ボルボの旗艦SUV、XC90の4人乗り超豪華モデル、XC90エクセレンスを買うならこれが最後のチャンス。
ボルボのフラッグシップSUVのXC90をベースに、後席をふたり掛けとして荷室スペースとの間をガラスで仕切った、なんとも贅沢なモデル、XC90T8ツインエンジンAWDエクセレンスが生産終了となり、日本に割り当てられた最後の10台が上陸したというので、その1台に試乗してきた。
7人乗りがウリだったベース・グレードのXC90の2列目を贅沢なふたり掛けにして、しかも2列目と荷室の間をガラスで仕切ったところがこのクルマの最大のポイントだ。メルセデス・ベンツのSクラスやBMWの7シリーズのロング・ホイールベース・モデルと比べると、まずSUVなので室内の空間が広々している。特に頭上スペースの余裕はSUVでなければ実現できない贅沢さだ。後席と荷室をガラスで仕切ったのは、サルーンのような個室感を演出するためだが、果たしてスウェーデン流の贅沢空間がどんなものか、エンジン編集部時計担当の前田記者を誘って体験することにした。
まずは後席の装備のチェックから。シートは全席と同格の独立したタイプで、シートヒーターやベンチレーションはもちろん、マッサージ機能やリクライニング機能も備え、前席下に小ぶりのフットレストも備える。この左右のシートの間にはアームレストとコンソールが設けられており、アームレスト内には飛行機のビジネスクラスよろしくテーブルが収納されているほか、シャンペンのボトルがちょうど1本入るくらいの容量のクーラーボックスが備わり、スウェーデンの有名なクリスタルのブランド、オレフォス社のグラスも常備されている。
このあたりはSクラスも7シリーズもだいたい同等の備えをしているが、贅沢さという点ではSクラスや7シリーズに軍配が上がる。例えばリムジン仕様の7シリーズのリクライニングは飛行のプレミアム・エコノミーのシートくらいまで背もたれを倒すことができ、前席(助手席側)は大きく前方にスライドしてオットマンに脚を乗せてゆったりと寛ぐことができるが、XC90のリクライニングは若干背持たれの角度が変わる程度で、7シリーズほどではない。これをどう捉えるかによって、実はこのクルマの使い道がかなり変わってくる。
Sクラスや7シリーズの贅沢さは相当なもので、革のシートの感触や包み込むような座り心地、まるで羽枕のように柔らかいヘッドレストなど、社有車としてCEOクラスの人が使うようなイメージだが、XC90にはそこまでの贅沢感はない。じゃあ、Sクラスや7シリーズより劣っているのかと言えば、そんなことはない。XC90の後席のスペースも贅沢だが決して派手ではなく、デザインもシンプルで清潔感がある。実はこれこそがスウェーデン流のプレミアムであり、近年のボルボのこうしたシンプルだけれどエレガントで高級感があるデザインはすこぶる評判がいい。
で、エンジンの時計担当前田の意見はそのあたりのことをちゃんと感じ取っていたようで、以下のような印象を述べている。
「このクルマはいわゆるショーファー・ドリブンというよりも、大切な人との時間をより贅沢に過ごすための方が楽しそうな気がします。たとえば家族で満点の星空を見に高原へ行くとか、どこかへ旅行に行くにしても家族みんなが平等に幸せになれる」
これ、なかなか的を得ているようで、ボルボカー・ジャパンにどんな人が買っているのか聞いてみると、「家族用に」と少し資金に余裕のある人が買うのが多いそうで、社有車としてとか仕事用にというのは意外と少ないらしい。ちょっと贅沢なファミリーカーということか。
ついでに前田の率直な後席のインプレッションもお伝えしておこう。
「リア・シートは陳腐な表現ですが、包み込まれるような感じ。エルグランドやアルファード、メルセデスのVクラスより大きな豪華な送迎車にも乗りましたが、シートが柔らかく、しなやかで心地良かったです」
最後にハンドルを握って走った印象もお伝えしておくと、エアサスペンションが標準で装備されており、乗り心地は柔らかめで、ひと言でいうとソフト。ゆったりした乗り心地は素晴らしいが、山道を飛ばすようなクルマではない。高速道路も走ってみたが、柔らかく、大きな船に乗っているような感じだった。とにかく走りは滑らかでスムーズ。
パワートレインは、2リットル4気筒ターボと前後ひとつずつの電気モーターの組み合わせのプラグイン・ハイブリッドで、エンジンの最高出力だけでも318psもあり、モーターは前が34psで後ろが65psもある。ちなみに車両重量は2370kgもあるが、システム全体で400ps以上もあるので重さはまったく感じなかった。
念のためお知らせしておくと、これが最後のセールスということもあり、基本3年保証のところ延長保証2年を無償で提供するほか、なんとプラグイン・ハイブリッド用の家庭用充電機器の設置費用、20万円分をサポート。さらにボディとアルミホイールのコーティングまでサービスしてくれる。お得なのはもちろんだが、家族に贅沢な気分を味合わせてあげたいなら、こういう選択もありかも。
■ボルボXC90T8ツインエンジンAWDエクセレンス
駆動方式 フロント横置きエンジン+前後モーター
全長×全幅×全高 4950×1960×1760mm
ホイールベース 2985mm
トレッド(前/後) 1675/1680mm
車重 2370kg
エンジン形式(モーター) 水冷直列4気筒DOHCターボ(前後交流同期電動機)
排気量(モーター) 1968cc(前22kW、後28kW)
最高出力(モーター) 318ps/6000rpm(前34ps、後65ps)
最大トルク(モーター) 400Nm/2200-5400rpm(前160Nm、後240Nm)
トランスミッション 8段AT
サスペンション前 ダブルウイッシュボーン/エアスプリング
サスペンション後 マルチリンク/エアスプリング
ブレーキ前後 通気冷却式ディスク
タイヤ前後 275/40R21
車両本体価格(税込) 1359万円
文=塩澤則浩(ENGINE編集部) 写真=望月浩彦
(ENGINE WEBオリジナル)
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