2019.06.21

CARS

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新型アルピーヌA110の生みの親、 ジャン-パスカル・デュース氏に訊く [前篇]

 
2017年のジュネーブ・モーターショウでデビューした新型アルピーヌA110。高い人気もさることながら、コンパクト・スポーツカーとして優れた評価を得ている。今回来日したジャン-パスカル・デュース氏は新型アルピーヌA110の開発陣のトップとして、企画が始まった当初から深くかかわってきた。果たして彼はどんな思いでA110を生み、育ててきたのか。そのあたりをじっくりと伺ってみた。

アルピーヌA110「高い評価は期待以上です」

1995年にA610の生産が終了してから20余年、フランスを代表するスポーツカー・ブランド、アルピーヌが復活した。1960年代初頭に登場したアルピーヌの代表作、A110の名前とその初代A110をモチーフにしたデザインが与えられた新しいアルピーヌは、発表前から大人気。正式発表前に実施されたインターネットによる初回限定車の受注では1955台が瞬く間に完売し、後日行われた日本割り当て分の販売でも50台に対して1021人が名乗りを上げた。その倍率は実に20倍以上。2017年に正式発表されたカタログ・モデルに関しても、世界中で多くの購入希望者が新しいA110が納車されるのを心待ちにしている状態だ。


新型A110は単に人気を博しているだけでなく、アルミ・モノコックを採用することで実現した軽量ボディや卓越した運動性能と優れた乗り心地を両立したシャシーなど、クルマ自体の評価もすこぶる高い。ジャーナリストと編集部員を合わせて44人の選考委員によって選ばれた「2019年版、エンジン・ホット100」でも、2位に2倍近い大差を付けて1位の座を獲得。地元フランスをはじめ、欧州でも新型A110を絶賛する自動車雑誌は少なくない。



そんなスポーツカーの理想形と評する声も多い2代目A110に関して、2012年後半に開発がスタートした当初から技術面だけでなく、プロジェクト全体のトップとして新しいA110に携わってきたのが、今回お話を伺ったジャン-パスカル・デュース氏だ。企画と技術の両面のトップに立っていたという意味では、新型A110の生みの親と呼ぶに相応しい人物である。車両の概略が固まった2014年夏に一旦、アルピーヌから離れたものの、2018年2月に車両開発トップの座としてアルピーヌに戻ってきた。新型A110をイチから築き上げた立場としては、今の高い評判と好調な販売は誇らしいに違いない。


「期待以上の評価をいただいていると感じています。クルマ自体の評価が高いことは理解できます。なぜなら、私たちはA110に対してデザインをはじめ内容に対して一切妥協をせず、情熱を込めて作りましたから。多くの人たちにとても好意的に受け止めていただけたのは、アルピーヌが小さなブランドで、クルマもコンパクトなので、親しみやすいからでしょう。私も高速道路を走っているとき、並走しているバイクの人に写真を撮られたことがありました。しかも1度だけでなく何度もね」


ジャン-パスカル・デュース氏は大学を卒業後、航空機メーカーに入社した。しかし、クルマが趣味だった彼は1年後、“どうしてもルノーに行きたかった”という夢をかなえ、自動車開発の道に進む。ルノーで10年ほどシャシー関連のエンジニアを務めたのち、ルノー・スポールへ移動し、レースの世界へ。その間、スポーツカー開発のほかにF1にも3年携わったという。またクルマ造りのプロであると同時に、自身で初代A110を所有するアルピーヌ好きでもある。


「当時COOだったカルロス・タバレス氏(現PSAのCEO)にA110の開発を頼まれたときはあまりの重責に一瞬判断を迷いました。でも、すごくうれしかったです。アルピーヌへの情熱があったから縁だったんですかね。ご存じのとおり、開発当初はイギリスのケータハム社とのジョイント・ベンチャーでした。ケータハム側の開発責任者だったマイク・ガスコイン氏はルノー・スポールとして参画していたケータハムF1ティームのときの上司でしたし、当時ケータハムのオーナーだったトニー・フェルナンデスとも知り合いだったのでとても仕事はやりやすかったです」


ジャン-パスカル・デュース/Jean-Pascal Dauce
アルピーヌ・チーフ・ヴィークル・エンジニア/Alpine Chief Vehicle Engineer

航空機メーカーを経て、ルノーに入社。シャシー関連のエンジニアを10年間務める。その後、ルノーF1ティームでF1の開発に携わったのち、ルノー・スポールでクリオV6、2代目メガーヌR.S.など、7年間に亘りスポーツカーの開発を行う。そして、2012年11月、ケータハム社との合弁会社でアルピーヌA110の開発をスタート。2014年4月にケータハムが離脱した4か月後までの2年半以上に亘り、企画と技術面のトップとしてプロジェクトを指揮する。その後、再びルノー・スポールに戻ったのち、2018年2月にアルピーヌに復帰。現職に就く。

◇ALPINE JAPON OFFICIAL WEB SITE
   https://www.alpinecars.com/ja/

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文=新井一樹(ENGINE編集部)   写真=茂呂幸正