LEVC TXは2018年に登場した現代のロンドン・タクシー。車体を共有する商用バンのLCVも2019年にはデビューしている。TXは2018年以来すでに3800台以上を英国で生産。アルミ接着構造のシャシーの床下にリチウムイオン・バッテリーを、フロントに発電用の1.5ℓ 3気筒エンジンを、後軸上に駆動モーターを配置する。走行可能距離は600㎞。0-100㎞ /h加速は13.2秒で、最高速は128㎞/h。全長×全幅×全高=4855×1874×1880㎜。ホイールベース=2985㎜。車両重量=2330㎏。車両価格=1120万円
思えば、このTX5の先代にあたるTX4に乗せていただいたのも6年前のこの試乗会だった。見た目は変わり映えしないTX5だが、古臭いFRだったTX4とは中身は別物。というか超最先端。オールアルミ・ボディにしてRRのレンジエクステンダーEVなのだ。資本は相変わらずの中国ジーリーだが、中国製だったTX4から一転、TX5はイギリス新工場でつくる本物の英国車に返り咲いた。
TX5は走りもいい。メカニズムは各部にボルボの技術資産がうかがえて、少しがんばると明らかに不安定になったTX4とは対照的に、高速道でも箱根ターンパイクでも、足取りは驚くほどしっかりしている。高速で少しフワつくのは空力のせいだろう。ただ、この姿がロンドン・タクシーそのものなのだから、そこは仕方ない。EVになったTX5は今後、新交通インフラとして、日本を含めた世界中に真剣に売り込まれるらしいが、これなら可能性はあると思う。ボルボの快進撃といい、ジーリーの商才は素直にスゴイ。
つい先日、思いがけずJPN TAXIに初めて乗車し、辛い乗り心地の某HV車タクシー(あえて名は秘す)より快適なのを確認した。が、運転をお願いし、LEVC TXの後席に収まってみると"違い"を実感。車両総重量は2900㎏とあり、215/65R17インチサイズのタイヤを高めの空気圧(前2.9bar/後2.7bar)で使い、シートもいたずらにソフトではないから、足から入る振動はそれなりに感じる。
けれどフワつかない乗り味に安定感、安心感を覚えるのは、欧州で乗る送迎用のシャトルバスの感覚だ。室内の広々感はサスガで、折り畳んである対面の後ろ向きシート(やや小振り)を使用しても窮屈な思いはしなさそうだ。それとスロープは自重はそれなりだが、家庭用プリンターの排紙トレイのようにサッと引き出せてパタパタとパーツをセットすれば数秒で設置可能。この簡便さは素晴らしい。370㎜とサイドシルが低いのもいい。走りは十分に力強く、かつ電気モーターらしく繋ぎ目のないスムーズな加速が味わえて快適なものだ。
試乗する一台がロンドン・タクシーと聞いて、かつてイギリスの都で乗ったディーゼル・エンジンのアレを想像したのは、認識不足だった。それは中国資本によって2018年に登場、すでにロンドンなど世界中で3800台ほど走っているというLEVCのTXなるレンジエクステンダー付きEVで、日本ではハイヤーなどの高級志向の用途を狙っているという。
タクシーキャブというとトヨタのジャパン・タクシーが思い浮かぶが、LEVC TXは全長4.9m弱、全幅1.9m弱と、あれと比べるとずっと大きい。にもかかわらず最小回転半径が4m強しかないのはロンドン・タクシーの伝統を受け継ぐ凄いところだ。もうひとつ凄いのは客室の広さで、3人用の補助席を開くと向かい合わせで合計6人乗れるから、通常の3人乗り状態では広大なレッグ・ルームがある。車重は2330㎏あるが、走ってみるとさすがEV、発進加速が力強いのも凄いポイントのひとつ。ステアリングとブレーキのフィールに若干の違和感があったが、たぶん慣れれば問題はなくなるだろう。
どうしてロンドン・タクシーがここに? レンジエクステンダー付きってホント? LEVCってどこのブランド? 謎だらけでしたがシートに座ってわかりました。インフォテイメント関係がボルボと同じ。"LEVC"は中国のジーリー・グループの中で新エネルギーの商用車ブランド。2014年からジーリー傘下となり、英国で設計・生産を行っています。デザインはクラシカルなロンドン・タクシーそのもの。
ドアは観音開きで、入口にはスロープが格納されています。そして驚くのがその車内。スクエア・ボディをいっぱいに使った広い空間。後ろ向きの2列目シートは大人数が乗るときはそのまま使用。しかし座面を跳ね上げれば車椅子もバギーも楽々と載せることができます。そして何よりドライバーの安全を確保するため、プライバシー・ガラスが厚くて頑丈。これなら日本のタクシー・ドライバーさんの安全も確保されるかも。ただ驚いたのはその価格。1120万円! 東京でタクシー補助金が出ても756万円。これが一番ビックリ。
(ENGINE2020年4月号)
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