世界の主要な美術館から、「20世紀の日本で、最も重要なデザイナー」と紹介されることの多い倉俣史朗(1934-91)。彼の没後30年を前に、再び世界的な注目が集まっている。
60年代後半から91年まで、空間と家具のデザインで活躍した倉俣。彼が作り出す軽さや儚さを感じさせる世界は、西洋のデザインとも日本の伝統的なそれとも大きく異なる独特なもの。海外のデザイン誌で紹介されると、「クラマタ・ショック」という言葉が生まれたほど、世界に衝撃を与えた。
しかし、手がけた空間の大半は店舗である。商業施設の常で、数年で改装され、現存するのは僅かだ。しかも家具や照明の殆どは、アートとデザインの中間のもので、大量生産品ではない。日本で製造されている家具は既に無く、海外の数社が手がけるのみである。とはいえ国際的な評価は相変わらず高く、オークションでの高額取引がニュースになるなど、熱心なファンには支持されていた。
ところがここに来て、新しい動きが出てきている。海外の著名な博物館が「クラマタ展」の準備を始めており、これが世界巡回の予定だという(近く正式発表と聞く)。また、内装をデザインした寿司屋の「きよ友」がそっくり移築され、来年末にオープン予定の香港のデザインミュージアム、「M+」で常設展示される。そして日本では、ギャラリー田村ジョーから、代表作であるHow High the Moonなどが復刻・販売されるのだ。
今、倉俣史朗が注目を浴びている理由は、まず、知らない世代にとって新鮮に映るからであろう。特にバブル期に登場した倉俣のデザインは、効率やマーケティングを重視した現代のデザインと対極にある。また、復刻においては、日本の鉄工所やメッキ工場が次々と廃業する中、この時期を逃すと職人や工場が不在となり、製作できなくなる問題も存在する。そして何より、倉俣独自の詩的な世界観には、時代が変化しても色褪せない魅力がある。
そう、倉俣史朗のデザインは、時代を超えて伝えていくべき必要があるのだ。
問い合わせ=ギャラリー田村ジョー/センプレデザイン
Tel.03-6407-9061
インスタグラム gallerytamurajoe
撮影協力:ライトボックススタジオ中野
文=ジョー スズキ(デザイン・プロデューサー) 写真=山下亮一
「復刻・倉俣史朗Ⅰ」展
会期:2019年11月9日(土)〜15日(金)
会場:ライトボックス・ギャラリー
住所:東京都港区南青山5-15-9
開館時間:13:00〜19:00
ただし9日は18:00〜21:00のレセプションのみ
10日は20:00まで、17:30〜はカクテルタイム
料金:無料
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