2021.07.18

CARS

5.3リッター12気筒の贅沢! ちょっと古いジャガーXJ-SとXJSコンバーチブルの魅力を語りあう

ジャガーXJSコンバーチブルに乗るエンジン編集部アライが、同じ5.3リッターV12を積むクーペのオーナーに会い、ちょっと古い12気筒ジャガーの魅力を語りあった。

時間がゆっくり流れる

昨年末に買ったジャガーXJSV12コンバーチブルに乗ると、時間がゆったりと流れだし、心の底から飛ばす気がなくなる。春の全国交通安全運動が始まっても官憲のことがあまり気にならないし、黒いトヨタ・アルファードが無粋な割り込みをしてきても、カチンと来ない。急かされるような荒っぽい運転とは正反対の操作に知らず知らずのうちになる。そして、時間がゆっくり流れるというのは、とても贅沢なことなのだということを実感している。

ジャガーXJSシリーズに乗るほかのオーナーはどんなことを感じながら、愛車との生活を楽しんでいるのだろう?

私のジャガーを診てもらっているジャガーの専門店、ワイズに同じ5.3リッターV12を積むクーペのオーナーを紹介してもらった。XJとSの間にハイフンがある前期型のクーペ、ジャガーXJ-SV12に乗る忠岡大樹さんである。



淡いブルーのクーペ

朝日を逆光にして現れた低いノーズが近づいてくると、ボディ・カラーは淡いブルーであることがわかった。まるで新車のような輝きである。前期型の特徴であるおにぎり型のテールランプがいい。運転席から忠岡さんが降りてきて、さらにびっくり。私が想像していたよりずっと若いオーナーだったからだ。

「35歳です。前期型の最終モデルである1991年式を昨年の6月に買いました。前からいいなあと思っていたんですけど、古いジャガーは壊れるというイメージがあって手が出せなかった。でも、昨年の1月に東京・表参道に停まっている実車を見たら気持ちが抑えられなくなりました。雷に打たれるようなショックだったんです。なんて、カッコイイんだろう! と」




忠岡さんがこだわったホイール。XJ40用のものをバレル研磨し、ピカピカにして装着している。また、フロント・サスペンションのシム(台座)を取り、車高を5mm下げたという。

テールランプが直線基調になった後期型のXJSでも良かったけれど、コンバーチブルではなく、あくまでもクーペを探したという。

「中古車屋さんに“こちらです”と案内されて、これを見たときもカッコイイ~! 
と思いました。ドアの開閉音なんかにシビレちゃって、即買いです」

30代の忠岡さんだが、これまで多くのクルマを乗り継いできた。

「最初に乗ったのは、日産フェアレディZ(Z33型)です。それからBMW M3(E92型)、日産プレジデント(250型)、アルファ・ロメオ・スパイダー(ブレラ顔)、BMW M5(E60型)、ポルシェ911カレラS(991型)、メルセデス・ベンツ350SL(R230型)、そしてメルセデス・ベンツSクラス(W222型)。いまはSクラスとこのジャガーの2台持ちです」

ジャガーXJ-SはEタイプの後継として1975年にデビュー。北米を主要市場とし、高級グランドツアラーとして開発された。忠岡さんは購入後、ステアリング・ホイールをウッド製のものに交換した。

前期型のメーター・ナセルにはユニークな形状の電圧計、油圧計、燃料計、水温計が並ぶ。



クーペは2+2の4人乗り。


初めての英国車

ジャガーXJ-Sは忠岡さんにとって、初めてのイギリス車である。

「これまでドイツ車が多かったので、ドイツ車との違いを強く感じます。やっぱり、工業製品としてはドイツ車の方が良く出来ていると思います。ドイツ車って合理性を追求し続けているじゃないですか。スピード、居住性、使い勝手、経済性、安全性など、どれをとってもこれまで僕が乗ったドイツ車の方が上。でも、XJ-Sには道具として優れているという以外の言わば“無駄”みたいなものに魅力があるんです」


忠岡さんを虜にしているのは、まずスタイリングだ。

「真正面から見たときに、フロント・バンパー下がぐっと絞り込まれているんです。そこは本当に好きですね。それから、空力のためと言われているリア・ウィンドウ周りのフィン。淡いブルーの外装色と濃い青のレザー内装の組み合わせも気に入っています。駐車場に停めたあとに、振り返ってもう一度見るというクルマは本当に久しぶりです。実は、買ったときは試しに1年ぐらい乗ってみようと思ったんです。でも、どんどん愛着が湧いて、いまは可能な限り長く持っていたいですね」

4.7mを超える車体を2人だけのために使った贅沢なオープン。

エンジンはどちらも5344ccのV型12気筒SOHC。最高出力275ps/5250rpm、最大トルク41.1kgm/2800rpmを発生、3段ATを介し後輪を駆動する。


どんどん好きになる理由は、初めての自然吸気12気筒エンジンにもあるようだ。

「あまり上まで回さないで、低い回転域でゆったり走る感じがいいですね。これが12気筒の醍醐味かなと。トルクの出方にまったくガサツなところがない。大排気量のクルマがどんどん少なくなっているじゃないですか。燃費が悪いし、無駄と言えば無駄なんだから、今後乗れなくなるかもしれない。意を決して買って良かったと思っています」


1991年のマイナーチェンジでXJ-SからXJSへと車名変更。

コンバーチブルは2座で、シートの後ろには収納スペースが設けられている。

メーターはXJ40と同様のものとなった。

コンバーチブルとクーペのトランク容量はほぼ同じ。旅行鞄2個は余裕で飲み込む。幌を開けても荷室には干渉しない。

このドライブ・フィールは私も大好きだ。豊かなトルクに任せ、浅いスロットル開度で悠然と高速道路を走るときのなんとも言えない気持ち良さ。3段しかないATだが、かえってトップでシューッと引っ張っていく加速感も素晴らしい。ステアリング操作やスロットルの開閉に伴うクルマ全体のデリケートかつ上品な反応、そしてたおやかという言葉がぴったりの乗り心地でもって、トロけそうな心持ちになるのだ。

忠岡さんと今度一緒にツーリングに行きましょうということになった。合理性という言葉が似合わないジャガーXJ-SとXJSコンバーチブル2台で走るツーリングは、無駄を楽しむ旅になるだろう。

「無事に目的地に着けますかね?」と笑う忠岡さん。


大丈夫! グランドツーリングとは冒険旅行ですよ、忠岡さん。



文=荒井寿彦(ENGINE編集部) 写真=茂呂幸正

(ENGINE2021年6月号)

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