2021.07.27

CARS

メルセデスのエントリーEV、EQA250に試乗 さすがベンツは安心感が違う!

EQCに続くメルセデス・ベンツの電動車サブ・ブランド「EQ」の新作が日本に上陸。今回は取り回ししやすいコンパクトなボディを持つGLAがベースの電気自動車だ。兄貴分よりも約250万円安い価格設定を含め、さらなる電動車の普及を目指す。

現実的な値段になってきた

さすがはメルセデス、エントリー・クラスのEVであっても、立派な押し出しの男前で、細部のトリムなどの身だしなみもクールで隙がない。全長4.5m級のコンパクトSUVとしては堂々とした存在感がある。EQA250はメルセデス・ベンツの電動車サブ・ブランド「EQ」シリーズのエントリー・モデルで、兄貴分のEQCに次ぐ第2弾、小型SUVのGLAをベースにしたEVである。



フロントに積まれて前輪を駆動するモーターのスペックは最高出力190psと最大トルク370Nm。容量66・5kWhの駆動用リチウム・イオン電池は床下に巧妙に格納され、航続距離はWLTCモードで422kmとされている。日産リーフe+のGを引き合いに出すと、そちらのモーターは218psと340Nmで電池容量は62kWh、航続距離は458km(同じくWLTCモード)という具合で、このクラスのEVとしてはどちらも標準的なものと言えるだろう。ちなみにベース価格はEQA250が640万円でリーフe+Gはおよそ500万円である。EVもこのぐらいのスペックだと少しずつ現実的な値段になってきているようだ。

インストルメントパネルの眺めはGLAなど他の最新世代メルセデス・モデルとほぼ同じ。シフト・パドルによって回生ブレーキによる減速レベルを計5段階にコントロールできる。普通充電と直流急速充電のポートはそれぞれボディ右後部の別の位置に設置。実際の充電性能はアウディとともに今最も安定していると言える。


洗練されている

先頃発表されたEQS(Sクラス相当のEVセダン)はメルセデス初のEV専用プラットフォームを採用しているそうだが、EQAはあくまでGLAベースだけにパッケージングにまったく影響がないわけではない。リーフのように増えたバッテリー分をそのまま床下にはみ出させているようなことはないが、特にバッテリーパックが二段重ねとなる後席の足元フロアは明らかに持ち上げられているし(地上高はGLAと変わらず)、シート位置も高いのだが、十分なフロアとの高低差が確保できていない。したがってGLAと比べて、後席パッセンジャーは膝を持ちあげるような姿勢、すなわち体育座りを強いられ、あまりくつろげない。ラゲージスペースも床が若干高くなっており、容量はGLAよりも90リッターほど少ない340リッターというが、こちらのほうは実用上まず不満はないだろう。





加えて、車重に起因するボディコントロールの難しさが、路面が荒れているところでは露わになる。このクラスにはさすがにエア・サスペンションまでは導入できず、可変ダンパー(AMGラインに含まれるオプション)のみの仕様だが、不整路ではボディの上下動を抑えきれず、フラット感に乏しい。静粛で滑らかな良路での乗り心地との落差がちょっと大きいのが惜しい。また上り坂のタイト・コーナーで加速するような場合には一瞬だが明らかに前輪が空転することがあった。これも強力なトルクを瞬時に発生する前輪駆動のEVの難点だろう。前輪駆動のほうが効果的に回生できるが、トラクションの確保では後輪駆動が有利だ。



その点を除けば、さすがに最新世代EVだけあって、制御は洗練されているし、なかなかパワフルでもある(0-100km/h加速は8.9秒、最高速は160km/hという)。ドライブ・モードのセレクターに加えて、ステアリング・ホイールにはGLA同様のシフト・パドルが備わり、左のダウン側を引けば2段階に回生ブレーキ・レベルを強くすることが可能、アップ側を引けばコースティングするようになり、わずかに回生するデフォルトと合わせて4段階、さらにアップ側を長引きするDオート(フロント・レーダーで前走車などを検知して回生ブレーキを自動制御する)を足して計5段階にブレーキ回生を切り替えることができる。

取材車は20インチ・タイヤを含むAMGラインを装着しているが標準は18インチ。


今回は長距離を試すことができなかったが、以前のEVより表示された走行距離が当てになることと、急速充電が安定していることも特徴だ。エアコンの作動や走り方によって急激に残り走行可能距離が減ったり、急速充電器でも期待したほど充電できないということがほぼない。効率的な水冷システムを搭載しているEQAも当然同様、これが風任せ(空冷)のリーフとの決定的な違いである。EQAは現在アウディeトロンと並んで、温度管理がしっかり安定しており、急速充電(100kWまでのチャデモ規格に対応)でもしっかり“入る”EVと言っていい。経験した人はうなずいてくれるはずだが、メーターに表示された数字が信用できるのは何より安心なのである。

■メルセデス・ベンツEQA250
駆動方式 フロント横置きモーター前輪駆動
全長×全幅×全高 4465×1835×1625mm
ホイールベース 2730mm
トレッド(前/後) 1585/1585mm
車両重量(車検証記載前後軸重) 1990kg(前1080kg:後950kg)
モーター形式 交流誘導モーター
モーター最高出力 190ps/3600-10300rpm
モーター最大トルク 370Nm/1020rpm
変速機 1段固定
電池総電力量 66.5kWh
一充電走行距離(WLTCモード) 422km
サスペンション形式(前/後) ストラット式/マルチリンク式
ブレーキ(前/後) 通気冷却式ディスク/ディスク
タイヤ 前後 235/55R18
車両価格(税込) 640万円

文=高平高輝 写真=望月浩彦

(ENGINE2021年8月号)

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