り入れられている。
マスクの“目”が時・分表示のインジケーターとなり、“笑った口元”が曜日を示すスケールとして機能する。この構成は、チャイキンの代表的なデザイン言語である“笑うジョーカー顔”を象徴するものだ。
「唯一無二の“発想力”を武器にして、時計界に新しい風を吹かせたブランド。時計に驚き・楽しさ・会話性を求める方や“正統派”を一通り経験した方、アートやデザイン、サブカルにも感度が高い方におすすめです」(新井さん)
モリッツ グロスマン(MORITZ GROSSMANN)
時計学校を設立するなどグラスヒュッテの時計産業の発展に大きく貢献した19世紀の時計師がモリッツ・グロスマン。彼が求めたシンプルかつ完璧な機械式時計のビジョンと哲学を受け継いだマニュファクチュールが、2008年にドイツ・グラスヒュッテにて創業した。
▲インデックス(Ref. MG-000464) 手巻き。ホワイトゴールド、シルバーダイアル、ポリッシュ仕上げのスチール針。803万円(左)/パワーリザーブ・ヴィンテージ(Ref. MG-002269) 手巻き。ローズゴールド、シルバーダイアル、ブルーに焼き戻したスチール針。924万円(中)/コーナーストーン(Ref. MG-002144) 手巻き。ホワイトゴールド、シルバーダイアル、ブラウンバイオレットに焼き戻したスチール針。803万円(右)究極の手仕事にこだわるタイムピースは自社工房で少量生産され、完璧なまでの合理性とメインテナンスの容易さを追求した逸品は世代を超えた価値と耐久性を約束する。それぞれの部品に施された完璧な表面仕上げと装飾は、まさにグロスマンの職人技の真髄。この「仕上げ」の工程において完璧な機能を備えた腕時計が、見た目にも秀逸な真の芸術品となる。
モリッツ・グロスマンは革新と卓越した技能を基に、伝統的であると同時に最新の仕上げ技術と高品質の素材を用いた、時計作りにおける「新しい時代の原点」を創り出す。
「徹底した手作業と精密さで非効率とされる工程も残す、“伝統”という言葉がぴったりのブランド。派手さよりも完成度・思想を重視する方。知名度よりも本物志向にこだわり、末永く付き合える一本を求める方におすすめです」(新井さん)
ラング&ハイネ/Lang & Heyne
ラング&ハイネは、ドイツ・ドレスデンを拠点とする独立系の高級時計ブランドだ。2001年にマルコ・ラングとミルコ・ハイネによって創業され、現在は創業者の一人であるマルコ・ラングの精神を受け継ぐ工房として知られる。ブランドの特徴は、ドイツ時計の伝統を継承しながら、極めて少量生産で芸術性の高い時計を作り続けている点にある。
▲ゲオルグ 手巻き。ローズゴールド、ケースサイズ縦40mm x 横32mm、ホワイト・グランフー・エナメルダイアル、3気圧防水、パワーリザーブ約55時間。1232万円(左)/フリードリッヒ・アウグストI世 手巻き。ローズゴールド、ケース直径 43.5 m、ホワイト・グランフー・エナメルダイアル、3気圧防水、パワーリザーブ約46時間、979万円(右)ラング&ハイネの時計は、グラスヒュッテ様式の影響を色濃く受けており、3分の4プレート、面取り仕上げ、ゴールドシャトン、ブルースチール針など、クラシックなドイツ時計のディテールが随所に見られる。1本ずつ手作業で仕上げられるムーブメントは、裏側まで徹底した美しさを備えており、まさに工芸品と呼べる存在。年間の生産本数は数十本程度と非常に少なく、希少性の高さも大きな魅力だ。
コレクションには、ザクセン王家に由来する「ゲオルグ」「ジョアン」「フリードリッヒ」「コンスタンティン」「アルベルト」などのモデル名が採用され、ブランドの美意識と歴史的背景が反映されている。希少性を求める人々から高評価を受けている注目のブランドだ。
「古典と詩情を感じさせるデザインは全てにおいて工芸作品の極みといえるブランド。時計を実用品ではなく工芸・文化として楽しみたい方や、ドイツ時計の中でもより芸術寄りの世界観に惹かれ、情熱やロマンを大切にする方におすすめです」(新井さん)
1階フロアや2階、3階も順次改装を進め、顧客満足度をさらに高めていく予定だという。“進化する老舗”日新堂 銀座本店から目が離せない。
日新堂 銀座本店
東京都中央区銀座7-9-13 Tel. 03-3571-5611
営業時間:11:00~19:30
(営業時間は状況により変更になる場合あり)
アクセス:銀座駅A3出口より徒歩5分
新橋駅より徒歩10分
https://www.nsdo.co.jp/shop/ginza/文=数藤 健
(ENGINE Webオリジナル)