2021.02.11

CARS

コンパクトSUVの戦国時代! VWのTクロス、Tロック、ティグアンのSUV三兄弟に試乗!

まったく勢いの衰えないSUV人気。各社から魅力的なモデルが次々に登場して、SUV市場は戦国時代に突入した。そんななか、今回はフォルクスワーゲン(VW)のTクロス、Tロック、ティグアンの3台に試乗した。


ライバルがいっぱいのコンパクトSUV市場

昨年、Tクロス、さらにクーペ・スタイルのTロックを発売して、一気にコンパクトSUVで攻勢をかけてきたVWだが、正直それまではSUVモデルではちょっと影が薄かった。欧州ではルノー・キャプチャーやプジョー2008、ジープ・レネゲードと言った街乗りSUVが大人気で、もはやSUVは派生車種ではなく、立派なメインストリームになっていたが、VWは出遅れ感があった。


しかし、VWが元々SUVに力を入れていなかったのかと言えば、全然そんなことはなくて、ポルシェのカイエンと同時に開発したトゥアレグやゴルフがベースのティグアンをいち早く導入してSUV市場のトップを走っていたこともある。さらに、ベースのポロをオールロード風に仕立てたクロス・ポロは、FFのまま車高だけをちょっと上げた、なんちゃってSUVだったが、大人気だった。そんなVWが投入した期待のTクロスとTロックに、日本上陸から少し時間が経ったところであらためて試乗してみることにした。ついでと言ってはなんだが、兄貴分のティグアンにも乗ったので、VWのSUV三兄弟について報告したい。


カジュアルさが売りのTクロス

最初に乗ったのはTクロスTSIの1thプラス。Tクロスの初回導入モデルは1thと1thプラスがあり、1thプラスはドアミラーやホイール、ダッシュパネル、シートなどがカラー・コーディネートされたデザイン・パッケージが標準で装備されており、価格は1thの301.9万円より36万円高い337.9万円だ。試乗車のターコイズ・メタリックのボディカラーとコーディネートされた色が黒基調と言うこともあって、ちょっと内装が地味な印象だが、ホワイト・ボディとオレンジ内装の組み合わせなど、これまでのVWにはない、ポップな仕立てもあるというのが売りだ。


全長、全幅、全高はそれぞれ4115mm、1760mm、1580mm。ちなみに三兄弟のなかではTクロスがいちばん小さい。次に大きいのがTロックで、その次がテイグアンという順番。FFのみの設定で搭載するエンジンは、ガソリンの999ccの3気筒ターボの一種類。1リッターの3気筒で車重が1270kgもあって大丈夫かと心配になるが、ベースのポロの最高出力が95psだったのに対してTクロスは116psと21psも高められているのと、けっこう高回転までエンジンを回すようなセッティングになっているので痛痒はまったく感じない。街中やちょっとしたアップダウンのある道を走ってみたが、キビキビと元気に走る。ただ、絶対的な動力性能は大したことはないので、高速道路の追い越し加速などはそれなりにという感じだ。


乗り心地はやや硬めな印象。これは215/45R 18インチ・サイズのタイヤによるところが大きい。聞くところによれば、Tクロスにも16インチ・タイヤを履く仕様があって、そちらは乗り心地がいいらしい。もうこれは好みの問題。Tクロスのようなカジュアルで若者向けのモデルは、多少乗り心地が硬くても見た目重視で18インチを選ぶというのは確かにありだ。一方、ちょっと落ち着いた雰囲気が欲しいという人は、ボディ・カラーもシックな色を選んで当たりが若干ソフトな16インチ・タイヤにするという手もありだと思う。ライフスタイルに合わせてどうぞ、というのがVWの考えだろう。


室内はハードプラスチックが多用されているが、カジュアルなデザインが質感をカバーしている。
ファブリックのシートにも差し色が入って、カジュアルな雰囲気になっている。

三兄弟の末弟で、一番カジュアルなTクロス。室内もコンセプトのとおり他のVWのクルマとは違う気軽さで、ダッシュボードなども叩くとコツコツと硬いハードプラスチックが多用されている。それでも安っぽく見えないのはデザインの妙というほかない。室内のデザインではDSの斬新さが注目されているが、Tクロスの室内は、VWらしく落ち着いた雰囲気もあり、なおかつカジュアルという、いい落とし所にあると思った。


先にも述べたように、Tクロスのベースはポロだが、天地方向にスペースが取れるSUVのメリットを最大限に生かしたスタイリングのおかげで、室内空間はポロより広い。それどころか車格が上のゴルフにも勝とも劣らぬ広さだと言える。小さいからちょっとした買い物だって苦にならないし、いざとなれば荷物もたくさん積める。気がつけば、少し前ならハッチバックのポジションだったところまでSUVが降りて来ている。TロックがVWの入門モデルになる日も近いと思った。


