新しいスポーツカーを開発していることを明らかにしたロータスはそれにともない、エリーゼ、エキシージ、エヴォーラの3モデルの生産終了を発表した。1995年に初代エリーゼが登場して以来、エリーゼ・シリーズはロータスを支えてきた、いやロータスそのものだったといっても過言でないだろう。それほどまでロータスにとって大きな存在だったエリーゼの最終モデルに清水草一氏が試乗。エリーゼとの思い出を交えつつ、最後のエリーゼについて語ってくれた。
タイプ131なるニューモデルの登場に伴って、ロータス・エリーゼの生産が終了するという。エリーゼが誕生したのは1995年だから、四半世紀以上にわたる長寿であった。
思い起こせば、私が初めて乗らせていただいたエリーゼは、かの池沢早人師先生(『サーキットの狼』の作者)が並行輸入で取り寄せた、超最初期モデルであった。
当時私はフェラーリにすべてを捧げる人間だったため、他のスポーツカーをおしなべてザコ扱いしていたが、池沢先生が興奮しつつ、「このクルマ、凄いんだよ。とにかく軽くてコーナーが速いんだ」と語る様子を拝見し、「なるほどそうなのか」と一目置いたのだった。
納車早々の試走にお供させていただいた私は、そのあまりにもスパルタンかつハードボイルドな乗り味に、「これはフェラーリの対極に位置するスポーツカーであるようだ」と、感銘を受けたのだった。当時の自分の無知蒙昧ぶり、実にお恥ずかしい。
当時のエリーゼのローバー・エンジンは非力で、フィーリングも恐ろしいほど凡庸だった。その意味でも、エンジン命のフェラーリの対極に位置したわけだが、フェラーリ崇拝者の自分の目には、ハンドリングだけに命を懸けるその姿が、あまりにも禁欲的に映ったことも告白せねばなるまい。
しかしその禁欲的なマシンは、本当に速かった。ツクバサーキットにて、池沢先生の駆るエリーゼと自分のフェラーリ348tbとでスポーツ走行を楽しんだ際は、ダンロップコーナーの先でチギられ、文字通り後塵を拝した。直線で詰めても、ブレーキングやコーナリング性能は段違いで、まったく歯が立たなかった。
「エリーゼ、マジで速え!」
意外なほど大きくロールしながら、信じられない速度でコーナーを駆け抜けるエリーゼの後ろ姿が、いまだ私の脳裏に焼き付いている。まさに『サーキットの狼』。
あれから四半世紀。
その間エリーゼは何度か大きな変更を受けたが、基本はまったく変わらず、魅力もまったく失わなかった。すさまじい偉業である。
今回私は、エリーゼのラストを飾る「スポーツ220II」に試乗させていただいた。それは、四半世紀前に見せつけられたあの魅力はそのままに、あらゆる面で飛躍的にグレードアップを果たしていた。
さすがに最初期型に比べれば、車両重量はかなり重くなったが、それでもわずか904kg。エンジンはトヨタ製1.8リッターDOHCスーパーチャージャーで220馬力。パワーアップの恩恵により、最初期型にはなかった快適装備が備わり、乗り心地までしなやかになった。それでもパワステは付かないところが漢である。
パワートレインに関しても、スペックのみならずエンジン・フィールも100倍向上。「トヨタ」というブランド名からは想像もつかない、ほぼレーシング・カーの如き炸裂と咆哮に痺れた。220馬力を路面に伝えるミッションは、スケルトン構造の6段マニュアル。演出もキレている。
あの、軽さだけで稼いでいたエリーゼが、トヨタ・エンジンをベースに、ここまで快楽的に仕上げるとは、男子三日会わざれば刮目して見よ。三日どころか26年だが。
四半世紀前、ロータス・ヨーロッパの如く操縦性にすべてを捧げ、その他の欲を潔く切り捨てていたエリーゼが、ほとんど何も失わずにここまで進化したことに、感動せずにいられない。
■ロータス・エリーゼ・スポーツ220
駆動方式 ミドシップ横置きエンジン後輪駆動
全長×全幅×全高 3800×1720×1130mm
ホイールベース 2300mm
トレッド 前/後 1455/1505mm
車両重量 904kg
エンジン形式 直列4気筒DOHC16V機械式過給器
総排気量 1798cc
ボア×ストローク 80.5×88.3mm
エンジン最高出力 220ps/6800rpm
エンジン最大トルク 250Nm/4600rpm
変速機 6段MT
サスペンション形式 前後 ダブルウィッシュボーン式
ブレーキ 前後 通気冷却式ディスク
タイヤ 前/後 195/50R16/225/45R17
車両価格(税込) 682万円
文=清水草一
(ENGINEWEBオリジナル)
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