買収や合併で歴史の中に消えたブランドの復活劇はよくある話だが、不思議な縁が取り持った、これほど幸せなストーリーはそうそうない。
きっかけは1919年生まれの英国の自動車ブランド、アルヴィスの復活だった。アルヴィス社自体がなくなって久しかったが、過去の図面や販売履歴など歴史的な資料がほぼ現存し、車体からエンジンまで、すべてを当時と同じ手法で製造できるノウハウは残されていた。そこで2017年、現会長のアラン・ストート氏の元、50年ぶりに量産車の製造が再開されることになった。さらに翌2018年、かつてアルヴィスの国内販売を自社関連企業が行っていたことを知った明治産業の竹内眞哉氏がストート氏を訪問。アルヴィスの魅力に惹かれた彼は日本における総代理権を取得する。世界の自動車部品を扱う同社の新事業として、そしてポルシェ911(991)やインターメカニカ、ロールス・ロイスのシルバークラウドなどに乗る1人のエンスージァストとして、アルヴィスに着目したのだった。
ストート氏は著名なアルヴィスの6モデル限定で注文を受け、製造をスタート。昨年上陸した4.3リッターのヴァンデン・プラス・ツアラーは竹内氏のオーダーによる21世紀の最初のアルヴィスで、コンティニュエーション・モデルと呼ばれている。さらにオリジナルの1937年型のヴァンデン・プラス・ツアラーも入手し、ミッレミリアなどのイベントにも参加している竹内氏はいう。「往年のアルヴィスの輸入、販売や、国内に現存する車両のサポートも行います」。いやはや、万全の体制とはこのことだ。これぞ真のブランドの復活である。コンティニュエーション・モデルの価格は4.3リッターが38.5万ポンド(1ポンド=約152円換算で5852万円、英国港渡し)~、その他のシリーズが22.5万ポンド(3420万円)~だ。
文=上田純一郎(ENGINE編集部) 写真=山田誠人
(ENGINE2021年5月号)
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