2020.01.26

CARS

ポルシェの最新市販レーシング・モデル2台試乗 乗りやすくて、恐ろしく速い!

911GT2RSクラブスポーツと718ケイマンGT4クラブスポーツ、2台のポルシェ市販レーシング・モデルに富士スピードウェイで乗る機会を得た。

2019年10月号でレーシング・ドライバーの田中哲也選手がドイツのラウジッツリンクで試乗したポルシェの最新市販レーシング・モデル、すなわち911GT2RSと718ケイマンGT4のクラブスポーツ2台に、私のような者が日本で乗る機会を得られるなんて、なんという幸か。


「良かったら富士スピードウェイで乗ってみませんか」というポルシェ・ジャパンからのお誘いに、ふたつ返事で「行きます」と答えた のは言うまでもない。とはいえ、スーパーGTマシンよりパワフルな700psのモンスターに私ごときが乗って本当に大丈夫なのか。戦々恐々としながら早朝の東名高速を320psの長期テスト車、996型カレラ4Sで富士に向かった次第である。


幸いなことに当日の天候は晴れ。素晴らしいサーキット日和であった。しかし、ピットで対面した2台は、穴だらけのボディに巨大なリア・ウィングを備えた見るからにスパルタンなレーシングカーそのものの姿をしていて、思わず武者震いが出た。 私はいきなり、700psのGT2の方から乗ることになった。


事前にコクピット・ドリルを受けるために装備品なしでマシンに乗り込む。そもそもがロール・ケージを跨いでレカロ製のフルバケット・シートに着くまでが大変である。そして、ようやくシートに収まった私の目の前に拡がったのは、走りに必要な装備以外すべてを取り払った、味も素っ気も ないコクピットの風景だった。


メーターは完全なデジタルで、タイヤの空気圧をはじめ様々な情報を表示できるようになっている。センターコンソールに自動車両安定装置(ESC)やトラクション・コントロール、ABSのオフ・スイッチがあることを教えられるが、内心、ロード・モデルのGT2RSと同じ電子デバイスが付いていることにホッとした。



PORSCHE 911 GT2 RS Clubsport

718 Cayman GT4 Clubsport

この2台のクラブスポーツは、市販ロード・モデルをベースにしてはいるものの、ナンバーを付けることはできない完全なサーキット専用モデルだ。それだけに装備は速く走ることだけに特化しており、荷室はすべてエア・ダクトで埋められているし、室内の内張りは剥がされ、ガチガチにロール・ケージが組まれている。シートはレカロ製フルバケット。サスペンションには減衰圧を細かく調整できる機構も備えられる。


走りの性格が異なる2台

すぐに、私の乗る時間がやってきた。ロード・モデルと同じシフト・レバーを操作してギアをDに入れ、後はアクセレレーターを踏んでいくだけで、まるで百戦錬磨のプロ・レーサーが絶妙のクラッチ・ミートを見せて走り出すようにスムーズに発進できてしまうのだから、なんとラクチンなマシンか。


私の前にレーシング・ドライバーが乗り、スリック・タイヤを十分に温めてくれていたおかげで、1コーナーを抜けたところから積極的にアクセレレーターを踏んで行くことができた。するとどうだろう。圧倒的なトラクションというのはこういうことだと言わんばかりの怒濤の加速感が襲ってきた。


遮音材も内張りもすべて取り払ってあるから、加速に伴ってそこら中から機械ノイズやロード・ノイズが聞こえてくるが、レーシングカーとしてはかなり快適と言っていいレベルだ。


100Rで強烈な横Gを経験した後、ヘアピン、シケインで向きを変える感覚が素晴らしく気持ちいいのに舌を巻く。しっかり前に荷重をかけてやりさえすれば、ほとんどアンダーステアを感じることなく、きれいに曲がってくれる。そして向きを変えたら、怒濤の加速で立ち上がって行けばいい。


長いホームストレートでは、なんと280km/hをあっさりと超えてしまったのには驚いた。恐くなって早めに右足を緩めたが、そこからのブレーキの効きの凄まじさと、コントロールの繊細さといったら、これぞポルシェだ、と叫びたくなるくらいに素晴らしかった。とにかく、こんなに乗りやすくて、恐ろしく速いレーシング・モデルに はこれまで乗ったことがない。


その後、夕方になって718ケイマンGT4に乗ったが、正直なところ、走りの味付けがかなり違うのに驚いた。GT4はアンダーステアがかなり強めの設定で、思い通りに曲がるには、それなりに工夫しないと難しい。まるで練習させられているみたいな感 覚で、これを乗りこなせれば相当に 運転の腕が上がるだろうと思った。対してGT2は誰が乗ってもラクに速い。言わば"旦那レーシングカー"である。私はそっちが好きだ。


◼︎911GT2RSクラブスポーツ


駆動方式 エンジン・リア縦置き後輪駆動
全長×全幅×全高 4743×1978×1359mm
ホイールベース 2457mm
車両重量 1390kg
エンジン形式 水平対向6気筒DOHCツインターボ
排気量 3800cc
ボア×ストローク 102×77.5mm
最高出力 700ps/7000rpm
最大トルク 76.5kgm/2500-4500rpm
トランスミッション 7段自動マニュアル(PDK)
サスペンション(前) マクファーソン・ストラット/コイル
サスペンション(後) マルチリンク/コイル
ブレーキ(前後) カーボン製通気冷却式ディスク(PCCB)
タイヤ・サイズ (前) 27/65-18、(後)31/71-18
車両本体価格(税別) 40万5000ユーロ


◼︎718 ケイマンGT4 クラブスポーツ


駆動方式 エンジン・ミドシップ縦置き後輪駆動
全長×全幅×全高 4456×1778×1238mm
ホイールベース 2456mm
車両重量 1320kg
エンジン形式 水平対向6気筒DOHC
排気量 3800cc
ボア×ストローク 102×77.5mm
最高出力 425ps/7500rpm
最大トルク 43.3kgm/6600rpm
トランスミッション 6段自動マニュアル(PDK) 
サスペンション(前) マクファーソン・ストラット/コイル
サスペンション(後) マクファーソン・ストラット/コイル
ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク
タイヤ・サイズ (前) 25/64-18、(後)27/68-18
車両本体価格(税別) 15万7000ユーロ(コンペティション)


文=村上 政(ENGINE編集長) 写真=ポルシェ・ジャパン

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