2020.01.18

CARS

佐藤久実と吉田由美が語る 2020年も乗りたいマカンS、Iペイス、イヴォークの面白さ

ジャガーIペイス、新型レンジローバー・イヴォーク、そして新型ポルシェ・マカンSは、 それぞれどこが面白いのか? ENGINE編集部メンバーに女性ジャーナリストを迎えての座談会です。


荒井 2019年に上陸したミドル級SUVのニュー・モデル3台、ジャガーIペイス(以下Iペイス)、レンジローバー・イヴォーク(以下イヴォーク)、ポルシェ・マカンS(以下マカンS)。この座談会には、佐藤久実さんと吉田由美さんにも加わっていただきます。


女性モータージャーナリスト 佐藤久実さん
女性モータージャーナリスト 吉田由美さん


齋藤 今回試乗した3台はパワートレインもそれぞれ違う。Iペイスは電気自動車、イヴォークは2リッター直4ディーゼル・ターボ、そしてマカンSは3リッターV6のガソリン・ターボです。



JAGUAR I-PACE

デジタル・メーターや上下2つのタッチ・スクリーンなどにより、 クリーンで未来的な印象を与えるIペイスのインテリア。室内は広く、シートの掛け心地もいい。ただし、従来ジャガーが持っていたスノッブかつスポーティな雰囲気はいっさいない。DおよびRのスイッチはセンター・コンソールに備える。満充電で借り出したときの走行可能距離は400kmを表示していた。
荷室容量はフロントが27リッター。
荷室容量はリアは505リッター。


Iペイスのインパクト

佐藤 私、Iペイスのインパクトはすごかったなあ。


荒井 ENGINE2019年7月号の特集「エンジンHOT 100」で、佐藤さんはマイ・ホット20で1位に選んでましたからね。


佐藤 まず、ドイツ勢に先んじてフル電気自動車を出してきたことに驚いた。さらに、それをロング・ノーズ&ショート・デッキのスポーツカーではなく、SUVで出したことにびっくり。乗ったら、ジャガーの乗り味で仰天するという、びっくり3連発だった。電気自動車になると各ブランドの個性がなくなり、どれに乗っても大差がないと言われたけれど、そんなことない!って思った。


荒井 ジャガーっぽい乗り味って?


佐藤 踏み込むと、ジャガーっぽい音がする。もうちょっとチューニングしてもいいと思うけど。加速フィールが昔の12気筒みたいだというジャーナリストがいたほど。


吉田 香港でフォーミュラEを見たんですけど、前座レースがIペイスのワンメイク・レース。排気音がしないから、かえってボディがぶつかる音が目立った。ガチャガチャぶつかって、クルマのプロレスみたい。レースに電気のSUVを投入するのがスゴイと思いました。


佐藤 バッテリーを床下に置くから、低重心だし、前後重量配分も理想に近づける。ハンドリングのいいクルマを作りやすい。最大トルクもイッキに出るし。私もサーキットで走ったけれど、楽しかった。


齋藤 ジャガーは1968年に発表したXJサルーンをヒットさせてから、ずっと新しいスタイルを模索し続けてきたけれど、なかなか上手くいかなかった。そこに隆盛を極めるSUVのスタイルと、フル電動というシステムを取り入れ、新しい時代のジャガーを創造した。SUVというよりは、新しいジャガーのスタンダードがIペイスで出来たんだ。


荒井 航続距離を伸ばすために電池をたくさん積んでいる。車両重量はなんと2250㎏。ふとしたときに、重たい!と思う瞬間がある。


佐藤 そう。そこはどうにもならないですよね。すごくインパクトがあるクルマだけど、自分の住んでいる環境とか、ドライビング・スタイルから考えると購入モードにはならない。


吉田 約1000万円ですもんね。もう少し小さくて700万円ぐらいで買えるようになると、現実味が出てくるかも。航続距離同じで。


新井 僕は今回初めて乗ったんです。脚はちょっと硬めで、それがジャガーらしいスポーティな感じを出していると思ったんだけど、まあ、こんなもんかなあ?と。ところが、マカンSに乗り換えたら「マカンS、古い!」って叫んじゃった。もちろん、マカンSのエンジンはレスポンスが良く、パワーもある。シャシーも秀逸。それなのに、古いクルマだと思った。イヴォークに乗り換えたときも同じ。性能がいい悪いじゃなくて、Iペイスは新しい乗り物なんだと実感した。


