2026.07.12

CARS

YOUはなぜ乗る日本車に? イタリア生まれイギリス育ちのYOUが愛車の日産スカイラインGT-R(BNR34)を語り尽くす

イタリア生まれイギリス育ち、そして30年以上を日本で過ごしてきたディーノさん。 世界中のクルマ文化を知る彼が、日本車をこよなく愛する理由とは?

「日本車には、モータースポーツの魂が流れている。僕はそれが大好きなんです」

あちこちにこだわりが詰まった“Dino34” (筆者がそう呼んでいる)。

日本車が好きな理由を尋ねると、ディーノ・ダッレ・カルボナーレさんはこう答えた。「クルマオタクだ」と笑う彼のクルマ人生は、幼い頃からレースがすぐそばにあった。父と一緒に訪れたイタリアのヒルクライム・レース。英国では毎週のようにクルマ雑誌を読み漁りながら、F1チーム、ウィリアムズのファクトリーがある町で育った。だからこそ、日本車に触れたときに強く惹かれたという。レースで走るマシンと市販車の距離があまりにも近かったからだ。



「日曜にレースを見て、月曜にはディーラーに行ってそのクルマを買える。しかも、けっして手が届かないドリームカーの価格ではない。今はGT-Rの価格も高くなってしまったけれど、僕が買った27年前はそうではなかった」

ディーノさんが大切に乗り続けている愛車は日産スカイラインGT-R(BNR34)。自身の仕事で、GT-Rやシルビアといったクルマの開発に携わった人々と直接関わる機会があった。限られた予算の中でスポーツカーの技術を最大限市販車に詰め込み、ひとりでも多くの人にその魅力を届けたい。エンジニアたちの情熱に直に触れ、心を打たれたという。



日本の各メーカーには、そんなクルマを生み出す小さな情熱の集団がある、と彼は言う。マツダのRXー7、トヨタのスープラ、スバルのインプレッサ、三菱のランサーエボリューション─。大量生産メーカーでありながら、その内部には“クルマ好き”のエンジニアたちがいて、ときに驚くようなスポーツカーを世に送り出してきた。

「基本的に日本のスポーツカーは、富裕層じゃない人でも手が届く価格帯でつくられている。そこがいいんです。それに、買ったあともモディファイして、自分だけの唯一無二のマシンに仕立てながら、長く愉しむことができる」

最高出力530psにまで高められたHKS製ターボエンジン、TOMEIのインジェクター、TRUSTのインタークーラーなど“走る”ためのカスタムが惜しみなく注ぎ込まれている。

ディーノさんのGT-Rも、まさにそんな一台だ。購入してから今日まで、自身が厳選したパーツを取り入れながら少しずつ手を加えてきた。足まわりやブレーキから、エンジンの制御まで、自分の理想へと近づけていく。その時間こそが、このクルマの魅力なのだという。

モータースポーツの技術を市販車に落とし込み、オーナーがそれを自分なりに進化させていく。そんな文化があるからこそ、30年近く前のスポーツカーでも、いまなお多くの人を魅了してやまない。その文化はいま、これまで以上に、日本だけでなく世界中で注目され、熱を帯び始めている。



四半世紀以上の年月を微塵も感じさせない究極の一台だ。

速さや性能だけでは語れない日本車の魅力。そこには、レースから生まれ、オーナーへと受け継がれていくモータースポーツの魂が流れている。ディーノさんが27年乗り続けているGT-Rも、その文化の中で生き続けている一台なのである。

「このクルマで駆けぬける伊豆スカイラインは僕の天国なんだ」

そう言って笑う彼の声と、エンジンをかけた瞬間に響くカーボンクラッチの甲高い金属音が、ボディカラーのように真っ青な空へと消えていった。

文=上之園 真以 写真=勝村大輔

(ENGINE2026年5月号)

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