前回のリポートでも触れたように、タイヤを新調した。選んだのはコンチネンタルのポルシェ認証タイヤだ。
ポルシェはタイヤにはとてもこだわるメーカーだ。走りを追求するスポーツカー専業メーカーなのだから当然と言えば当然だが、中でも911はリアに重たいエンジンを搭載する特殊な重量配分を持つクルマだけに、汎用のものをそのまま使ったのでは本来の性能を十全に発揮できない可能性がある。そこでNマークのついたポルシェ認証タイヤを履くのがベストということになるわけだ。
ところが、新車時にはたくさん種類があった認証タイヤも、年月が経つにつれて生産が終了して減ってくる。現在、79号車の前が225/40ZR18、後ろが295/30ZR18というサイズに合う認証タイヤは、ミシュランのパイロットスポーツPS2、コンチネンタルのスポーツコンタクト2、ピレリのPゼロロッソの三つのみ。その中から、これまでのミシュランに換えて、今度はコンチネンタルを履くことにした。
10月3日にポルシェセンター調布でニュータイヤを装着。その時点での総走行距離は10万1365kmだった。そして、その翌々日には富士スピードウェイのショートコースで開かれたエンジン・ドライビング・レッスンに参加し、サーキットを走ることになった次第である。
コンチネンタルのスポーツコンタクト・シリーズは、現在6まで進化している。2が出たのは2004年で、当時、多くのスポーツ系のプレミアムカーが履いていた。私の記憶の中には、スポコン2は比較的ソフトな乗り心地を持ったタイヤだというイメージがあったが、交換して走り始めた時の印象は、「アレッ、思ったより硬いな」というものだった。しかし、富士を走る頃までには、すっかり馴染んで当たりもソフトに変化してきていた。そして、乗っているうちに分かってきたのは、グリップする感じが、他のスポーツ・タイヤとは少し違うということだった。表現が難しいのだが、全体的にベタッと路面に貼り付いているというより、わずかに滑りながら走っている感触があり、ブレーキング時にも、ギャッと止まるのではなくスーッと止まる、そういう印象があるのだ。
そんないい加減なインプレッションをコンチネンタルの担当者氏に伝えたところ、そうかも知れませんね、という答えが返ってきた。スポコン2は、その後のタイヤづくりを変えたエポック・メーキングな製品で、その最大のポイントは、当時、一気に普及したABSの性能を最大限引き出すことを考えて設計されている点にあるという。それまでのタイヤが横溝を多く持ったブロック主体のトレッド・パターンを持っていたのに対し、スポコン2は一周連続した太いリブ(縦溝)を主体にしている。
今では多くのメーカーが採用する、この太いリブ・パターンを初めて採用したのがスポコン2なのだ。コンチネンタルはそのためにブレーキ・メーカーまで買収して研究したというから驚きである。その結果、横溝で引っ掛けて無理やり止めるよりも、一定のスリップ率を保ちながらABSを作動させて止まる方が、最後まで舵も効いて安全だということになった。そのおかげで雨にも強いタイヤになっているという。これから、じっくりと試していくことにしよう。
■79号車/ポルシェ911カレラ4S(996型)
PORSCHE 911 CARRERA 4S
購入価格(新車時) 340万円(1244万2500円)
導入時期 2017年4月
走行距離(購入後) 10万2568km(2万183km)
文=村上 政(ENGINE編集長) 写真=柏田芳敬(走りとタイヤ)
(ENGINE 2020年1月号)
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