年を追うごとに人気が高まり、販売台数も増えているランボルギーニ。今回は2台のウラカンEVOを連れ出し、ランボルギーニの魅力を紐解きつつ、ウラカンにとって2駆と4駆のどちらがより魅力的なのかを探ってみた。
新井 イタリアン・スーパースポーツカーのもうひとつの雄、ランボルギーニ。SUVのウルスが追加された影響も大きいですが、販売台数が右肩上がりで増えています。日本でも人気がとても高い。ランボルギーニが人気を博しているワケはどのあたりにあるのでしょうか。
山崎 そもそもの商品がとても良くなったというのが一番の理由だよね。1998年にアウディがランボルギーニを買って、そこから圧倒的にランボルギーニのクオリティ・コントロールも高くなったし、それまでのランボルギーニと比べるとね、買うことに対する安心感が上がり、そしてなによりブランド作りというものが非常に上手くなった。その間に社長もいろいろ変わったけれど、特に最近その座を退いたステファノ・ドメニカリと、その前任だったステファン・ヴィンケルマンはものすごくランボルギーニというブランドを作るテクニックに長けていた。同じ価格帯、同じクラスのパフォーマンスのスーパーカーはたくさんあるけれど、その中であえてランボルギーニを選ぶ、商品の説明も価格も聞かずに、カスタマーが勝手にそれを理解して購入するようになってきたというのは、高級ブランドとしてランボルギーニが完成した証拠だと思う。
大谷 アウディの完全主導で開発されたモデルは10気筒エンジンを搭載するガヤルド。そしてその後継車ともいえるウラカンで、ランボルギーニの人気は一気に爆発的なものになった。この両モデルには乗りやすさがあり、商品の分かりやすさもある。これによって敷居が下がったというか、ランボルギーニを買うという難しさが一気に減りましたよね。
新井 それと同時にお客さんの層が変わりましたよね。20年以上前と今のカスタマーには大きな違いがあるように感じます。以前のランボルギーニは一部の特殊な人、マニアといってもいいかもしれませんね、そんなユーザーに向けたクルマのように見えたけど、今は一般的になったというか、確実にカスタマーの幅が広がった。ランボルギーニもそういうイメージを作り出すことに成功している。価格は高いけれど、ハードルはかなり低くなったんじゃないでしょうか。それもランボルギーニに多くのカスタマーが集まる理由なのかな、と思ったりしています。
塩澤 SUVのウルスが登場したこともランボルギーニ人気の上昇を後押ししたでしょ。
山崎 似たような戦略で成功したのがポルシェ。カイエン、パナメーラ、マカンなど、スポーツカー以外のモデルによりポルシェの敷居は下がった。でもそれが成功しすぎたゆえに、新興国市場ではポルシェをスポーツカー・メーカーと認識している人は少ない。ランボルギーニの場合も今や全生産台数の半数はウルスになってしまった。スポーツカー・メーカーの伝統がSUVの成長とともに消えてしまわないことを望みたいね。今やランボルギーニを買うカスタマーの半数はウルスを求めるわけだから。
大谷 アヴェンタドールなんか20代のラッパーの人が乗っていたりする。それを受けて20代でウルスを購入するカスタマーも多いと聞きます。まあブランド・イメージがそうなってくれば、新井さんがおっしゃったとおり、より幅広い多彩な層のカスタマーが増えてくる。昔ランボルギーニを買うカスタマーは、日本ではスーパーカーブームの洗礼を受けた50代の人が中心だったけれど、その年齢も大きく下がり始めている。つまりこれまでとは違った新しい出会いでランボルギーニを知ったというファンやカスタマーがたくさんいるということなのでしょうね。
新井 例えば家にランボルギーニ、フェラーリ、マクラーレンとさまざまなスーパーカーが置いてあったとして、ウチの母親なんかでも、たぶんランボルギーニだけは分かると思いますよ。そのくらい個性は強い。
大谷 今日改めて試乗して印象に残ったのは乗り心地。素晴らしかった。乗った印象と外観から想像するものが最も大きく違うのは、間違いなくランボルギーニですよ。
塩澤 マクラーレンのMC4-12Cが出た時なんか、驚いたものね。スーパースポーツなのにこの乗り心地でいいのかよって。ここからいろいろなスーパーカー・メーカーがその味つけを真似していったんだろうな。12Cが出た時点でランボルギーニはまだガヤルドだったから、完全に出遅れてしまった感があった。でもどんどん進化して、ライバルに追いつくどころか、見事に上回った。
大谷 EVOは間違いなく進化しているね。4輪駆動技術を使ったドライビング・ダイナミクスでは間違いなくライバルの中で先頭を走っていると思う。EVOにはサーキットでも試乗したけれど、積極的にオーバーステアを楽しませてくれるようになった。
