ホンダは8年ぶりにフルモデルチェンジするコンパクトSUV、ヴェゼルのニューモデルを世界同時発表。それに先駆け、報道陣に実車が公開された。ボディ・サイズやエンジンのスペックなど詳細な諸元は公表されなかったが、新しくなったヴェゼルからは確実な進化が感じられた。
スタイリングは、フィットから始まったホンダの新たなデザイン・テイストを採用。フロントはボディに溶け込む横基調のグリル、逆スラント気味に配されるノーズとヘッドライトで、先代とはまったく異なるシャープな雰囲気を演出している。
ボンネットをはじめ、ボディ側面、そこからリアにかけての面構成は、抑揚を控えながらも陰影を上手に用いることで立体的に見せている。全高は明らかになっていないが、先代より低くなった印象を受けるルーフ・ラインは後席の頭の位置あたりまでは傾斜させないことで、伸びやかなシルエットを実現。全体的に、アウトドア色を適度に取り入れているライバルのヤリス・クロスと比べると都会派というか、土の匂いをあまり感じさせないデザインだ。
このシンプルな造形のボディ・パネルは室内環境の適正化にも貢献している。運転席からの視界は、車内からウインド・スクリーンを隔てて外側へとつながる前後方向のラインと、水平基調のダッシュボードによる横方向のラインともに直線的なので、距離感がつかみやすく、また視覚的なノイズが少ない。車両感覚の把握や集中力の欠如を防止するのに寄与してくれそうだ。リア・ウインドウはファストバック風に傾斜しているが、後方視界は悪くない。
全高が低くなったが、ヒップ・ポイントは従来モデルどおり高めの設定なので、頭上の余裕は大きくないが、ルーフ後席の頭の位置あたりまで低くならずに適度な高さを維持しているため、身長175cm程度の筆者が後席に座っても圧迫感に悩まされずに済む。
しかし、室内空間で特筆すべきは膝元の広さだ。運転席で無理のないポジションをとっても、後席には脚を組み替えられるほどのスペースがあり、前席のスライドを最後端まで下げても膝が当たることはなかった。ホイールベースが大きく伸びているようには見えなかったので、ホンダが得意とするセンタータンク・レイアウトをはじめ、パッケージングに費やした労力がもたらした賜物なのだろう。
荷室はやや長くなったと感じるリア・オーバーハングのおかげか、奥行きにゆとりがある。ハイブリッド・モデルの場合、室内寄りの床下にはバッテリーが搭載されるというが、手前側には長靴なども収まりそうなほど深い収納コンパートメントが設置されている。
パワートレインは1.5リッター・ガソリンと、1.5リッター・ガソリン+モーターのハイブリッドの2タイプ。ガソリンは従来モデルと同形式だと思われるが、ハイブリッドはデュアルクラッチ式7段自動MTと1つのモーターを組み合わせたものから新型フィットと同じ2モーター式を採用している。
グレードはガソリン車が廉価モデルの「G」1機種、ハイブリッドが「X」「Y」「PLaY 」の3機種。2トーンのボディ・カラーや専用のシート表皮などの専用装備で華やかな仕立てとなるPLaYは前輪駆動のみで、ほかのグレードではガソリン、ハイブリッドとも前輪駆動と4WDが選択できる。ハイブリッドの後輪はモーター駆動だ。プラットフォームをはじめ、機能部分については不明な部分も多いが、センタータンク・レイアウトをはじめ、新型フィットと共有する部分は多いはずだ。
コネクテッド技術対応の通信機を標準装備にしたほか、新機能の追加や従来機能の性能向上により運転支援装置の向上も図っている。日本での正式発表は4月となる予定だ。
文=関 耕一郎
(ENGINEWEBオリジナル)
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