2021.03.06

CARS

フェラーリ崇拝者を唸らせた軽量スポーツカーの王者、ロータス・エリーゼの最終モデルに試乗した

1995年に登場した初代エリーゼは丸型2灯式ヘッドライトでちょっと愛らしい顔つきだったが、最新モデルは釣り目型の現代的な意匠を持つものになった。(写真=柏田芳敬)

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新しいスポーツカーを開発していることを明らかにしたロータスはそれにともない、エリーゼ、エキシージ、エヴォーラの3モデルの生産終了を発表した。1995年に初代エリーゼが登場して以来、エリーゼ・シリーズはロータスを支えてきた、いやロータスそのものだったといっても過言でないだろう。それほどまでロータスにとって大きな存在だったエリーゼの最終モデルに清水草一氏が試乗。エリーゼとの思い出を交えつつ、最後のエリーゼについて語ってくれた。


初代エリーゼ同様、丸型4灯式テールライトを採用。ただし、外側がウインカー、内側がスモール&ブレーキの組み合わせだったのに対し、最新型は外側がウインカーとスモール&ブレーキのコンビ、内側がバックランプとなる。(写真=神村 聖)

フェラーリが後塵を拝す

タイプ131なるニューモデルの登場に伴って、ロータス・エリーゼの生産が終了するという。エリーゼが誕生したのは1995年だから、四半世紀以上にわたる長寿であった。


思い起こせば、私が初めて乗らせていただいたエリーゼは、かの池沢早人師先生(『サーキットの狼』の作者)が並行輸入で取り寄せた、超最初期モデルであった。


当時私はフェラーリにすべてを捧げる人間だったため、他のスポーツカーをおしなべてザコ扱いしていたが、池沢先生が興奮しつつ、「このクルマ、凄いんだよ。とにかく軽くてコーナーが速いんだ」と語る様子を拝見し、「なるほどそうなのか」と一目置いたのだった。


納車早々の試走にお供させていただいた私は、そのあまりにもスパルタンかつハードボイルドな乗り味に、「これはフェラーリの対極に位置するスポーツカーであるようだ」と、感銘を受けたのだった。当時の自分の無知蒙昧ぶり、実にお恥ずかしい。


当時のエリーゼのローバー・エンジンは非力で、フィーリングも恐ろしいほど凡庸だった。その意味でも、エンジン命のフェラーリの対極に位置したわけだが、フェラーリ崇拝者の自分の目には、ハンドリングだけに命を懸けるその姿が、あまりにも禁欲的に映ったことも告白せねばなるまい。


空調の吹き出し口をはじめ、インパネの形状は現代的になったが、アルミ製バスタブ・フレームがむき出しなのは今も変わらず。MTのシフト・レバーはリンケージが丸見え。(写真=神村 聖)
バケット・シートが標準装備。リクライニング機構が備わらないだけでなく、スライドも運転席側しかできない。(写真=神村 聖)
アルミ製のペダルがスポーティな雰囲気を作り出す。ペダル・フィールはいずれも素晴らしい。(写真=神村 聖)

しかしその禁欲的なマシンは、本当に速かった。ツクバサーキットにて、池沢先生の駆るエリーゼと自分のフェラーリ348tbとでスポーツ走行を楽しんだ際は、ダンロップコーナーの先でチギられ、文字通り後塵を拝した。直線で詰めても、ブレーキングやコーナリング性能は段違いで、まったく歯が立たなかった。


「エリーゼ、マジで速え!」


意外なほど大きくロールしながら、信じられない速度でコーナーを駆け抜けるエリーゼの後ろ姿が、いまだ私の脳裏に焼き付いている。まさに『サーキットの狼』。


感動せずにいられない

あれから四半世紀。


その間エリーゼは何度か大きな変更を受けたが、基本はまったく変わらず、魅力もまったく失わなかった。すさまじい偉業である。


今回私は、エリーゼのラストを飾る「スポーツ220II」に試乗させていただいた。それは、四半世紀前に見せつけられたあの魅力はそのままに、あらゆる面で飛躍的にグレードアップを果たしていた。


1.8リッター直4はトヨタ製の2ZR型をベースに、ロータスが機械式過給器いわゆるスーパーチャージャーを装着するなどのチューニングを施している。出力は220ps/250Nm。1トンを切る車体には十分なパワーを持つ。(写真=神村 聖)
エンジンの後ろには小さいながらも荷室スペースが備わる。ただし、エンジンの熱がそのまま伝わるので温度管理が必要なものは入れられない。(写真=神村 聖)

さすがに最初期型に比べれば、車両重量はかなり重くなったが、それでもわずか904kg。エンジンはトヨタ製1.8リッターDOHCスーパーチャージャーで220馬力。パワーアップの恩恵により、最初期型にはなかった快適装備が備わり、乗り心地までしなやかになった。それでもパワステは付かないところが漢である。


パワートレインに関しても、スペックのみならずエンジン・フィールも100倍向上。「トヨタ」というブランド名からは想像もつかない、ほぼレーシング・カーの如き炸裂と咆哮に痺れた。220馬力を路面に伝えるミッションは、スケルトン構造の6段マニュアル。演出もキレている。


あの、軽さだけで稼いでいたエリーゼが、トヨタ・エンジンをベースに、ここまで快楽的に仕上げるとは、男子三日会わざれば刮目して見よ。三日どころか26年だが。


四半世紀前、ロータス・ヨーロッパの如く操縦性にすべてを捧げ、その他の欲を潔く切り捨てていたエリーゼが、ほとんど何も失わずにここまで進化したことに、感動せずにいられない。


試乗車はスポーツ220。残念ながらメーカー側の注文はすでに打ち切られているので、新車を手に入れたい場合は、市中在庫=ディーラーが持っている在庫を探すしかない。(写真=神村 聖)

■ロータス・エリーゼ・スポーツ220
駆動方式 ミドシップ横置きエンジン後輪駆動
全長×全幅×全高 3800×1720×1130mm
ホイールベース    2300mm
トレッド 前/後 1455/1505mm
車両重量 904kg
エンジン形式 直列4気筒DOHC16V機械式過給器
総排気量 1798cc
ボア×ストローク 80.5×88.3mm
エンジン最高出力 220ps/6800rpm
エンジン最大トルク 250Nm/4600rpm
変速機    6段MT
サスペンション形式 前後 ダブルウィッシュボーン式
ブレーキ 前後    通気冷却式ディスク
タイヤ 前/後    195/50R16/225/45R17
車両価格(税込) 682万円


文=清水草一


(ENGINEWEBオリジナル)


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