マセラティの長年の念願だった量産規模の拡大を成し遂げる原動力となったレヴァンテは当初、V6のガソリンとディーゼルだけでスタートしたが、V8ガソリンが追加されて、名実共にマセラティの屋台骨を担うモデルになった。V8搭載モデルはGTSとこのトロフェオの2機種あり、後者はより高性能な仕様となっている。590㎰を叩き出すV8エンジンはフェラーリの力を借りて実現したものだ。全長×全幅×全高=5020×1981×1698㎜。ホイールベース=3004㎜。車両重量=2340㎏。トロフェオの車両価格は2035万円(税込)
もはやこのようなSUVを味わうことは今後できなくなるのかも知れない。トロフェオに乗ってみて改めて思った率直な感想だ。ひょっとするとこれが最後かも知れないという興奮と寂寥、とでも言おうか。高性能なV8エンジンを得たレヴァンテはどこまでも美しき野獣だ。それに跨がる自分もまた、そんな獣にでもなった気分である。
コルサ・モードにして4500回転以上回したときのサウンド、バイブレーション、フィーリング……。すべてがユニークで、マセラティらしく、スポーツカー好きを昂らせる。それだけじゃない。普段乗りの、あまり回転を上げないようなシーンにおいても、腹の底に伝わる心地よい迫力があった。2000rpm以下でのエンジンの唸りなどはその最たるものだ。電動化を突き進むと聞いてはいるがにわかには信じ難い。それほどマセラティのV8モデルにはエンジン好きを唸らせる"何か"がある。その答を探し当てる前にマセラティが変わってしまうという怖れが、今のところ最大の問題か。ともあれ世界でも最も官能的なSUV、今のうちに。
もともとハードコアなオフローダーというより、かなりスポーツカー色が強く、なんか優等生過ぎるイメージだったレヴァンテ。その眠れる本性を引き出したのがレヴァンテ・トロフェオ。マラネロ謹製のV8ターボは、590㎰というパワーもさることながら実に饒舌で情熱的。まさに「現代に蘇ったランチア・テーマ8.32」と言うべき、一点豪華主義の権化。アクセラレーターを踏み込めば、細かいことはどーでもいいと言わんばかりにブワーッと唸りを上げ、ドカーンと地面を蹴って加速し、もっともっとと急き立てながらグワーッと曲がっていく。
こんなサディスティックでエロいSUVは他にない。じゃあエンジンだけが魅力か? というと、そうじゃない。なんでも機械まかせにせずドライバーがコントロールする余地をキチンと残しているFR志向のシャシーの出来映えもなかなかのもの。またペースを落としてクルージングしている時にみせる、柔らかくて優しい表情とのギャップに思わずキュンとなる。個人的にはもっと内装が派手でもいいかも。
全長5mを超える巨大なボディに21インチの巨大なタイヤを履いた外観はアグレッシブで獰猛な印象だが、深紅のレザーに包まれた室内はマセラティらしく華やかでエレガント。ただし踏めばびっくりするほど野性的で、外で聞く全開加速中の排気音に至ってはもう野蛮と言っていいほどだ。レヴァンテの最強力版がトロフェオだが、実際に乗ってみると腰高な感覚はなく、ただ巨大でパワフルなマセラティのステアリングを握っている感じである。
590㎰と734Nmを生み出すフェラーリ由来の3.8リッター V8ツインターボのパワーはさすがに凄まじく、特に4000rpm辺りから獰猛に加速する猛々しさは最近の高性能SUVの中でも随一である。2.3トンを超えるこの巨体で0-100㎞ /h加速は3.9秒という。一方で、おとなしく高速道路を流すと、フェラーリとは違う滑らかさを備えた甘美なエンジンであることが分かる。エア・サスペンションははっきり硬派に締め上げられているが、フラットで洗練された乗り心地だ。野性味とエレガンスを併せ持つまさしくマセラティである。
次々に登場する超高級SUVの中でもトップクラスのイケメン・ポジションにいるのがマセラティ・レヴァンテ・トロフェオ。SUV界のキアヌ・リーブス! マセラティとしての優雅さ、高級感を持っていて、トロフェオとしての爆発的パワーを秘めている。トロフェオが搭載するV8ツインターボは590㎰を発生し、2トンを優に超える車体の0-100㎞ /h加速は3.9秒。最高速304㎞ /hで走らせる。驚きのスペックだが、この手のクルマはカッコ良ければOK。運動性能についての細かいことを言うのは野暮だと思っていたが、このクルマの完成度はホンモノ。市街地走行では100%優雅。
ワインディング路でも車体の重さに揺さぶられるようなことはなく、足の硬さを感じることもなく、とてもしなやかで気持ち良い走りをしてくれる。そこからアクセルを踏み込めば590㎰の爆発力。ミニコースでタイト・コーナーをフルパワーで立ち上がってみたらオーバーステアが顔を出した。このトルク配分が気持ち良い走りのポイントだ。お金持ちになってボディ色選びに悩んでみたい。
レヴァンテ・トロフェオのスゴイところは、彼ら自慢のV8エンジンを搭載していること。V6エンジンからスタートしたレヴァンテだけに、V8エンジン追加は待ち遠しい限りだった。マセラティのV8はパワーだけでなく、官能的サウンドにも定評がある。アクセルを踏むのが楽しくなるほど気持ちを高揚させる仕上がりだ。最高出力は590㎰!
で、今回久しぶりにこのクルマのステアリングを握ってあらためて別のスゴさを感じた。それは高級車としての資質。エンジンにばかり気を取られてしまいがちだが、トロフェオの魅力は高級車としてレベルが高いところにある。その理由の一つがキャビンの静かさ。トロフェオはレーシーなエキゾーストをドライバーの耳に届かせるため、徹底的に遮音性にこだわった。ロードノイズ、風切り音はほぼ気にならない領域にある。次に挙げられるのは乗り心地の良さ。フラットな路面でのソフトな乗り味はまるで高級サルーン。サスがしっかり働いてキャビンを安定させる。まさに真の高級車の証がここにある。
(ENGINE2020年4月号)
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