2022年に生誕150周年を迎えるピート・モンドリアンの展覧会が3月より開催される。あの有名な「コンポジション」シリーズはいかにして生まれたのか? モンドリアンの意外な軌跡を探る。
ファッション・ブランドと日本のまんがやアニメのコラボレーションが花盛りだ。この冬、グッチは『ドラえもん』、ロエベは『となりのトトロ』とタッグを組み、服やバッグ、ショウウインドウにおなじみのキャラクターが登場している。一瞬びっくりするけれども、ブランドが構築してきた世界を決して壊さず、むしろそれぞれのデザインを引き立たせているのがおもしろい。このような形でファッションが他分野のクリエイティブを取り込んだ元祖とはなんだろう? と思い返してみると、1965年にイヴ・サンローランが発表した「モンドリアン・ルック」に行きついた。
画家モンドリアンといえば誰もが真っ先に思いつくのは赤、青、黄の三原色と黒い線で構成された抽象画。サンローランはこの作品をモチーフにした直線的なAラインのドレスを考案し、世界的な大ブームを引き起こした。サンローランのすごいところは、このドレスを見た人に「元ネタも見てみたい」と思わせたこと。実際、サンローランはモンドリアンの作品を所有していたそうなので、心の底から好きだったのだろう。とても幸せなコラボレーションだ。
モンドリアンの代名詞ともなっている《コンポジション》シリーズ、じつは彼がこの絵を描くようになったのは40代後半になってからのことだ。アムステルダムで絵を学んでいたモンドリアンは、くすんだ色合いの風景画を描いてみたり、ゴッホに感動して強烈な筆致の絵をしたためたり、スーラの点描技法をなぞってみたり、ときには神智学にはまりこみ象徴主義的な絵画にチャレンジしてみたりと、新しい画風を取り入れつつ、自分のスタイルを模索し続けていた。だから、パリ以前のモンドリアンの作品は非常にバラエティ豊か。本当に同一人物が描いたものなのか疑問に思ってしまうほどだ。
そして、ピカソやブラックによるキュビスムの作品を見て衝撃を受けたモンドリアンは一念発起、40歳でパリへ活動の拠点を移すことになった。やがて、彼の作品はどんどんシンプルなものになっていき、10年近い年月を経て、とうとう色と線だけの抽象画《コンポジション》シリーズに至ったのだ。とはいえ、モンドリアンは晩年はまた作風を変化させていくのだったが。
3月下旬から開催されるモンドリアン展は、そんな彼の道のりを辿っていく展覧会。彼の葛藤を知ってから《コンポジション》シリーズを見てみると、線と色だけの絵にもかかわらず、なぜかちょっとうれしくなってしまうのだった。
『生誕150年記念 モンドリアン展 純粋な絵画をもとめて』は3月23日~6月6日までSOMPO美術館(東京都新宿区西新宿1-26-1)で開催(日時指定入場制)。7月10日~9月20日まで豊田市美術館(愛知県豊田市小坂本町8-5-1)に巡回予定。詳細はハローダイヤル050-5541-8600 またはホームページ https://www.sompo-museum.org/ まで
文=浦島茂世(美術ライター)
(ENGINE2021年4月号)
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