2021.07.11

CARS

堂々と平凡を目指せ フォルクスワーゲン・ティグアンのマイナーチェンジ版に乗る

全長4.5m級のコンパクトなボディながら、フォルクスワーゲンの現行ラインナップでは最上位SUVとなるティグアンがマイナーチェンジ。現在、ティグアンが属するCセグメント・サイズのSUVは日本でも人気を博している。日本車ではマツダCX-30、輸入車ではプジョー3008、シトロエンC5エアクロスなど内外にかかわらず強力なライバルも多い。そんな中で新しいティグアンはどのような出来を有していたのだろうか。

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売れ筋の「エレガンス」に乗る

現行型は2017年に発売された2代目だが、改良を受けた新型の主な特徴は例によって進化したドライバー・アシスト機能とコネクティビティ、そしてパワートレインが変更されたこと。ただし、これまでの2リッター・ディーゼル・ターボ+4WDのTDI・4モーションはラインナップから落ち、4WDは2021年後半のデリバリーとなる高性能バージョンのティグアンR(2.0リッターターボで320ps!)のみとなった。ほかはすべて従来型の1.4リッターTSIから換装された1.5リッター直4ガソリン直噴ターボを積む前輪駆動だけと、いささか寂しい展開である。

「アクティブ」、「エレガンス」、「Rライン」という3種類の通常ラインナップのうち、試乗車のエレガンスは真ん中、装備充実でタイヤ・サイズも18インチで穏当のため、おそらくは販売面でも中心モデルであろう。最新のADAS(安全運転支援システム)はもちろん、デジタル・メーターやナビを含むインフォテインメント・システム「ディスカバープロ」、LEDマトリックスヘッドライトの「IQライト」(ダイナミック・ターンインジケーター付き)などが標準装備されるが、車両本体価格は483万9000円である。







真っ当な実用車

1.5リッター直噴ターボは「TSIエボ」と呼ばれるエンジンだが、150psと250Nmのスペックは狙ったように従来型と同一、ただしギアボックスはこれまでの湿式クラッチのDSG(デュアルクラッチ式自動MT)は6段から7段に進化している。ダウンサイジングを少々見直したこの1.5リッター・ユニットは「EA211 evo」とも呼ばれる新世代の直噴エンジンだが、これにはいくつかの仕様があり、ティグアンのものにはマイルド・ハイブリッドも可変ジオメトリー・ターボ(VTG)も採用されていない。何年も前に登場しているTSIエボの“フルフル仕様”にはVTGのほかにミラーサイクルや350バール燃料噴射装置、プラズマ溶射シリンダーなどの新技術が投入されているはずなのだが、この辺りについても積極的な発言がないのがまた寂しい。ティグアンの1.5リッターには気筒休止装置も搭載されるが、従来型の1.4リッター(16.3km/リッター)よりもJC08モード燃費(15.5km/リッター)が下がっているのも腑に落ちないところだ。

街中や一般道で軽く踏んで走る分には軽快でキビキビしているが、回しても気持ち良いとはいえず、山道で飛ばすと苦し気でスロットル開度が大きくなるとレスポンスもちょっと物足りないが、実用的ではある。長く使える真っ当で実用的な製品こそフォルクスワーゲンの真髄だと思う。通常時でも615リッターという大容量の荷室を必要とする人にとっては大変役に立つ。ちょっと価格が高めではあるが。











文=高平高輝 写真=宮門秀行

(ENGINE2021年8月号)

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