『バベットの晩餐会』や『ダンサー・イン・ザ・ダーク』といった名作を生んだデンマーク映画。2019年の東京国際映画祭でグランプリを獲得し、本国でも異例のヒットを記録したのが『わたしの叔父さん』だ。
酪農を営む叔父さんと姪の一日を、ほとんど台詞なしで見せる冒頭約10分。27歳の姪が、身体の不自由な叔父さんのために、自らの私生活を犠牲にしていることが伝わる。そんな彼女に新たな出会いがあり、生活にも変化の兆しが見え始めるのだが……。
監督は、小津安二郎を師匠と仰ぐ40歳のフラレ・ピーダセン。ほとんどの場面でカメラは固定され、主人公が声高に自らの心情を語ることもない。また予定調和的なヒロインの自立の物語でもなく、そこはかとないユーモアを漂わせながら、人生の苦汁を淡々と描き出していく。柔らかな光に照らされたデンマークの農村風景も穏やかな、不思議な魅力を湛えた作品だ。

1月29日(金)より、YEBISU GARDEN CINEMA ほか全国順次ロードショー
文=永野正雄(ENGINE編集部)
(ENGINE2021年2・3月合併号)
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