2020年はベートーヴェンの生誕250周年。数々の記念盤が発売される中、音楽ジャーナリストの伊熊よし子さんが選んだこの1枚を紹介。
ヴァイオリン2本、ヴィオラ、チェロという弦楽器4本によって演奏される弦楽四重奏曲は、作曲家が魂を込めて作り上げた真摯な作品が多い。ハイドンから始まり、モーツァルトへと受け継がれ、ベートーヴェンは先達の構成と表現と内容を究極まで練り上げ、弦楽四重奏団(カルテット)のバイブルとも称される作品群を生み出した。
弦4本でオーケストラにも匹敵する、壮大で荘厳で緊迫感に富み、喜怒哀楽のすべての感情を表現するこのベートーヴェンの弦楽四重奏曲は、9曲の交響曲、32曲のピアノ・ソナタと同様にベートーヴェンにとって大切な作品群である。公爵や伯爵からの依頼によって書かれたものの、16曲のなかには創造性と自発性、冒険心が詰まっている。
私はカルテットをこよなく愛し、親密的なホールで名手たちによる演奏を聴くと、弦4本が作り出すシンプルながら奥深い音楽に身も心もとらわれ、強い感銘を受ける。
いま世界には数多くの若手実力派カルテットが存在するが、なかでも熱い視線を浴びているのがエベーヌ弦楽四重奏団だ。1999年フランスで結成され、2004年には難関として知られるミュンヘン国際音楽コンクールで優勝の栄冠に輝いた。そんな彼らが2020年のベートーヴェン生誕250年のメモリアル・イヤーに向け、19年から20年にかけてベートーヴェンの弦楽四重奏曲によるワールド・ツアーを敢行。そのライブを全集でリリースした。
ここでは自由闊達で集中力に富み、ロマンあふれる香り高き音色、劇的で悲劇的な曲想などを緊密なアンサンブルで聴かせている。サントリーホール(ブルーローズ)における収録も含まれ、全編にライブならではの生気と緊迫感、濃密な臨場感がただよう全集を誕生させている。なお、メンバーはピエール・コロンベ(第1ヴァイオリン)、ガブリエル・ル・マガデュール(第2ヴァイオリン)、マリー・シレム(ヴィオラ)、ラファエル・メルラン(チェロ)。カルテットはアンサンブルを聴く醍醐味ももちろんあるが、ひとりひとりの音がストレートに響いてくるジャンルでもある。エベーヌ弦楽四重奏団の4本の弦の音も、まさに心の奥に強靭な衝撃をもたらす。
文=伊熊よし子(音楽ジャーナリスト)
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文=伊熊よし子(音楽ジャーナリスト)
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