インドの計画都市、チャンディガールのためにデザインされた、「ジャンヌレの家具」が世界的に人気だ。しかもこの度、同じデザインの家具が、異なる二つのメーカーから「本物」として販売されることになったのだから興味深い。
ジャンヌレとは、ピエール・ジャンヌレのこと。ル・コルビュジエの8歳年下の従弟で、共同で事務所を運営していた時期もある。戦後ル・コルビュジエは、チャンディガールの現場監督をジャンヌレに依頼する。首都機能の建築や商業施設、道路まで含めた大プロジェクトだ。そのためジャンヌレは1951年から14年間、インドで暮らしている。この時彼は、公共施設で使う家具をデザインした。地元の職人が機械を使わずに作れる、シンプルな木の家具だ。こうして生まれた「ジャンヌレの家具」は、モダンさと素朴さを合わせ持つ、西洋のそれとは違う魅力を持っている。しかしこの家具は、長い間、欧米で知られることは無かった。
ところが数年前に、突然ブレイクする。フランスの有名インテリア・デザイナー がヴィンテージの家具を使い、人気に火が付いたのだ。さらにファッション・デ ザイナーのラフ・シモンズなどの著名人が愛用しているというニュースが拍車をかける。ついには数百万円もの値段がつく事態に。過熱した人気は、数多くのヴィンテージを装った家具も生んだ。
そもそも当時のインドには小さな工房しか存在しない。現地の状況を鑑み、ジャンヌレの家具は、設計図はあるものの、数十あった地域の工房の裁量も認める、一種の「オープンソース」となっていた。
そこで骨董ではなく高級家具の価格でジャンヌレのデザインを手に入れたいファンのため、新たに製造する会社が現れた。職人のハンドメイドをうたうインドのファントムハンズと、ル・コルビュジエの家具を復刻しているカッシーナだ。両社はジャンヌレの遺族やその弁護士とコンタクトをとりながら、オープンソースを利用し生産を行っている。不思議なようだが、当時のものでなくてもファントムハンズもカッシーナも「本物」となるのだ。
こうして名作家具の世界に初めて登場したオープンソースの家具。購入希望者はどれを選ぶか、背景をよく調べないと判断できないものである。無責任のようだが、決めるのは消費者だ。
■カッシーナは、「ピエール・ジャンヌレへのオ マージュ」として、3種類の椅子とテーブルの生産を発表。高い精度の工作機械を使った、洗練と品質を伴う大量生産家具の魅力が発揮されるはず。 問:カッシーナ・イクスシー青山本店 TEL:03-5474-9001 Photo:Stefano De Monte
■ファントムハンズは2015年より、インド各地から当時の職人の後継者などを集めてジャンヌレの家具の生産を開始。手作りをうたい、籐の編み込みも手作業。インドの古材を使用する。Vレッグのアイコン的な椅子を含む16種を製造。問:五割一分 TEL.076-491-5151
文=ジョースズキ(デザイン・プロデューサー)
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