熱血マエストロとして知られる小林研一郎は、“コバケン”の愛称で親しまれている。彼は常に聴き手とのコミュニケーションを最優先し、プログラムも聴衆が心から楽しめる作品を組むことにこだわる。そんな彼が4月9日に80歳を迎え、これを記念して桂冠名誉指揮者を務める日本フィルハーモニー交響楽団と「チャイコフスキー交響曲全曲チクルス」を開催することになった。
小林研一郎は1974年に第1回ブダペスト国際指揮者コンクールで優勝の栄冠に輝き、以来ハンガリー国立フィル、チェコ・フィル、日本フィルをはじめさまざまなオーケストラの要職を務め、現在も日本と欧米を行き来する超多忙な生活を送る。
「コンクールの優勝はまさに“女神がほほ笑んだ”としかいいようがないですね。私は芸大の作曲科を卒業してから25歳で指揮科に入り直し、34歳まではもがきの時期でした。世に出たくても手段がなかったんです。そうこうするうちにコンクールの年齢制限に引っかかるようになった。ブダペストのコンクールは唯一私が受けられるものだったわけです」
この優勝により指揮活動は一気に広がり、国内外のオーケストラを指揮。情熱的で一途に作品の内奥に迫っていく彼は、「炎のコバケン」と呼ばれるようになる。
「でも、私は作品に潜むペシミスティック(厭世的、悲観的)な面を冷静に見つめ、それを描き出す演奏を好みます。チャイコフスキーの交響曲もペシミスティックな表現が全編に投影されている。明るく楽しい音楽ではないのです。チャイコフスキーの作品は舞踏のリズムに根差した楽章やおだやかな旋律もありますが、根底に潜んでいる作曲家の神髄に近づき、苦悩、悲劇、慟哭などを表現したい。それこそがチャイコフスキーなのです」
彼にとってチャイコフスキーの交響曲はロンドン・フィルと全曲録音も行っている自家薬籠中の作品。だが、コバケンはいずれの作品に対峙するときも、初めて楽譜を見たときのような新鮮な気持ちを抱く。今回のチャイコフスキーも、新たな発見を見出す演奏を目指す。
「指揮の世界というのは高みを知れば知るほど行き詰る世界。100人を超えるオーケストラの才能ある集団をどうしたら輝かせることができるか、それをいつも考えて指揮しています」
情熱的な指揮の奥に潜むチャイコフスキーの真意、それを演奏から聴き取りたい。
公演の問い合わせ=マエストロ小林研一郎80th祝祭演奏会実行委員会 Tel.03-6721-1792
文=伊熊よし子(音楽ジャーナリスト)
(ENGINE2020年5月号)
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