イタリアに初夏の訪れを告げるクラシックカー・ラリー、ミッレ ミリアが今年も盛大に開催された。スタート地ブレシアには37か国から430台のクラシックカーが集結し、国内はもとより、世界のクルマ愛好家の垂涎の的になる。名だたる名車のなかでもひと際エレガントな1台が目を引く。ストロベリー・メタリックのメルセデス・ベンツ300SL。ショパールのオーナー、ショイフレ家が所有する、共同社長カール-フリードリッヒ・ショイフレ氏の愛車だ。
本人自らステアリングを握り、このラリーに参加するのは30回以上。そして公式タイムキーパーを務めるショパールとミッレ ミリアのパートナーシップも昨年30周年を迎えた。きっかけは、ショイフレ氏が父譲りの熱狂的なクラシックカー愛好家であり、個人的にこのラリーに強く惹かれたことから始まった。そして伝統的な機械式時計とクラシックカーの共通する価値に、思いをさらに深めたのだった。これについてショイフレ氏はこう語っている。
「上質な車の愛好家は得てして上質なタイムピースを好みます。その逆もまた然り。どちらにおいても、最高の精度とスポーティなエレガンスが最も大切な要素だからです」だが誰よりもその虜になっているのは本人だろう。そうでなければ他に例を見ないほど長きにわたってパートナーシップが続くわけがない。ミッレ ミリアとの関係は、単なる時計のプロモーションでなく、偉大なヘリテージに敬意を表し、その価値を継承し、次世代につなげる強い意志に他ならない。
さらに今年は新たな時代の幕開けとなった。ショイフレ氏のコ・ドライバーを務めたのは、愛娘キャロライン-マリーさん。父に負けないくらいクラシックカーへの情熱は熱く、幼い頃からミッレ ミリアに親しんできた。そんな父と娘の姿は、かつて父カール・ショイフレ氏とともにラリーに参戦したショイフレ氏にも重なってくる。クラシックカーへの情熱は、こうして世代を越えて受け継がれていくのだろう。
そんな時代の息吹は、「ミッレ ミリア」コレクションからも伝わってくる。1988年にショパールが協賛を始めた際、出走した全ドライバーの健闘を讃え、オリジナルの記念ウォッチを贈呈した。それはクラシックカーや時計愛好家の憧憬の対象となり、やがて市販モデルが登場したのだ。こうして始まったコレクションの最新作は、昨年のクラシカルなテイストからスタイルをよりモダンに一新させている。
タキメーターを文字盤からベゼルに移し、フェイスを前面いっぱいに広げるとともに、縦配列になった現代的なクロノグラフは、2015年に発表されたGTSをベースにする。さらにレーシーなパンチングレザーに、実用的なラバーライニングを施したストラップを据え、モダンヴィンテージの魅力が薫り立つ。
たとえ世代は交代しても信念は揺らぐことなく、むしろ時代の感性を受け入れ、さらに強固になる。ミッレ ミリアとショパールの絆も変わらない。そしてけっして止まることのない時とも通じ合うのだ。
文字盤はシックなグレーにスネイル仕上げを施し、ルテニウムカラーのインダイヤルとのコントラストも映える。ムーブメントは、クロノメーターを取得する高精度に加え、2日間の持続時間を誇る。またストラップはレザーにラバーを裏打ちし、60年代のダンロップ製レーシングタイヤのトレッドパターンを刻む。自動巻き。ケース直径44㎜。[写真右]ローズゴールド×ステンレススティール。250本限定。税別124万円。[写真左]ステンレススティール。1000本限定。税別84万5000円。
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文=柴田 充 写真=近藤正一(時計)/ショパール
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