そのボディを作る工場を、ジュリアだけでなく混流生産でステルヴィオも作っている隣接するアセンブリー工場も見る機会があるとあっては、是が非でも行かなくてはなるまいと思って参じた〝アルファ・ロメオを巡る旅〟で最初に訪れたのは、ローマから120kmほどの離れたカッシーノにある工場だ。
正門に掲げられ たエンブレムはアルファ・ロメオのものだ。工場内部を見せられ、説明を聞いて知ったのは、2016年からアルファ・ロメオ専用のプレミアム・プラントとして稼動するに当たって、すべてが作りかえられたことだった。遠く1970年代初めにフィアットの工場して生まれたカッシーノ・プラントにはジョルジオ・プラットフォーム・プロジェクトの実現に合わせて、完全に生まれ変わっていた。
スティールだけでなくアルミや炭素遷移強化樹脂なども使うジュリアとステルヴィオを生産するために、最新鋭の生産ラインと無数とも思える数の生産ロボットが導入された。工場はその外観だけでなく、 内部もきわめて清潔で、まさに最新を実感させるものだ。なるほどあの優れたボディができるわけだと感心した。ジュリアのホワイト・ボディ は専門家らによって選出される〝ユーロカーボディ賞〟を2016年に 受賞しているのだけれど、それを実現するために、莫大な投資が行なわれたことを知った。
加えて、このカッシーノ工場は生産ラインと労働品質がプレミアムなだけではない。すでに2000年から生産工程での産業廃棄物ゼロを実現していたのに加え、2016年からは雨水をプールすることによって外部水資源の利用ゼロ、生産工程での二酸化炭素の排出ゼロをも実現した、環境配慮でも最先端をゆく工場になっていたのである。
ジュリアとステルヴィオの混流ラインは2シフト、ジュリエッタのラインは1シフトで生産されている。カッシーノ・プラントはかつて、リトモやティーポを作っていたことでも想像できるように、産業ロボットの導入では時代の先端を走り続けた生産工場のひとつだが、アルファ・ ロメオ専用工場となった今は、それこそ世界の最先端をゆくそれなのだ。
僕にとってのメイン・イベントはカッシーノ訪問だったが、アルファ・ロメオを巡る旅はもちろんそれだけではなかった。
トリノではミラフィオーリ工場(FCA本社工場)内に、この5月にオープンしたばかりのクラシック・カー 保管庫で数多のフィアットとランチア、アバルト、そしてアルファ・ロメオを見て、デザイン部門を退役した後にこのヘリテッジ・ハブの責任者となったロベルト・ジョリートと会うこともできた。
ミラノに移動しては、アレーゼにあるムゼオ・アルファ・ロメオを再訪し、至宝の数々を再び見た。驚いたことに、たった1台しか作られなかった1954年の1900スポーツ・スパイダーを博物館脇の動体保存車両チェック用のショート・ コースで自ら走らせることもできた。
最後に訪れたのはアウトドローモ・ ナツィオナーレ・ディ・モンツァ、通称モンツァ・サーキットである。 そこで、昨年からFCAが冠スポンサーとなって支援しているアルファ・ロメオ・レーシング(ザウバー)がイタリアGPを戦う雄姿を見る!ライコネンには良い週末とはいえなかったけれど、現役F1ドライバーとしては唯一のイタリア人、ジョビナッツィは地元グランプリとあって気を吐き、予選10位からスタートして見事9位入賞を果たした。
スクーデリア・フェラーリとのテクニカル・スタッフの交流が今後進んでいくのだろうが、この調子で活動が続けば、遠くない未来に、アルファ・ロメオ・レーシングが表彰台を獲得することだって夢じゃない。夢はいつか、実現するのである。(後編・終わり)
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