2026.10.18

CARS

「あぁ、乗らなきゃ良かった」同じ6速MT モデルの最新911カレラTと乗り比べ その結果は…【長期リポート 79号車 ポルシェ911カレラ4S #85】

最新の992後期型カレラTとエンジン編集部の長期リポート車の2005年996型カレラ4S。約20年の時を経て、911はどう変わったのか、あるいは変わらなかったのか。とにかく、乗ってみた。

巻頭特集で911カレラTの試乗車を借り出すと聞き、私にもぜひ乗らせて欲しいと頼み込んだ。実はこの春、いつも通っているディーラーから、昨年販売したカレラTがアプルーブドカーとして入庫したと聞き、買おうかどうか大いに迷ったばかりなのだ。以来、潔く6速MTモデルだけになった992後期型カレラTがどんな乗り味なのか、一度乗ってみたくて仕方がなかったのである。

カレラTのボディ・サイズは、79号車より107mm長く、22mmワイドで、3mm高い、全長×全幅×全高=4542×1852×1298mm。数字以上に大きく感じるのは、フロントのトレッドが121mmもワイドな1591mmになっているからだろう。ホイールベースは同じ2450mm。試乗車の車重は10kg軽い1510kgだった。

で、念願かなって乗ってすぐに、やっぱり乗らなきゃ良かった、という思いが頭をよぎった。「最新が最良」のポルシェの格言通り、非の打ち所がないどころか、私が最も愛する素のカレラが持つプリミティブな911の良さをMT化と軽量化でさらに強調した、ザ・ベスト・オブ・ベストとも言うべき1台だったからだ。

まず、6速MTのシフトフィールが絶品だと思った。短いストロークでスコッと入る気持ち良さは、長いストロークでグニャと入る79号車のそれとは対照的である。

そして、MTの最大の効用は、自らシフトレバーを操る快楽にのみあるのではなく、何よりも精緻に組まれた機械だけが持つポルシェ・フラット6の濃密な回転フィールや強烈なトルク感を、自らギアを選ぶことで、そのままダイレクトに味わい尽くせる点にこそあるのだと思った。

正直に言って、私は先代までの7速MTだったら、PDKの方がいいと思っていた。今回、同じギアボックスでギア比も変えずに7速を切り捨てただけなのに、こんなに気持ち良さが変わるとは想像もしていなかった。つまり、7速は完全な燃費ギアで、走りを純粋に楽しむためには不要であり、PDKモデルが持つあのユルい感じは、燃費重視でどんどんギアを上げてしまう賢すぎるPDKと、突き詰めれば7速ギアの存在それ自体にあったと言わざるを得ない。

カレラTの6速だって79号車よりギア比が高く、時速100km時で約2000回転、79号車は2450回転だ。が、それでもパワー、トルク共に大幅に増強されたカレラTでは、まったくユルい感じはなく、濃密に詰まったトルク感を常に味わえる。

さて、こんないいものに乗ってしまって、再び79号車に乗ってガッカリしたらどうしようと思ったのだけれど、なんとそれは杞憂だった。

もちろんひと回りボディが小さいくせに10kg重く、4駆でもある79号車は、全体的に重厚、悪く言えばすべてが重ったるく古臭い911だ。しかし、こと精緻な機械だけが持つ濃密な回転フィールやトルク感がもたらす乗り味については、まったく変わらないばかりか、ターボ化されたフラット6を載せたカレラTより、さらに濃いとさえ思えたのだ。

凄いぞ、79号車。最新モデルに乗って79号車に惚れ直した1日だった。

文=村上 政(ENGINE編集部) 写真=佐藤慎吾(ENGINE編集部)

■PORSCHE 911 CARRERA 4S
購入価格(新車時):340万円(1244万2500円) 
導入時期:2017年4月 
走行距離(購入後):14万2718km(6万333km)

(ENGINE2026年7月号)

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