齋藤 ドイツ御三家の経営陣や研究開発部門の人たちはショックだったと思うよ。テスラ登場よりはるかに。


佐藤 いろんな意味で電気になったときの可能性を示したと思う。


RANGE ROVER EVOQUE

ホイールベースが20㎜延長されたことで、後席の足元は初代より広くなった。
シンプルでモダンなイヴォークのインテリアは美しい。水平基調のダッシュボードの中央には上下2つのタッチ・スクリーンを備える。
今回の試乗車は2リッター直4ターボ・ディーゼルだった。ほかに2リッター直4ターボのガソリン・モデルも用意される。
荷室容量は5人乗車で591リッター。後席を畳んだ最大荷室容量は1383リッター。


レンジになったイヴォーク

荒井 ではイヴォークとマカンSにいきましょう。どちらも2世代目で基本的にキープ・コンセプトです。


佐藤 はーい!私、初代イヴォーク乗ってました!


荒井 では、佐藤さん、どうぞ。


佐藤 あのスタイリングにやられて買ったんですけど、見た目通り、初代イヴォークは本当にスポーティなクルマだった。もう、ステアリングなんか超絶クイック!動きはシャープでロールもしない。ところが、今回新型に乗ったら、乗り心地が良くて驚いた。やっと、レンジローバーになった!と思った。


吉田 そうそう。初代イヴォークに感じた違和感みたいのがなくなった。


齋藤 スタイリングも滑らかになった。初代のようなエッジが立った感じはなくなった。


吉田 前後を絞り込んでいるから、ひとまわり小さくなった気さえする。インテリアもレンジローバー最新の意匠になってステキです。


荒井 ダイアル式の円形シフト・スイッチは廃止になったんだね。スティック型のシフトレバーになった。


佐藤 エンジンをかけるとせり上がってきて儀式だったのに。


齋藤 あれがいいと思っていたユーザーは少ないんじゃない?スティック型のシフトレバーだったら、手首の動きでいいのに、指でつまんで回さなきゃならないから。


吉田 Iペイスはボタン式のスイッチでしたね。


齋藤 だからいちいち目視しなくてはならない。D(ドライブ)ボタンはどこだっけ?R(リバース)ボタンは?と。スティック型のシフトレバーは見なくてもわかる。やっぱり長く続いているものには、理由があるのよ。


佐藤 そうなんだけど、新しい方法にヒザを打つこともあるわけで。


荒井 上品で大人になった新型イヴォークにはむしろ、旧型の円形シフト・スイッチが良かったかも。


新井 僕もイヴォークの変わりっぷりには驚きました。やんちゃ坊主が紳士になった感じ。



PORSCHE MACAN S

センター・コンソールにスイッチが並ぶマカンSのインテリア。メーター・ナセル中央には赤い針のタコメーターが備わるといったポルシェの流儀が貫かれている。
オプションのレザーシートは掛け心地、ホールド性ともに秀逸。やや硬めの乗り心地、ガッチリした感じのボディ、手応えのあるステアリング、そして吹け上がりのいいエンジンなどが、総合的に「アナタ、ポルシェに乗ってますよ」と、ドライバーに語りかけ、走り出した瞬間、それがわかる。


ブレないマカンS

荒井 スイッチと言えば、なんとマカンSはまだイグニッション・スイッチはひねるタイプです。


佐藤 サブのキーが刺さっているのかと思って、エンジンをオフにしたときに抜こうとしちゃった。


吉田 センター・コンソールにもスイッチがズラリと並んでいる。液晶画面をタッチさせるイヴォークとは全然違う。


佐藤 ちょっと古臭いというか、コンサバだよね。でもスポーツカーとして考えた場合、これが一番いいんだというブレない意志も感じる。


齋藤 ポルシェだから(笑)。いまだかつてポルシェが過激なデザインだったことなんか一度もない。時代に先んじてたのは928ぐらいじゃないの?


新井 進み過ぎて、市場はついていけなかったですけどね。


吉田 ポルシェだけ「色気なんて必要ない」って思っているような気がする。


荒井 僕はポルシェは別格だと思った。ポルシェ・ジャパンからキーを預かり、ビルの地下駐車場を走り始めた瞬間、「これはもう全然違うじゃん」と思った。


佐藤 ホントにそう。乗った瞬間にチャラさがないって思う。買う方はSUVでもハンドリングとかは期待するわけじゃないですか。ポルシェだから。そこは1ミリもブレずに応えてくれますよね。


齋藤 ポルシェのラインナップのなかで最も血中ポルシェ濃度が高いのは、マカンだと思う。


佐藤 えっ?そうなの?


