キャサリン・ジェンキンスの歌声は聴き手の心にしっとりと浸透し、透明感あふれるその歌声はやがて心を癒し、活力を与え、前向きな気持ちを促してくれる。彼女は幼いころからウェールズの教会の聖歌隊で歌い、やがて王立音楽院でクラシックを学び、オペラや歌曲を専門に歌うようになる。
だが、大学時代にデモテープを作り、それが友人を介してレコード会社に渡り、オーディションを通過して録音にこぎつけることになった。04年にCDデビューを果たしたが、それがセンセーションを巻き起こし、以来スター街道をまっしぐらに歩むことになる。ワールドツアーも行われたが、彼女には大きな悩みがあった。それまでのオペラの歌唱法からポップスや映画音楽をはじめ多彩な曲を歌わなくてはならず、歌唱法を一から学び直さなければならなかったからだ。
キャサリンは完璧主義者である。いっさい妥協はしない。その性格ゆえ、さまざまな曲に対応する歌唱法を徹底的に磨き、納得のいく歌が歌えるまでひたすら努力を重ねていく。
「でも、私はいつも子供のころに育った小さな村や教会を忘れず、大家族のなかで暮らした日々を思い起し、いつも自分のルーツを大切にしてきました。その精神はいまもまったく変わりません」
こう語るキャサリンが、デビューから15年を経て「もっとも親密的な作品になった」という『光に導かれて~ガイディング・ライト』と題するアルバムを作り上げた。印象的なのはアメリカのシンガー・ソングライター、ジェン・ボスティックが父親を亡くしたときの心境を綴った〈天使への嫉妬〉。キャサリンも15歳で最愛の父親の死を経験しているため、ここでは大切な人を失う悲しみを切々と歌い上げている。
このアルバムでキャサリンの新たな魅力を放っているのが、ウェールズの名歌手、バス・バリトンのブリン・ターフェルとのデュエット〈今日も新しい朝が〉。ブリンの重厚で深々とした低音とキャサリンの情感あふれる声が見事な融合をなし、聴き手を天上の世界へといざなう。
キャサリンは個人的な体験をそれぞれの歌に託し、人々と感情を分かち合い、子どものころから歌ってきた曲で人々の心に光を灯す。ひとり目を閉じて歌声に耳を澄ますと、からだがスーッと軽くなり、浄化されていくよう。彼女の「歌の力」である。
文=伊熊よし子( 音楽ジャーナリスト)
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