2026.09.05

CARS

先にハマったのはまんまと父の趣味を引き継いだ娘のほう 親子で愉しむ2台のシトロエン2CVの沼

桜が満開となっていた公園のすぐそばの静かな住宅地に、オトナ4人+おチビちゃんたち2人の6人家族の辻󠄀家のこだわりの5台が並んでいた。でも、このラインナップのきっかけを作った父娘は、いやいや、こだわっているのは自分たちだけじゃないですよ、と笑うのである。

父から娘へ、そして孫たちへ……と家族の思い出の品が代々継承されていく、というのはよくある話だけれど、辻󠄀家の場合は少し違う。新旧3台のシトロエンと真っ黒なアウディ、スズキの軽自動車というこの家の5台は、互いに影響を与えながらも、家族1人1人のこだわりがぎっしりと詰まっているからだ。



とはいえ、父である寿夫さんがグレーの2CV AZLの主であり、娘である千恵美さんがブルーの2CVスペシアル乗りなのだから、辻󠄀家の中で父娘がいかに強力なタッグを組んでいるかはご想像の通り。そこでまずは、ここに至る2人の愛車遍歴を尋ねてみよう。

きっかけはフェアレディ

寿夫さんは大学時代は日産サニー・クーペ、社会人になるとトヨタ・カローラ・レビンと、国産車を乗り継いでいた。ところが日産フェアレディ240Zが巻頭特集の雑誌を見て方向転換。でもZでなく第2特集のシトロエンGSAにピン! と来たのだそうだ。しかし店へ足を運ぶも販売員は整備に苦戦しているようで売りたがらず、代わりにプジョー504を薦められて購入。その後結婚し、お子さんを授かると、大いに気に入っていた504だったが、夏場は厳しかった。渋滞で冷房を使うとオーバーヒート。奥様の美奈子さんから乳児を乗せるクルマではないとダメ出しされ、日本車人生へ逆戻り。以降はホンダ・アコードやストリームに乗り、趣味車は封印された。

辻󠄀家にシトロエン熱を再度もたらした2CVスペシアルは1990年型。千恵美さんは「これで何の不満もないです」と笑うのだが、ジョーさんはといえば「ただのカンヅメ。危ないよ」と2人の子供たちを普段乗せるのは禁じているのだとか。

ふたたび辻󠄀家に輸入車がやって来たのは千恵美さんがそろそろ免許を取ろうか、という頃。彼女の叔父がBMW Z3を手放すことになり、父娘で共同所有することになる。

「一度オープンカーは欲しかったし、家族から譲ってもらう、というのは妻を説得しやすかったんです(笑)」

と寿夫さん。しかし千恵美さんは自分自身のクルマが欲しくなってしまう。実は彼女、中学生の頃から心に決めていたクルマがあった。とあるデザイン史の教科書に載っていた1台に魅了されていたのである。それが初期型のシトロエンDSだった。

「高校生の時にはフランスで本物のDSを見て“あれだーっ!”って思いました。初期のDS以外だと、カニ目(オースチン・ヒーレー・スプライト)か、ポルシェ356か、2CVでしたね。丸い目が好きなんです」



寿夫さんはこれ幸い、と千恵美さんと中古車店を回り、前オーナーが自身の娘のために徹底して手を入れた程度極上のスペシアルを探し出す。つまり実は父よりも、実際にシトロエンに乗り出してハマったのは娘のほうが先なのだ。千恵美さんはシトロエンのクラブに入会し、自然と寿夫さんも出入りしはじめ、2人はこの奥深い世界にハマっていく。ちょうど10年前のことだ。

「Z3は3リッターのATで力もあるのに、パワーのないMTの2CVの方が運転がすごく楽しい。イベントで福井まで行ってもまったく疲れない」

というのは寿夫さん。

「本当に、これ1台で何の問題もないんですよ。日々のファースト・カーとしてまったく問題なし!」

というのは千恵美さん。いやはやもう、2人の息はぴたり合っている。

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