齋藤 だって、マカンはプラットフォームやパワートレインをアウディQ5と共有する部分があるでしょ?つまり、911のようにリア・エンジンとか、フラット6といったオンリー・ワンな部分が中身的にはないわけ。アウディQ5とは違うポルシェらしさを出すためには、シャシーのセッティングやチューニングしかない。


佐藤 そうかあ。そこにポルシェ魂を注入するのね。そして、まぎれもなくポルシェにしている。


齋藤 マカンを買う人は、ポルシェの運動体として完成させたチューニング技術におカネを払うんだと思う。そうじゃなかったらアウディQ5でいいんだから。


新井 ポルシェは自分自身に対しての縛りがありますよね。初代イヴォークやIペイスはブランドの縛りはあまりなかったんだと思う。


吉田 イヴォークもIペイスもとにかく新しいことをやるという方が大事だったのかも。


荒井 それにしても、この3台に乗って思うのは、今年は本当にSUVの年だったということだね。


吉田 輸入車に関しては特にそう。


荒井 2019年にはBMW新型3シリーズ・セダンが出たけれど、いままでのような脚光は浴びなかった。


吉田 SUVのカテゴリーが増えましたよね。クーペ・スタイルになったり、スーパーカー・テイストのものが出たり。そして、この3台はどれに乗ってもワクワクした。乗りこめば、独自の世界観があって、心がトキメキます。


荒井 SUVが百花繚乱になって、自分のライフスタイルに合う1台を見つけやすくなった。かつてセダンが主流だった時代はメルセデス・ベンツ、BMW、アウディのドイツ御三家が王道だった。でも、いまのSUVを見渡すと、ドイツ御三家が突出しているわけではない。


吉田 それぞれ個性がフィーチャーされて、同じラインに並んでいる。パワートレインもいろいろだしね。しかも、どんどん磨きがかかっていて、本当に面白い。


荒井 ロールス・ロイスのSUVまで出たからね。


佐藤 2020年もどんどん面白くなると思います。


佐藤&吉田 読者のみなさん、2020年もよろしくお願いします。


語る人=佐藤久実+吉田由美+齋藤浩之(ENGINE編集部)+荒井寿彦(ENGINE編集部)+新井一樹(ENGINE編集部) 写真=神村 聖



■ジャガーIペイス 


駆動方式 前後2モーター4輪駆動 
全長×全幅×全高 4682×1895×1565㎜ 
ホイールベース    2990㎜ 
トレッド 前/後    1600/1600㎜ 
車両重量 2250㎏ 
エンジン形式 交流同期電機 
総排気量 ――
最高出力 400ps/4250~5000rpm 
最大トルク 71.0kgm/1000~4000rpm 
変速機    1段減速機のみ 
サスペンション 前 ダブルウィッシュボーン/エア 
サスペンション 後 マルチリンク/エア 
ブレーキ 前&後 通気冷却式ディスク
タイヤ 前 後    245/50R20 
車両本体価格 1183万円


■レンジローバー・イヴォーク・ファースト・エディション 


駆動方式 フロント横置きエンジン4輪駆動  
全長×全幅×全高 4371×1996×1649㎜ 
ホイールベース    2681㎜ 
トレッド 前/後    1625/1631㎜ 
車両重量 1860㎏ 
エンジン形式 直列4気筒DOHCディーゼル・ターボ  
総排気量 1999cc
最高出力 180ps/4000rpm  
最大トルク 43.8kgm/1750~2500rpm
変速機    9段AT 
サスペンション 前 マクファーソンストラット/コイル  
サスペンション 後 マルチリンク/コイル  
ブレーキ 前&後 通気冷却式ディスク 
タイヤ 前 後    245/45R21  
車両本体価格 836万円


■ポルシェ・マカンS


駆動方式 フロント縦置きエンジン4輪駆動
全長×全幅×全高 4684×1926×1624㎜
ホイールベース    2807㎜
トレッド 前/後    1645/1655㎜
車両重量 1950㎏
エンジン形式 V型6気筒DOHCターボ
総排気量 2995cc
最高出力 354ps/5400~6400rpm
最大トルク 48.9kgm/1360~4800rpm
変速機    7段自動MT
サスペンション 前 ダブルウィッシュボーン/エア(オプション)
サスペンション 後 マルチリンク/エア(オプション)
ブレーキ 前&後 通気冷却式ディスク
タイヤ 前 後    265/45R20 295/40R20(オプション)
車両本体価格 859万円(車両本体価格)


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