フルサイズの大型ボディに驚愕の動力性能をもたらす4.4LのV8ツインターボ過給エンジンは、アルピナ史上最強の621psを発揮する。
BMWアルピナがX7をベースとした新型モデル、XB7を発表した。X7は全長が優に5mを超える、フルサイズSUV(BMW流に言えばSAV)である。アルピナはパワーユニットに4.4LのV8ツインターボ過給エンジンを選び、これに独自のチューニングを加えてXB7に搭載している。生産が開始されるのはこの8月からで、日本市場には2021年上旬に上陸予定という。日本向けは右ハンドル仕様となる。ニコル・オートモビルズが発表した車両価格は2498万円(消費税込)である。
X7はフルサイズの大型ボディを備えるが、これは北米でフルサイズSUVの覇を競うキャディラックやリンカーンの大型SUVに対抗するモデル。ロング・ルーフの2BOXボディでありながら全長が5150mmにも達するのは、補助席扱いではない3列目のシートを難なく収めるためだ。全幅は2000mm、全高が1797mmに達するXB7は、車両重量が2655kgに達する。
この巨体にアルピナの名に恥じることのない動力性能を与えるために、4.4LのV8ツインターボ過給エンジンは大幅に強化され、最高出力は621ps/5500-6500rpmに達する。これはB7に搭載されるユニット(608ps)を上回るものだ。アルピナは55年に及ぶ同社の歴史のなかで最強のパワーユニットだとしている。最大トルクはB7用と変わらぬ800Nm/2000-5000rpmを発揮する。1世代前のユニットに比べて、低回転域で引き出せる全負荷最大トルクが大きく増強されているのが特徴だ。
この強心臓に組み合わされる変速機はスイッチトロニック付きの8段AT(ZF 8HP76)で、駆動力はアルピナによって制御プログラムがマッピングし直されたxDriveシステムによって4輪に振り分けられる。リア・ディファレンシャルには最大ロッキング・トルクが2000Nmにも達する強力な電子制御式差動制限機構も組み込まれる。
このパワー&ドライブ・トレインによって実現される動力性能は驚くべきものとなっている。0-100km/h加速を4.2秒、0-200km/h加速をわずか14.9秒でこなし、最高巡航速度は実に290km/hという。車両重量が2.6tを超え、前面投影面積もけっして小さいとはいえない巨体を思えば、俄かには信じがたいパフォーマンスである。WLTP測定法による燃料消費率は7.2L/km、二酸化炭素排出量は312g/kmと発表されている。
この巨体と動力性能を支えるシャシーは、アルピナが独自のチューニングを施した電子制御式エアサスペンション・システムだ。エアスプリング式であることを活かしたライドハイト調整機構が標準装備され、オフロード走行を前提として40mm高くセットアップすることが可能なだけでなく、スポーツ・モード選択時もしくは車速160km/h超では自動的に20mm低くなる。スポーツ・モード・プラス選択時もしく車速250km/h超時にはそこからさらに200mmライドハイトが下がり、標準状態より40mmも低くなる。当然、重心は下がり、これに加えて前後サスペンションのネガティブ・キャンバー量が増えて、ダイナミックなハンドリング性能とロードホールディングの向上に貢献するという。
アルピナXB7はアクティブ・スタビライザーも標準装備する。ロードホイールは21インチを標準装備するが、オプションで鍛造製の23インチ軽量ホイールが用意されており、これはアルピナ史上、最大径のホイールになるという。
ステアリング・システムはアルピナが独自のキャリブレーションを施したインテグレイテッド・アクティブ・ステアリング(4輪操舵機構)を標準装備する。優れたステアリング・レスポンスを実現するだけでなく、市街地などの低速走行時にはリアのステアリング機構に最大切れ角2.3度の逆相制御が入るため、ホイールベースが3105mmにも達する大型ボディの取り回しも容易になっているという。
XB7のトピックのひとつは、完全新設計のステンレス製アルピナ・スポーツ・エグゾースト・システムの投入だ。排気経路に組み込んだフラップの開閉によってエグゾースト・ノートを調整するものだが、スポーツ・モード時にはXB7のキャラクターに相応しい、クリアで鮮明なサウンドを楽しむことが可能だとアルピナは主張する。
3列シートを前提として設計された大型SUVは、その用途や車両重量などを鑑みて、穏やかな性格の動的仕立てが施されるのが常だが、アルピナXB7は、そこに新風を吹き込むことになるはずだ。
文=齋藤浩之(ENGINE編集部)
(ENGINEWEBオリジナル)
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