2021.01.13

CARS

【メルセデス・ベンツ300TE(1992) 長期レポート ♯55】まだまだイケます!1992年型メルセデス・ベンツ 300TEこそ、変わらないベンツだ

2008年9月に編集部にやってきた〝ちょっと前のベンツ〞。4年9カ月で14万2000㎞という酷使に耐え、元気に働いています。果たしていまの〝変わらないベンツ度〞は?

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過去13年間分の雑誌記事をWEBで再掲載している連載です。毎週水曜日12時更新。


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2008年9月に編集部にやってきた〝ちょっと前のベンツ〞。4年9カ月で14万2000㎞という酷使に耐え、元気に働いています。果たしていまの〝変わらないベンツ度〞は?


2008年にやってきた

走行距離3万4000㎞の92年型メルセデス・ベンツ300TEを編集部が本誌長期リポート艦隊の44号車として購入したのは2008年9月のことだった。


「メルセデス・ベンツの哲学、〝最善か無か〟を具現化した最後のオーバー・クオリティ・メルセデス」と言われる124型メルセデス・ベンツは、足回りの主要パーツやエンジンのマウントなどを交換していけば、「永久自動車」であり続けるか?をテストするためである。


あれから4年9カ月。オドメーターは、17万6000㎞を刻んだが、長期リポート44号車はいまも通勤や打ち合わせ、取材の足として活躍している。ステーションワゴンなので荷物はたくさん運べるし、驚くほど小回りが利くのでとても便利だ。


ふだんの足としては立派に仕事をこなす44号車だが、「永久自動車」であり続けるか? という長期テストには、メルセデス・ベンツの魅力をもったまま、変わらずにいられるか? というテーマも含まれている。


では1985年にデビューした中型メルセデス、124型の魅力とはなんだろう? 


44号車の担当者がずっと魅せられ続けているのは、しっとりとした上質な乗り味である。ガッチリとしたボディとしなやかに動く足によって、乗り心地が素晴らしい。ボールナット式のステアリング・フィールもいい。きっちりとした手応えがありながらも、操作感はとても滑らかで気持ちいい。アクセル・ペダルは重く、加速は穏やかだが粛々と走る感じは、陸の王者にふさわしいと思う。高速道路における安定感も抜群で、フワフワと浮わついたところが一切ない高級車らしい味わいがある。


こうした魅力を保ち続けるにはどうしたらいいのか? また、44号車はいまどんな状態なのか? を聞くために東京・芝浦のヤナセ東京支店へ鼻先を向けた。


2012年11月にリニューアルしたヤナセ本社。メルセデス・ベンツのサービス工場はパーツ倉庫が近くなり、作業効率が向上した。

後席に驚く

現在の状態を診断してくれたのはサービス担当の副部長、深沢 誠さん。深沢さんは44号車が編集部にやってきたときも、クルマの状態を診断したこの道30年の124マイスターである。あのときは試乗して燃料系の問題を指摘、アイドリングが安定しない症状をインジェクション・バルブの清掃で解決した。今回も早速、試乗してもらう。


44号車を試乗する深沢さん。「ボールナット式のステアリング・フィールが好きなんですよ。これは素晴らしいコンディションです」。

「エンジンはまったく問題ないですね。エアコンも良好。トランスミッションは何もしてないですよね? すごい。素晴らしい。ミッション・オイルは交換するとアタリが変わってしまうことがありますけど、ここまでコンディションがいいなら交換しても問題ないでしょう。2速から3速へシフトアップするときの小さなショックも消えるかもしれない」


深沢さんの話よりも驚いたことがある。後席の乗り心地が素晴らしいのだ。44号車の担当者ゆえ、座るのは運転席ばかり。これほど後席の居心地がいいとは知らなかった。4年9カ月で全部わかってるつもりでいた。124メルセデス、恐るべし!


「リアは油圧のセルフ・レベリング機構が入ってるんですけど、まったく問題ないですね。この距離になるとガタが出てきて、リアが跳ねても不思議じゃないんですけどね。追従性が素晴らしい。元気です、このクルマ。ステアリング・ギアボックスも問題ない。舵もキレイに入る」


試乗を終えると44号車をジャッキ・アップする。


蛍光ランプを手にオイル漏れなどをチェックする深沢 誠さん。「124なら自分の体のことよりよく知ってる(笑)」
サスペンション・アームなどにガタなどは一切なかったものの、ゴムのダスト・ブーツは経年劣化して剥がれ落ちていた。「走行には問題ないから大丈夫です」

「リアの5リンク・サスペンション。ガタはありません。ブッシュ関係もしっかりしてます。デフからのオイル漏れもない。エンジン・オイルの滲みもガスケットを交換してから一切なくなりましたね。パワステのオイルも一滴も漏れてない」


 チェックを終えた深沢さんにメカニックの目から見た124型メルセデス・ベンツの魅力を聞いた。


「シンプルですね。だから丈夫で長持ち。シンプルな機構が集まって出来上がっているんですけど、トータル・バランスが素晴らしいんです。それが上質な乗り味を生んでいる」
魅力を変わらずに保ち続けるにはどうしたらいいでしょう?


「124の弱点はエンジン・オイルの漏れです。オイル染みなどはこまめにチェックしてください。あと、古いクルマは熱に弱いです。熱でいろいろなものが劣化します。夏の渋滞は避けたほうがいいです。アライさんみたいな高速道路往復100㎞を毎日、みたいな使い方はクルマにストレスがなく最高です」


20万㎞を目指してますけど、大丈夫でしょうか?


「いや、まだまだイケます! きちんと手をかければ30万㎞も大丈夫でしょう!」


エンジン・オイルの減りが早くなったため、ゴムのバルブ・シールを交換した。オイルが付いているのが古い方で、見た目は変わらないがゴムが硬くなっていた。プラグが汚れていなかったのは、担当者の使い方が高速道路中心で、オイルを燃やしていたからだと考えられる。(写真=ヤナセ)
綺麗に研磨されたフロント・ディスク。走行距離が多い44号車はオイル交換など、サービスセンターに行く機会が多い。ここまで大事に至らなかったのは、こまめなチェックのおかげだと思っている。
前後ブレーキ・パッドとディスクを17万1000㎞で交換した。フロント・パッドは約4万㎞ごとに、ディスクは約7万5000㎞で交換。リア・パッドは約4万㎞ぶり、ディスクは初めて交換した。
エンジン・オイルの交換などは編集部から近いヤナセ神田支店文京サービスセンターで行っている。受付時間:9:00-19:00(土・日・祝祭日は9:30-18:00)定休日:月曜日 年末年始/Tel.03-5840-5250


取材協力=(株)ヤナセ/http://www.yanase.co.jp


文=荒井寿彦(本誌) 写真=柏田芳敬


■44号車/メルセデス・ベンツ300TE
MERCEDES-BENZ300TE
購入価格:168万円
導入時期:2008年9月
走行距離:3万4570km+17万5871㎞


2008年にENGINE編集部は「長期テスト44号車」としてメルセデス・ベンツ300TE(1992)を購入。1984年にデビューしたこの124型は「消耗部品をちゃんと交換していけば新車同然の状態で長く使える」と言われた名車で、それを検証すべく連載スタート。購入時の走行距離が3万4000㎞だった44号車は、12年後の2019年に走行距離30万キロを突破し、いまだ現役です。


(ENGINE2013年8月号)


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