小柄なボディに3列シート配置を実現したGLB。いまだ多人数乗車が好まれる日本市場にピッタリかも。
新型メルセデス・ベンツGLAが通算で2代目にあたるのに対して、GLBは今回が初登場となるブランニュー・モデルである。つまり、進境いちじるしいNGCC(=ニュー・ジェネレーション・コンパクト・カーズ)を、この第2世代でさらに普及させて、シェアを拡大させるための戦略商品ということでもある。
兄弟関係にある新型GLAが「縮小版GLE/GLC」とするならば、このGLBは見てのとおり「小さなGLS」そのものだ。そのスクエアなスタイリングがGLSの縮小版であるだけではなく、室内に“3列シート”を備えるところもGLSと共通する。GLBのボディ・サイズはGLAに対してホイールベースで100mm、全長で225mm長いが、3列シートSUVとしては、ボディはかなり小さな部類に入る。GLBより全長の短い3列シートSUVは、ランドローバー・ディスカバリースポーツやホンダCR-Vなど数えるほどしか存在しない。
とはいえ、GLBのサード・シートは、あくまで緊急用と割り切るべきものであることは否定できない。メルセデス自身もあえて「身長168cm以下の方であれば安全にお乗りいただけると確認」と身長制限っぽく言明するほどだ。それに、実際のところは、168cmどころか、160cm台前半の人でも長時間すごすのは過酷であろうと想像される。ただ、サード・シートを日常的に使うなら別のクルマを選ぶべきで、GLBのサード・シートは「イザというときに、それがある」という安心感こそが重要なのだ。さらに3列シート配置の7人乗りを想定したパッケージ・レイアウトだからこそ、2列5人乗り状態にすると、室内やトランクはとても広く使える。
いまだにミニバンに一定の需要のある日本では、GLAよりもGLBが売れ筋になるはず……とメルセデス・ベンツ日本は考えているようだ。GLAがディーゼル4WDの1モデルのみでスタートしたのに対して、GLBには最初からディーゼルとガソリンという2種類の選択肢が用意される。しかも、ディーゼルの駆動方式をあえて手頃なFFとして、GLAのわずか10万円高という、すこぶるキャッチーな価格設定とした点も、日本におけるGLBへの期待の大きさを物語っている。
ただし、今回の試乗車はそんなディーゼルではなく、2.0Lガソリン・ターボを積む「GLB250」だった。250は駆動方式も4WDとなり、さらに20インチ・ホイールやスポーツ・サスペンション、本革シート、そしてMBUX(あのAI音声入力やナビ機能)などが備わる「スポーツ」というトリム・グレードが標準となる。
背高の四角四面デザインもあって実際より1~2クラス立派に見えるGLBの走りは、その見た目から想像するよりは、ずいぶんと軽快である。そこには今回の試乗車に標準装備となっているスポーツ・サスペンションの影響も皆無ではないだろうが、やはり意外に軽い車重のおかげかもしれない。このGLB250はよりコンパクトなGLA200d(駆動方式はどちらも4WD)と比較して、車両重量は30kg重いだけなのだ。
メルセデス・ベンツ日本の思惑どおり、GLBは日本でのヒットの予感がする。GLAもよくできた魅力的なコンパクトSUVだが、そうしたスポーティなコンセプトは良くも悪くもライバルが多い。対して、GLBのように素直に背が高いSUVは今どきとしては貴重で、そのデザインにはGLSのみならず、カリスマ的存在のGクラスとの血縁関係もうかがわせるところが心憎い。
文=佐野弘宗(自動車ジャーナリスト) 写真=望月浩彦
(ENGINE2020年12月号)
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。
advertisement
2024.11.23
LIFESTYLE
森に飲み込まれた家が『住んでくれよ』と訴えてきた 見事に生まれ変わ…
PR | 2024.11.21
LIFESTYLE
冬のオープンエアのお供にするなら、小ぶりショルダー! エティアムか…
2024.11.21
CARS
日本市場のためだけに4台が特別に製作されたマセラティMC20チェロ…
PR | 2024.11.06
WATCHES
移ろいゆく時の美しさがここにある! ザ・シチズン の新作は、土佐和…
2024.10.25
LIFESTYLE
LANCIA DELTA HF INTEGRALE × ONITS…
2024.11.22
WATCHES
パテック フィリップ 25年ぶり話題の新作「キュビタス」を徹底解説…
advertisement
advertisement
2024.11.16
こんなの、もう出てこない トヨタ・ランドクルーザー70とマツダ2 自動車評論家の渡辺敏史が推すのは日本市場ならではの、ディーゼル搭載実用車だ!
2024.11.15
自動車評論家の国沢光宏が買ったアガリのクルマ! 内燃エンジンのスポーツカーと泥んこOKの軽自動車、これは最高の組み合わせです!
2024.11.15
GR86の2倍以上の高出力 BMW M2が一部改良 3.0リッター直6ツインターボの出力をさらにアップ
2024.11.20
抽選販売の日時でネットがざわつく 独学で時計づくりを学んだ片山次朗氏の大塚ローテック「7.5号」 世界が注目する日本時計の傑作!
2024.11.16
ニスモはメーカーによる抽選販売 日産フェアレディZが受注を再開するとともに2025年モデルを発表
advertisement
2024.11.23
LIFESTYLE
森に飲み込まれた家が『住んでくれよ』と訴えてきた 見事に生まれ変わ…
2024.11.21
LIFESTYLE
冬のオープンエアのお供にするなら、小ぶりショルダー! エティアムか…
2024.11.21
CARS
日本市場のためだけに4台が特別に製作されたマセラティMC20チェロ…
2024.11.06
WATCHES
移ろいゆく時の美しさがここにある! ザ・シチズン の新作は、土佐和…
2024.10.25
LIFESTYLE
LANCIA DELTA HF INTEGRALE × ONITS…
2024.11.22
WATCHES
パテック フィリップ 25年ぶり話題の新作「キュビタス」を徹底解説…
advertisement