フルモデルチェンジと違って、マイナーチェンジは難しい。コストは掛けられず、時勢に応じた改良を組み込みつつ、目新しさも必要だからだ。日本におけるDSオートモビルズのエントリー・モデル、N°4はうまくそれをやってのけた。
理想のマイナーチェンジ
DSオートモビルズの旗艦、N°8のイメージを大いに受け継いだ新しいN°4の実態は、従来のDS 4のマイナーチェンジ版だ。DSブランドはN°8以降、それまで数字のみで、3、4、7、9としてきた命名ルールをN°(ナンバー)というプレフィックスを用いるように変更。それにともなって、4からN°4になると同時に内外装に手が加えられた、というわけだ。

たいていこの手の改良は販売促進と装備の見直しなどが主で、ついでに新たなデザイン・テーマが組み込まれたり、コストダウンが行われるなど、無理したところが見え隠れするもの。だがN°4からは、そういった部分が感じられない。
ステランティス・グループ内からの身売りさえ一時はささやかれたDSだが、この名称の変更とブランディングの再構築という好機を逃さなかったのだ。というのも、さじ加減と取捨選択が、ほんとうにお見事なのである。

いちばん目を惹くのは左右のV字型シグネチャー・ライトとセンターの光るDSロゴ、そしてそこから連なるドット・パターンだ。けれど、その周囲のライト・ユニットもフェンダーも、実は改良前と共通なのである。

テール部に至っては、左右ライト間に黒のパネルを設け、エンブレムを一新しただけ。それなのに違和感もなく、古びた印象がまったくなく仕上がっているのはなかなかスゴイ。
インテリアもそうなら、装備やパワーユニットもしかりだ。液晶が拡大し、中央コンソールの手書きにも対応していたタッチパッドを廃止し、代わりに音声に答えるインフォテインメント・システムが進化している。

路面状況をカメラで認識する電製ダンパーはなくなり、セッティングを決め込んだ機械式の一発決めとなるいっぽうで、パワーユニットは旧来のディーゼルとプラグイン・ハイブリッドの二本立てから1.2リッター直列3気筒ターボ+モーターの最新のマイルド・ハイブリッドへ。何かを得るために何を捨てるか。その見極めがやっぱり素晴らしい。

見た目がイイし、最新の心臓部も得て、走ってもイイ。近しいサイズでプラットフォームは違うが同じハイブリッドのシトロエンC4に、たまたま順に乗ったので比べてみたのだが、N°4はステアリングの反応も、脚の動きも、上質かつ、ほどよく引き締まったスポーティな仕上げになっている。
いうなればBMWに対するアルピナみたいなのだ。C4が心穏やかなまま気がついたら速い、という仕立てなのに対し、こちらはわずかに気分が盛り上がりつつ速い、という差はあるが、いずれもかなりのマイ・タイプ。ただしより心が傾いたのはN°4のほうだ。

というのも、それはやはりDSというブランドのいまのイメージリーダーとなるN°8の存在が効いている。けっして万人に好かれるタイプではないが、もしフラッグシップのN°8で骨抜きにされ、クラクラしているひとの目の前にこのN°4が差し出されたら、たぶんイチコロではないだろうか。
1000万円級と高価で純電気自動車であるN°8に対し、N°4はなんとか手の届きそうな625万円~のプライスで、しかも充電の要らないマイルド・ハイブリッド。はるかにハードルが低い。

かつてシトロエンXMに恋い焦がれつつも、デザイン・テイストが同じ弟分のエグザンティアに手を伸ばした身としては、DSの、フランス人たちの作戦に、またしてもまんまとハマった気分である。
DS N°4エトワール・ハイブリッド
駆動方式 フロント横置きエンジン前輪駆動
全長×全幅×全高 4415×1830×1495mm
ホイールベース 2680mm
トレッド(前/後) 1600/1600mm
車検証記載重量(前軸重量:後軸重量) 1490kg(930kg:560kg)
エンジン形式 水冷直列3気筒ターボ+モーター
ボア×ストローク 75×90.5mm
総排気量 1199cc
最高出力 136ps/5500rpm
最大トルク 230Nm/1750rpm
モーター最高出力(システム最高出力) 15ps/4264rpm/145ps
モーター最大トルク 51Nm/750-2499rpm
変速機 6段デュアルクラッチ式自動MT
サスペンション(前) マクファーソンストラット+コイル
(後) トーションビーム+コイル
ブレーキ(前/後) 通気冷却式ディスク/ディスク
タイヤ・サイズ(前後) 205/55R19
車両本体価格 625万円
文=上田純一郎 写真=茂呂幸正
(ENGINE2026年8月号)