デザイン優先のTロック

次に乗ったのは、Tロック。頭は同じTなので、クロスなのかロックなのか時々間違えるのが玉にきずだが、Tロックの方がTクロスよりも全長が12.5cm、全幅が6.5cm、全高は1cmだけだが大きい。興味深いのは、全長はTロックの方が長いのに、荷室容量はTクロスの方が大きいこと。これがズバリ、Tロックのコンセプトを現していて、キモはなんと言ってもリア・ゲートの傾斜がなだらかなクーペ・スタイルにある。はっきり言ってデザイン優先。その潔さのおかげで真面目なVWとは思えない、いい意味での派手さがある。デザインのために荷室を狭くするなんて、これまでのVWでは考えられないが、Tクロス、Tロック、ティグアンの三兄弟で役割が分担できるなら話は別だ。室内が広くて荷物も積めるティグアンがあってこそのTロックというわけだが、本国ではカブリオレも発表されているというからますます面白い。


2リッター直列4気筒DOHCターボ・ディーゼルの最高出力は150ps/3500-4000rpm、最大トルクは340Nm/1750-3000rpm。トランスミッションはツインクラッチ式7段自動MT。

試乗したのはTロックTDIのスタイル・デザイン・パッケージ。価格は404.9万円。TクロスがFFのガソリン・エンジンのみだったのに対して、TロックはFFのディーゼルのみの設定だ。2リッターの4気筒ディーゼルは、パワーが150馬力、最大トルクも340Nmもあるので、動力性能的には申し分ない。実際乗ってみると、低速トルクの分厚いディーゼルはSUVとの相性も良く、とても扱いやすい。街中はもちろんのこと、ちょっとした峠道も難なくスイスイと登るし、高速道路も走ってみたが、ここでも余裕でクルージングできた。


さすがに兄貴分だけあって、Tクロスと比べると乗り味に落ち着きがあると思ったが、どうやら試乗車のスタイル・デザイン・パッケージが履く17インチのタイヤが影響しているらしい。以前エンジン本誌で19インチのRラインに乗った記者からTロックは乗り心地が硬いと聞いていたが、全然そんなことはない。走りの質感はTクロスより高級な感じがして、スポーティだがしっとりしている。17インチ・タイヤで乗り心地も良く、ルーフもツートンが選べる。Tロックのイチオシは乗って良し、見て良しのスタイル・デザイン・パッケージだと思った。


なだらかなルーフ・ラインと傾斜の緩やかなリア・ゲートが特徴のクーペ・スタイルがカッコいい。
ボディ・カラーと連動するトリム類が室内をポップに見せる。デザインそのものは大人っぽいので全体的にオシャレな印象だ。
ゴルフがベースなので、室内空間そのものはポロ・ベースのTクロスよりも広い。
2021年モデルから新世代インフォテイメントを採用。常時コネクティッドとなり、新しいオンライン・サービスの「We connect」に対応し、USBポートも急速充電に対応したtype Cに変更されている。
Tロックの荷室容量は445リットルで、Tクロスの455リットルより少ない。

スタイル・デザイン・パッケージで特におすすめは、試乗車のボディ・カラーのラヴィエンナブルー・メタリックとターメリックイエロー・メタリックだ。この2色を選ぶと室内のトリムの色もコーディネートされる。以前、本誌の取材で取り上げたRラインの内装は、黒とグレーでいかにもVWっぽかったが、今回の試乗車は全然印象が違うと思った。ちなみにボディ・カラーは全部で9色あり、前出のラヴィエンナブルー・メタリックとアトランティックブルー・メタリックではホワイト・ルーフとなり、それ以外はブラック・ルーフになる。色は大事なオシャレの要素。VWにしてはめずらしく色遊びができるのだから、派手目をおすすめしたい。


絶大な安心感があるティグアン

そんなTロックと比べると、グッと大人っぽくなるのがティグアンだ。TロックやTクロスから乗り換えると、あまりの違いにびっくりする。真面目で質実剛健。これぞVWの伝統と言った感じだ。TロックやTクロスがVWの新世代SUVだとすると、ティグアンは旧世代ということになるが、そのかわりと言ってはなんだが、絶大な安心感もある。


