渡辺敏史がマツダ2 XDスポーツ・プラスとトヨタ・ランドクルーザー70 AXをドライバーズカーとして選んだ理由とは?
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2014年の再販に続き、再々販となったランクルの“70”と、マツダの入門モデル“2”。なんの関係もなさそうなこの2台もドライバーズ・カーだ、というのはモータージャーナリストの渡辺敏史だ。その理由をとくと語ってもらおう!
もし1000kmの長距離を走るとしたら何を選ぶ?
「ドライバーズ・カー」の定義は人それぞれであり、当然ながら速くもなんともない選択だって全然あり得る。いや、むしろ飛ばさなくとも満たされるクルマこそ金の草鞋を履いてでも探したい、そんな方もいらっしゃるのではないだろうか。
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毎日クルマに乗ることも、長い時間をクルマと共にすることも、まったく苦にならないどころか、むっちゃ嬉しいし俄然やる気が出る。思えば自分もそういうタイプだったわけだが、いざ東京から九州の実家に帰る機会が増えたこのところは、時間や予算的な兼ね合いもあって、お恥ずかしくも折につけ航空会社のタイムセールの画面に張り付いている。
1000kmの距離を自ら走るより乗せられて飛ぶ方が全然安いといういびつさはさておき、いざクルマで長距離移動をという話になると、我々なりの生活防衛として、頭に思い浮かぶのはディーゼルという選択肢ではないだろうか。
2011年の東日本大震災当時、日本の乗用車のほとんどはガソリン車両だった。それがゆえ、災害地周辺では極端なガソリン不足に陥り、スタンドに長蛇の列が出来たのは記憶に新しい。当時、医師を各地の治療現場に送る車両の運転手をボランティアでやっていた私は、薬問屋の軽自動車さえガソリンを得られず薬を病院に運べないという状況をみるにつけ、災害の多い日本の乗用車の、2割程度はディーゼルにしてリスクヘッジしておくべきだろうと実感させられた。
と、そこに相前後してディーゼルをフィーチャーした商品群を展開したのがマツダだ。タイミング的に当然狙っていたわけでもないだろうが、先駆のメルセデスと共に21世紀のディーゼルのニーズを牽引し、後にBMWやボルボなども巻き込みつつ、定常的なディーゼルの市場を形成した。多分、民間単位の運搬力や移動力は13年前のあの時よりも確実に上昇しているはずだ。それだけでもマツダの果たした役割は大きい。
と、そんなマツダの中で最も小さな1.5リッターのディーゼル・ユニットを搭載してきたのがマツダ2だった。過去形なのは、ちょうど9月にこのディーゼル・モデルの生産を終了したからだ。今後は在庫販売のみとなる。
ディーゼルといえば欧州が主力と思われる方もいるだろうが、ディーゼルゲートや排ガス規制の強化を受けて、彼の地の需要も大きく変わった。今やマツダ2のようなBセグメントにディーゼルを設定する銘柄は無に等しい。高価な後処理装置を山積みさせられてはコスト的にも合わないものとなってしまっているわけだ。なお欧州でのマツダ2にディーゼルの設定はなく、トヨタ・ヤリスのOEM版としてマツダ2ハイブリッドをエコ物件に位置づけている。もはや勘定的にディーゼルでも見合うのは、マツダの場合ならCX-5以上と、これが欧州の現実である。
折角上手にCO2を減らせる手段を自らの施策で売り物にならなくしているという、この間抜けな現実に翻弄されてしまったマツダの小排気量ディーゼルを、日本ではなんと6段MTでぶん回すこともできる……というのが、このマツダ2の醍醐味だ。1500回転前後にトルクの痩せが窺えるも、そこから向こうの5000回転付近まで感じられる望外の伸びの良さは、摺動部品の小ささに加えて低圧縮のスカイアクティブDならではのフィーリングといえるだろう。このディーゼルらしからぬ吹けと落ちの良さも手伝って、回転を合わせながらキビキビと振る舞うことができ、MTが宝の持ち腐れにならない。10年選手のシャシーはさすがに端々で古さは感じるものの、操作に対する応答性や一体感などは今でも充分ヤリス辺りに対峙できる。
毎日の些細な移動も走りで彩ってくれる上、20km/リッターオーバーは楽勝とHEVもびっくりのエコカー的一面も持ち合わせているのだから、これはもう見事に現代的なドライビング・プレジャーといえるだろう。
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