2026.05.11

LIFESTYLE

世界の終わりになぜ“チャック”の広告が? スティーヴン・キング原作映画『サンキュー、チャック』は“ホラーの帝王”が描く人生賛歌

世界の終末期に突如として現れた謎の広告。そこに登場する中年の男は一体、誰なのか……。ユニークな三部構成で綴る、一筋縄ではいかない物語が伝える深遠なるメッセージ。

ありがとう、チャック!

スティーヴン・キングといえば“ホラーの帝王”の異名を取るアメリカのベストセラー作家だが、ホラー以外の作品を数多く手掛けることでも知られる。映画化作品では、日本でも人気の高い『ショーシャンクの空に』や『スタンド・バイ・ミー』がそれ該当するが、このほど映画化された『サンキュー・チャック』も、超常現象を扱ってはいるものの、非ホラー系の作品に当たる。

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世界中で大地震や津波、森林火災といった自然災害が頻発し、世界は終末期を迎えていた。ネットやSNSがつながらなくなり、悲観した人々が次々に命を絶つなか、街頭の看板やテレビ、ラジオ放送で、摩訶不思議な広告が現れ始める。その広告では、真面目そうな中年男性が微笑んでおり、「チャールズ・クランツ、素晴らしい39年間でした。ありがとう、チャック!」という意味不明な言葉が添えられていた。だがこのチャックが何者なのか、また誰が広告を出しているのかを知る者はいない。世界の終わりとこの広告には一体どんな関係があるのか……。



まったく不可解な展開で始まる本作だが、実はここまでの部分が第3部と名付けられている。そしてチャールズ・クランツことチャックが登場する次のパートが第2部、そして物語を締めくくる最後のパートが第1部という構成だ。

終末期の不穏な空気と諦念に人々が支配されていた第3部とはガラリと雰囲気を変え、第2部、第1部は、どこにでもありそうな日々の情景が描かれる。だがその日常には常に死がつきまとう。物語の舞台となる洋館には、決して開けてはいけない鍵のかかった部屋もある。ありふれた日常の中に潜む暗い影。これこそスティーヴン・キング作品を特徴づける要素だ。

またチャックの祖父役で『スター・ウォーズ』のルーク・スカイウォーカー役、マーク・ハミルが出演している。



これまでもキングの作品を手掛けてきたマイク・フラナガン監督は、本作の原作を読みながら涙が止まらなくなったという。ネタばれとなるので詳しくは書けないが、注意深く作品を観ていれば、辻褄のあわないディテールが映画の全編にちりばめられてることに気づくはずだ。それこそが第一部の謎を解き明かす鍵となる。そしてその秘密には、人間賛歌と呼ぶに相応しい、心震わすメッセージがこめられている。

原作はスティーヴン・キングの中編小説『チャックの数奇な人生』(文藝春秋刊)。チャックを演じるのは、『マイティ・ソー』のロキ役でも知られるトム・ヒドルストン。

なお本作はトロント国際映画祭で観客賞を受賞。111分。5月1日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー 配給:ギャガ、松竹

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文=永野正雄(ENGINE編集部)

(ENGINE2026年6月号)

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