2017年にBunkamura ザ・ミュージア ムで開催された「ニューヨークが生んだ伝説 写真家ソール・ライター」展は、観客数が8万人を超えるという、写真展としては異例の大ヒットとなった。それまで日本ではほぼ知られていなかった彼の名前が、大きくクローズアップされるとともに、その写真の魅力が多くの人たちに伝わったのではないかと思う。
それから約3年、ソール・ライターの展覧会がふたたび同会場で開催されている。しかも、出品点数はかなり増え、遺された8万点以上というカラーポジから選んだ作品によるスライド・ショーや、妹のデボラ、彼の最高のミューズだったソームズのポートレートがまとめて展示されるなど、さらにスケールアップした展覧会になっている。今回も、大きな反響を呼ぶのではないだろうか。

「間」を活かし、平面性を強調する画面構成や、淡いパステル調の色彩は、ナビ派の作風をとり入れたものだし、実際に浮世絵の画集を見て研究もしていたようだ。今回出品された中には、墨絵風のドローイングも含まれている。
もう一つは、彼の写真家としての生き方に共感を持つ人が多いからではないだろうか。ソール・ライターは1950年代から『ハーパーズ・バザー』などの雑誌に写真を発表し、ファッション写真家として人気を博する。だが、1980年代にファッション誌の仕事を一切やめ、以後は自分のための写真を追求し続けた。
ニューヨークの街角の情景を切りとった彼のスナップショットには、純粋に「見る」ことの歓びがあふれている。特別な被写体を、特別なやり方で作品化する必要はなく、何気ない日常の場面からも、奇跡のような瞬間を引き出すことができる。そんな 彼の姿勢は、写真という表現手段の一つの可能性を示しているのではないかと思う。


※同時に『Saul Leiter-Lanesville,1958』が3月1日までライカギャラリー東京(東京都中央区銀座6-4-1 ライカ銀座店2F)で、『Saul Leiter-Nude』が3月5日までライカギャラリー京都(京都市東山区祇園町南側570-120 ライカ京都店2F)で開催中。
文=飯沢耕太郎(写真評論家)
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