ブラバムやマクラーレンのF1マシンやロードカーの「マクラーレンF1」など、数々の名車を生み出してきたカー・デザイナーのゴードン・マレーが久々に世に放った最新作、「ゴードン・マレー・オートモーディブT.50」に早くも派生モデルが登場した。「T.50sニキ・ラウダ」。往年の名F1ドライバーであるニキ・ラウダの名前を関したこのスーパースポーツ・モデルは一体どんなクルマか。スーパーカー超王の山崎元裕氏が解説する。





ホンダ・エンジンを搭載し16戦15勝という前代未聞の大記録を打ち立てたマクラーレンMP4/4をはじめ、いくつもの世に名を遺すF1マシンを設計開発したゴードン・マレー。F1の世界を引退してからはマクラーレンで究極のロードカーとの呼び声も高い3座のミドシップ・スポーツ「マクラーレンF1」など市販車の開発を行い、2007年に独立。ゴードン・マレー・デザイン社を立ち上げ、数多くの設計開発を行ってきた。そんな彼がカー・デザインに携わってから50年が経過したのを祝うため、自らの手で作り出したのがゴードン・マレー・オートモーティブT.50。ゴードン・マレー・デザイン社の姉妹社として設立されたゴードン・マレー・オートモーティブ社初のモデルで、マクラーレンF1同様、3座レイアウトを持つミドシップ・スポーツである。
T.50が2020年秋に姿を現してから半年、世界が待ち望んでいた新型ハイパー・カーに早くも派生車種となる「T.50sニキ・ラウダ」が誕生した。これはT.50のサーキット走行専用車で、T.50の正常進化型となる。T.50sニキ・ラウダの姿を見た瞬間に、「チャンスがあるなら乗ってみたい」と思ったのは当然の衝動と言えるだろう。しかしそれと同時に、私の記憶は1970年代に戻った。ゴードン・マレーが設計し、T.50同様、リアにダウンフォースを生み出すためのファンを備えた「ファンカー」として伝説を残したF1マシン、ブラバムBT46Bが世界を驚嘆させたことを思い出したのだ。
T.50sニキ・ラウダには、ルーフからテールへと向かうフィンにニキ・ラウダのロゴとサインが描かれている。何を隠そう、ラウダはBT46Bに唯一の勝利をもたらしたドライバーなのだ。それがゆえに、このクルマは2019年にこの世を去ったラウダのために捧げられたハイパー・カーであることを意味している。ラウダならばこれをどう評価するだろうか。ラウダならばこのマシンをどう走らせるだろうか。マレーの胸中には常にこのような意識があったのは当然だろう。


T.50Sニキ・ラウダは2月22日、ラウダの誕生日に発表された。正式な価格は発表されていないが、すでに今年の1月から生産が開始されているベース車のT.50が236万ポンド(約3億2600万円)で100台の限定数を瞬時に売り切ったことを考えると、それよりもさらに高価なものになるに違いない。ちなみに生産数は25台と発表されている。
マレーとそのチームは、古典なミドシップ・スポーツカーのプロポーションを持つT.50をベースに、エアロダイナミクスをさらに向上させるべくニキ・ラウダのボディ・デザインに取り組んだ。T.50よりもかなり長いフロント・アンダー・スポイラーを装着するとともに、ボディ・サイドの形状も変更。ルーフ後端には世界耐久選手権(WEC)のLMPマシンのようなフィンを追加し、さらにリアには大きなウイングを新設した。もちろんボディの後端にはBT46B同様、T.50の象徴でもある400mm径のファンを備える。
このファンによってフロア下を流れてくる空気の速度を増速、すなわちダウンフォースを高めることができるのだ。マレーによれば2つのエアロモードと、ドライバーが選択できる4つのモードが設定されるという。F1GPにおいてファンカーのBT46Bはデビュー戦となった1978年スウェーデンGPでラウダのドライブにより1勝したあとすぐ、ファンカーの使用が禁止され、GPから排除されてしまった。そのことからも、ファンの効果がいかなるものかを想像することができるだろう。



T.50Sニキ・ラウダのリア・ミドシップに搭載されるエンジンは、T.50と同じコスワース設計の3.9リッター V型12気筒を再設計したもので、最高出力は711ps/11500rpmに(ルーフの上に設置されたRAM誘導エアボックスにより、実際には725psを発揮する)。最大トルクの485Nmも9000rpmで発生する。レブリミットは1万2100rpm。相当な高回転型エンジンだ。組み合わされるミッションは、自動クラッチを備え、ステアリングのパドルで変速を行うXtrac製のIGS 6段MT。ギアボックスでも軽量化の取り組みは徹底しており、総重量ではT.50から5kgが低減されたという。なお、車両の乾燥重量はT.50の957kgに対して、852kg。1トンを切るT.50ですら驚異的な軽さなのに、それをさらに100kg以上も削ってきた。
ボディの基本構造体となるのはもちろんCFRP製のモノコック・タブ。前後プッシュロッド式のダブルウィッシュボーン・サスペンションもサーキット走行のためにそのセッティングが見直され、フロントで87mm、リアで116mm車高はT.50から下げられているほか、カスタマーは自分自身の理想的なセッティングをゴードン・マレー・オートモーティブ社のスタッフとともに、サーキットで探り出すことができる。
T.50sニキ・ラウダのカスタマーは、あえてこう表現するのならば、ラウダ自身になることができるのだ。マレーにとっても、50人の新たなラウダが誕生することは、何よりの大きな喜びといえるのではないだろうか。



文=山崎元裕
(ENGINEWEBオリジナル)
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