三兄弟のなかでは唯一4WDが選択できるが、4WDを選ぶと組み合わされるエンジンは自動的に2リッター直4のディーゼルとなる。車両価格は、ベース・グレードのガソリンのTSIコンフォートラインが408.9万円なのに対して、4駆ディーゼルのTDI・4モーション・コンフォートラインは48万円高の456.9万円。今回試乗した特別仕様車のTDI・4モーションRライン・ブラック・スタイルはさらに高く、554万円もする。


グッと落ち着いた雰囲気のティグアンの室内。ひと眼見てVWのクルマだとわかる真面目なデザインだ。シートやトリムは特別仕様車のブラック・スタイルの専用。当然、質感も高い。

試乗車のドアを開けると、さすがに500万円オーバーだけあって、雰囲気はグッとプレミアムだ。チタン・ブラックの専用シートの質感も申し分ない。ただし、ブラック・スタイルの売りは室内よりも外側で、グリル、前後バンパー、ドアミラー・ハウジング、リア・スポイラー、ルーフレール、そしてホイールなどがブラック・カラーの意匠が施された専用デザインとなる。


フロント・バンパーの大きなエア・インテークと真っ黒のホイールが随分とスポーティな見た目だが、乗ってみても同じ印象だった。225/45R19サイズのピレリ・スコーピオンを履く乗り心地は明らかにTロックやTクロスよりも硬い。ビシッと引き締められていて、かなりスポーティに仕立てられていると思ったが、一方で高級感もある。


搭載するディーゼルは、基本的にTロックと同じで、スペックも変わらない。車重がTロックより140kgも重いので、その分加速は若干劣る気がするが、元々十分なトルクがあるので不足は感じない。特に高速道路を走った感じは、三兄弟のなかではティグアンが一番落ち着いていて、速度が上がれば上がるほどフラットになって安定感も優れていると思った。


三兄弟のなかでは唯一4WDの設定があるティグアン。悪天候や降雪時は強い味方となるはずだ。荷物をたくさん積んで、家族全員で長距離を一気に走るようなときに、一番重宝するのはティグアンだろう。

モデル・ライフの長いティグアンは別として、TクロスとTロックの国内販売状況をみると、昨年の中頃でTクロスは輸入SUVモデルのトップという大人気ぶりで、なんとVWのなかでは主力のゴルフに次ぐ第2位。もっとすごいのは、すでにポロより売れているというから驚くほかない。ちなみに遅れて発売されたTロックも猛追しており、2台合わせるとトップのゴルフを抜く。こんなことがかつてあっただろうか。それに加えて欧州では次から次にSUVの、特にコンパクト・クラスのモデルがどんどん登場している。コンパクトSUVは、まさに戦国時代だ。


文=塩澤則浩(ENGINE編集部) 写真=望月浩彦


■VW TクロスTSI 1stプラス
駆動方式 フロント横置きエンジン前輪駆動
全長×全幅×全高 4115×1760×1580mm
ホイールベース 2550mm
車両重量 1270kg
エンジン形式 直列3気筒DOHC直噴ターボ
総排気量 999cc
エンジン最高出力 116ps/5000-5500rpm
エンジン最大トルク 200Nm/2000-3500rpm
変速機 7段自動MT
サスペンション形式 前/後 ストラット式/トーションビーム式
ブレーキ 前/後 通気冷却式ディスク/ディスク
タイヤ 前後 215/45R18
車両価格(税込) 337.9万円


■VW TロックTDIスタイル・デザイン・パッケージ
駆動方式 フロント横置きエンジン前輪駆動
全長×全幅×全高 4240×1825×1590mm
ホイールベース 2590mm
車両重量 1430kg
エンジン形式 直列4気筒DOHC直噴ターボ・ディーゼル
総排気量 1968cc
エンジン最高出力 150ps/3500-4000rpm
エンジン最大トルク 340Nm/1750-3000rpm
変速機 7段自動MT
サスペンション形式 前/後 ストラット式/トーションビーム式
ブレーキ 前/後 通気冷却式ディスク/ディスク
タイヤ 前後 215/55R17
車両価格(税込) 404.9万円


■VW ティグアンTDI 4モーションRライン・ブラック・スタイル
駆動方式 フロント横置きエンジン4輪駆動
全長×全幅×全高 4500×1860×1675mm
ホイールベース 2675mm
車両重量 1730kg
エンジン形式 直列4気筒DOHC直噴ターボ・ディーゼル
総排気量 1968cc
エンジン最高出力 150ps/3500-4000rpm
エンジン最大トルク 340Nm/1750-3000rpm
変速機 7段自動MT
サスペンション形式 前/後 ストラット式/マルチリンク式
ブレーキ 前/後 通気冷却式ディスク/ディスク
タイヤ 前後 255/45R19
車両価格(税込) 554万円


(ENGINEWEBオリジナル)


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