山崎 そうするとAWDがいいの、RWDがいいのという永遠のテーマに辿り着いてしまう。
新井 エンジンでポルシェ911を取り上げるときに2輪駆動がいいか4輪駆動がいいか論議になりますが、それと同じですね。
大谷 EVOとEVO以前のモデルかで、その答えは違ってくると思う。ウラカンのRWDでいえば、EVO以前のほうが脚がよく動いて挙動変化もはっきりしていたから操っていて最高に楽しかった。でも、EVOになって脚が締め上げられたようで、コーナリング性能は高まったけれど操る楽しさは一歩後退。同じRWDでもサスペンションの味付けひとつでこうもキャラクターが変わるのかとビックリしました。
山崎 僕は断然AWD派ですね。常に4輪にトラクションがかかっていて何が悪いの、というのが正直な気持ち。アウディにしてもランボルギーニしても、あれだけ自らのコア・プロダクトはAWDだと宣言しておきながら、カスタマーが欲しいと言えばRWDも作るのかよ、という哲学の弱さが自分としては納得できない。今回試乗したウラカンもそう。タイトな上りコーナーや発進加速時には、明らかにAWDの方に魅力を感じる。たとえ車両重量でハンデがあったとしても。だからまず、限定車だったけれどガヤルド時代にRWDが出た時には驚いた。
新井 考え方に違いはありますが、EVOに関しては、お二人ともにAWDがいいということですね。
山崎 600ps、700psは普通になりつつある現代のスーパーカーに必要なのは、まずは高性能なスタビリティ・コントロールやトラクション・コントロール。これがなければ、ストレートでもスピンしてしまいかねないスーパーカーなんて何台もあるかもしれない。AWDはその意味でも必要不可欠な装備なのではないかと。ランボルギーニで数々の名車を設計した技師のパオロ・スタンツァーニもすでにカウンタックでAWD化を意識したくらいですから。
大谷 自動車工学的には、確かにAWDの方が速いことは間違いない。速くて安定している。いわば自動車の理想像です。DCT(デュアルクラッチ式自動MT)も同じ。速さや安定を求めるならMTよりも勝っている。しかしその一方で、性能は低くてもいいから、RWDのクルマをコントロールしたり、MTで変速を行いたいと考えるカスタマーが居るのも事実。趣味性の高いクルマこそ、自分の手で操る歓びを求めたくなるんじゃないでしょうか。
山崎 MTのスーパーカーはもはやほとんど存在しない。でも逆にそれを求める、趣味性の高いカスタマーは確実に存在する。わざわざ面倒な作業をしてでもRWDやMTに乗りたいというのは、スーパーカー乗りの究極の心なのかもね。
話す人=山崎元裕(まとめ)+大谷達也+塩澤則浩(ENGINE編集部)+新井一樹(ENGINE編集部) 写真=望月浩彦
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■ランボルギーニ・ウラカンEVO RWD
駆動方式 ミドシップ縦置きエンジン後輪駆動
全長×全幅×全高 4520×1933×1165mm
ホイールベース 2620mm
トレッド 前/後 1668/1620mm
車検証記載車両重量(前後軸重) 1600 kg(前640kg/後960kg)
エンジン形式 V型10気筒DOHC40V直接+間接噴射
総排気量 5204cc
ボア×ストローク 84.5×92.8mm
最高出力 610ps/8000rpm
最大トルク 560Nm/6500rpm
変速機 デュアルクラッチ式7段自動MT
サスペンション形式 前後 ダブルウィッシュボーン式
ブレーキ 前後 通気冷却式ディスク
タイヤ 前/後 245/35ZR19/305/35ZR19
車両価格(税込) 2653万9635円
■ランボルギーニ・ウラカンEVO
駆動方式 ミドシップ縦置きエンジン4輪駆動
全長×全幅×全高 4520×1933×1165mm
ホイールベース 2620mm
トレッド 前/後 1668/1620mm
車検証記載車両重量(前後軸重) 1630 kg(前700kg/後930kg)
エンジン形式 V型10気筒DOHC40V直接+間接噴射
総排気量 5204cc
ボア×ストローク 84.5×92.8mm
最高出力 640ps/8000rpm
最大トルク 600Nm/6500rpm
変速機 デュアルクラッチ式7段自動MT
サスペンション形式 前後 ダブルウィッシュボーン式
ブレーキ 前後 通気冷却式ディスク
タイヤ 前/後 245/30ZR20/305/30ZR20
車両価格(税込) 3282万7601円
(ENGINE2020年12月号)
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