「フェラーリHC25」は、約2年をかけて完成した新たなワンオフ・モデル。米テキサス州のサーキット・オブ・ジ・アメリカで開催された、フェラーリ・レーシング・デイズで公開された。
必要なのはお金だけじゃなく跳ね馬への忠誠心
「フェラーリHC25」のベースとなったのは「F8スパイダー」で、3902ccのV8ターボをリア・ミドに搭載。ハイブリッド・システムを持たない、純内燃エンジン搭載車だ。720ps/770Nmのスペックは、F8と同等となる。

トランスミッションは7段デュアルクラッチ式自動MTで、0-100km/h加速が2.9秒、最高速度340km/hというスペックもそのまま。このあたりのメカニズム的には「F8スパイダー」と変わりない。

対して、大きく変わったエクステリアのサイズは全長×全幅×全高が4758×2006×1183mm、ホイールベースは2650mmと、ベース車両比で147mm長く、27mm広く、23mm低い。フラヴィオ・マンツォーニ率いるフェラーリ・デザイン・センターは、ここに最新フラッグシップの要素を盛り込んだ。

タイヤの存在感を際立たせる前後フェンダーの盛り上がりは「F80」に似た造形。ノーズ上に設けたブラックのセクションも「F80」や「12チリンドリ」に見られるデザイン要素で、マットなムーン・ライト・グレーのボディを、グロス・ブラックのアクセントが引き締めている。
いっぽう、スリムなヘッドライトは完全新設計で、これまで同じモジュールが使用されたことのないものだという。中央にボディ同色の突起を設けたのは、4灯テール・ライトとの共通性を意識した演出。垂直方向のデイタイム・ライトは、ほかのフェラーリには見られないレイアウトだ。

サイドに目を移すと、印象的なのが黒いパネル。後輪付近からいったん前方へ張り出し、ふたたび後方へ向かうブーメラン型の造形は、ヘッドライト脇から下へ伸びる黒い帯と相似形だが、上部はさらにエンジン・フードへと連なる。ここには、ラジエーター用のエア・インテークや、エンジン・ルームの放熱スリットが配置され、このミドシップ・スパイダーの心臓部を取り囲むかたちとなっている。
この黒いベルトにコントラストをもたらすアルミ削り出しのラインは、ドア・ハンドルとして機能する。ホイールは「F8」と同じく20インチだが、デザインは「HC25」用のオリジナル。ダイヤモンド・カットとブラックを組み合わせた5スポークで、リムに沿った円形の溝が、さらに大径に見せる視覚効果を生んでいる。

極細のテール・ライトは、ボディ幅いっぱいに広がる一文字のラインに組み込まれ、その下にはメッシュ状の冷却ダクトが口を開ける。ディフューザー部分には、特徴的な台形のエグゾーストが統合されている。

インテリアは「F8スパイダー」の造形をキャリー・オーバーしているが、カラー・スキームはエクステリアと統一感のあるもの。

ブラックを基調に、グレーのテクニカル・ファブリックをあしらい、アクセントはイエローでエンブレムやブレーキ・キャリパーとのコーディネートを図っている。

ワンオフ・フェラーリは、オーナーの要望を高精度で実現すると謳い、2012年には「512BB」マニアで知られるエリック・クラプトンのために「458イタリア」を「512BB」風に仕立てたこともある。オーダーするには、少なくとも数億円が必要と言われるが、それ以前に、マラネロへ多額のお布施を収めているVIPクライアントでないと注文すらできないとか。多くのフェラーリ好きにとっては、夢のまた夢の存在なのだ。
文=関 耕一郎 写真=フェラーリ 編集=上田純一郎
(ENGINE Webオリジナル)