2026.05.30

LIFESTYLE

カンヌで絶賛! 綾瀬はるかが是枝裕和監督と再タッグを組んだ映画『箱の中の羊』

新しい家族のかたち

全ての画像を見る
幼い息子を亡くした夫婦のもとにやってきたのは、息子そっくりのヒューマノイド。是枝裕和監督がオリジナル脚本で描く、少し先の未来の家族の物語。5月に行われたカンヌ国際映画祭では上映後、9分間にわたるスタンディングオベーションが続いた。

是枝監督が提示する未来像

人工知能(AI)をもったロボット、いわゆるヒューマノイドは、これまで数多くのフィクションの題材となってきた。映画でいえばリドリー・スコットの『ブレードランナー』やスティーブン・スピルバーグの『A.I.』、小説であればカズオ・イシグロの『クララとお日さま』など、受け手の心を揺さぶる、切ない余韻を残すものが多かった。それはヒューマノイドが単なる人間のコピーではなく、人間の心を映す鏡のような存在でもあるからだろう。是枝裕和監督の『箱の中の羊』を観て、改めてそう感じた。



本作に登場するのは2年前に7歳の息子、翔を亡くした、甲本音々と健介の夫婦である。息子の死を受け入れることのできない彼らのもとにある日、見知らぬ企業から「最新型ヒューマノイドを無償でレンタル」という案内が届く。人の不幸につけこむようなサービスだと健介は乗り気ではなかったが、音々に押し切られる形で説明会に参加。そして彼らの家に、息子そっくりのヒューマノイドがやってくる。最初は対照的な反応を見せる2人だったが、まるで息子の記憶を引き継いでいるかのようなヒューマノイドに接するうちに、彼らの心にも少しずつ変化が生じ始める……。

是枝監督が脚本も手掛けた本作のタイトルは、サン=テグジュペリの『星の王子さま』のエピソードに由来するものである。そこには監督自身の「目に見えないつながりや、目に見えないものの大切さを描きたい」という思いがこめられているそうだ。

先ほど、ヒューマノイドは人間の心を映す鏡のような存在、と書いたが、本作の夫婦もまた、息子そっくりのヒューマノイドを通して己の心を見つめ直し、そしてゆっくりと息子の死を受け入れてゆく。夫婦を演じる綾瀬はるかと大悟の繊細な演技、坂東祐大による柔らかな音楽、そして自然とのつながりを感じさせる映像のすべてが、静かな癒しの物語を紡いでいく。

一方で本作は、ヒューマノイドという新たな知性の可能性にも踏み込む。果たして彼らは人間を超えた独立した存在になり得るのか? 是枝監督が提示する未来像も、映画全体の手触りのごとく優しくて温かい。

■第79回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に正式出品された『箱の中の羊』。本作では是枝裕和監督が脚本、編集も手掛けている。最愛の息子を亡くした夫婦を演じるのは、綾瀬はるかと千鳥の大悟。是枝裕和監督と綾瀬はるかは、『海街diary』以来のタッグだ。映画に寄り添う美しい音楽を手掛けたのは、米津玄師や宇多田ヒカルといった人気アーティストの編曲も行う坂東祐大。全国ロードショー中、配給:東宝 ギャガ

(C)2026フジテレビジョン・ギャガ・東宝・AOI Pro.

文=永野正雄(ENGINE編集部)

(ENGINE2026年7月号)

advertisement



RELATED

advertisement