電力事業の覇権を制すのは発明王のエジソンか、それともカリスマ実業家のウェスティングハウスか? 映画で知る19世紀末の〝電流戦争″。
電力がアメリカの街灯を照らしはじめた19世紀後半。2つの電流方式をめぐる、熾烈な戦いが繰り広げられていた。かたや直流方式で全米の電力覇権を狙うトーマス・エジソン。こなた交流方式で天才発明家に真っ向対決を挑んだ実業家のジョージ・ウェスティングハウス。映画『エジソンズ・ゲーム』で描かれるのは、1880年代から90年代にかけて起きた、いわゆる〝電流戦争″の行方である。
電気が一方向に流れることから扱いが楽でありながら、当時の技術では遠方まで電気を運ぶことができなかった直流方式。一方、電気の流れが周期的に変わる交流方式は、扱いは難しかったものの、電気を遠くまで、安価に送ることができるという利点があった。今では直流、交流それぞれの特性を生かした使い分けがなされているが、本作を観ると、いかに両陣営の争いが熾烈なものだったのかが分かる。とりわけエジソンによるライバル陣営へのネガティブ・キャンペーンは凄まじかった。マスコミを利用してウェスティングハウスを〝ハゲタカ″と中傷するばかりか、交流方式がいかに危険なものかを証明するため、馬一頭をパフォーマンスで感電死させてしまったのだから……。
作品自体は両者の対決に焦点を絞っているので、電力の知識がなくても充分、楽しめる仕上がりになっている。傲慢で攻撃的な天才発明家と、現実的で人徳もあるカリスマ実業家という2人のキャラクターの対比も興味深い(ベネディクト・カンバーバッチとマイケル・シャノンが好演)。一方、もう少し掘り下げた人物像を見てみたかったのが、テスラ・モーターズの社名の由来にもなっているニコラ・テスラ(ニコラス・ホルト)だ。〝電流戦争″でウェスティングハウスと組んだもう一人の天才は、その後も自動車エンジンの点火プラグやラジコンなど、数々の発明品を生み出した。だが晩年は経済的に困窮し、質素なホテルの一室でほとんど無一文の状態で86年の生涯を閉じたという。その波乱万丈の人生を描くには、もう一本分の映画が必要になるかもしれないが。
監督はアルフォンソ・ゴメス=レホン。『エジソンズ・ゲーム』はTOHOシネマズ日比谷他全国公開中。108分。配給:KADOKAWA c2019 Lantern Entertainment LLC. All Rights Reserved.
文=永野正雄(ENGINE編集部)
(ENGINEWEBオリジナル)
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。
文=永野正雄(ENGINE編集部)
advertisement
2024.12.18
LIFESTYLE
Maserati GranCabrio × PRADA スタイリス…
PR | 2024.12.19
WATCHES
365日の相棒! シンプルなデザインに最新技術を詰め込んだ、ザ・シ…
PR | 2024.12.18
CARS
【プレゼント】公道を走れるレーシング・マシンからラグジュアリー・オ…
PR | 2024.12.13
WATCHES
機能美にあふれ身に着ける人を鼓舞する時計、IWC
PR | 2024.12.12
CARS
「我が家はみんなイギリス好き」初代から3台を乗り継ぐ大谷さんの家族…
PR | 2024.12.12
CARS
SUVに求められる要素をしっかり満たしている 新しくなったルノー・…
advertisement
2024.12.20
【リセール無視、胸が高鳴る400万円台新車】第1位は武田公実が「内燃機関の在庫車が入手できるのは最後のプレゼント」と欲しくてたまらないあのクルマ!
2024.12.18
【もうええでしょう、即注文! 600~800万円台新車】第1位は編集部シオザワが「還暦を過ぎて乗ったらカッコいいジジイになれます」と大プッシュするあのクルマ!
2024.12.15
2024年版【 来い! 俺の宝船! 1000万円台】第1位は齊藤 聡が「消えゆくのを待つばかりのNA水平対向6の鼓動を楽しめる」と喜びを噛みしめたあのクルマ!
2024.12.17
【俺の年収の壁も撤廃希望! 800~1000万円新車】第1位は日下部保雄が「その昔に憧れ、今その志を受け継いだミドシップに乗れるのは幸せだ」と尊むあのクルマ!
2024.12.17
新型メルセデス・ベンツEクラスにAMGモデルのE53が登場 3.0リッター直6ベースのPHEV