グランカブリオとしては10年目、ベースのグラントゥーリズモのデビューからは実に12年が経っているが、その魅力は色褪せないどころか、どんな手を使ってでもいいから少しでも延命して欲しいと強く願わずにはいられないほど、濃厚な味わいが心に突き刺さった。その最たる源は、やはりエンジンだろう。スポーツカーのほとんどがターボ化されたなかにあって貴重なNAの大排気量V8。それもフェラーリ458などにも搭載されていたのと同系統のユニットである。
ターボと違って回転上昇とともにリニアにパワーが盛り上がっていくあの感覚。甲高い雄叫び。トップエンドでの突き抜け感。ノスタルジーに浸っているわけではなく、やはりいいものは素直にいいと言いたい。トルコンの6段ATではもしかしたら力不足かと思いきや、全然そんなことはなかった。今や少しロングに感じられるギア比は、エンジンがドラマティックに吹き上がっていく様をじっくりと味わうにはかえって都合がいい。ノーズが軽くて機敏なハンドリングも含め、高い完成度にも驚くのだった。

もうね、このエンジンを愛でるためだけでも、このクルマは存在すべきとさえ思った。なまめかしいフロント・フードの下、バルクヘッドにめり込まんばかりに搭載される4.7ℓV8ナチュラル・アスピレーション(自然吸気)ユニットはもともとフェラーリ製だが、ポルシェやマクラーレンの挑戦を真正面から受けなければならないフェラーリV8はすでにターボ化されてしまった。
世界格式のモータースポーツほぼすべてがターボで争われる時代に、ターボが悪いなんていうつもりもないけれど、耳をつんざくように甲高く絞り出されるわななきは、やはり自然吸気でないと出せないブルージーな雄叫びであることもまた事実。 元祖フェラーリのみならず、次の世代であるギブリやレヴァンテを見るに、このエンジンの余命ももはや長くあるまい。ホント、油紙にでも包んで保存すべき逸品である。それにしても、この真っ赤なレザーに包まれたグランカブリオのキャビンは、そんな世界文化遺産を楽しむのにこれ以上ないほどぴったりな野外スタジアム席だ。

〔読者コメント〕
●海沿いを走りたいクルマ。ここから葉山ぐらいまでドライブしたい。(K.R.さん)
●後席が一段高くなっており、後席からも見晴らしが良い。人から見られるクルマ。(安藤研史さん)
●忘れていたイタリア魂の残党。色、音、デザインに北イタリアの文化を感じます。少し古いけれど、数少なくなった官能車。(乃美浩一さん)
●内装のセンスの良さとエンジン等からの音。他のクルマとは別格でした。(中田太郎さん)
●まっすぐな道をどこまでも走りたくなるようなエンジン・サウンドと加速感。車内で聴くエンジン音が、一番のオーディオ・サウンドでした。(益田史明さん)
●スポーツカーとしてのキャラクターは最高に気持ちよい。音、挙動ともにワクワクさせてくれる。(栗原泰夫さん)
●エンジンを楽しむ上でもカブリオは良いものでした。(鈴 琢磨さん)
●海沿いをゆっくり走りたいオープンカー。モナコからニースへのイメージ。(佐賀 勉さん)
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写真=柏田芳敬(メイン)/茂呂幸正(サブ)
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