2021.08.27

LIFESTYLE

デビュー・アルバムが世界15カ国で1位を記録! 社会現象になった“18歳”の実力

シンガーソングライターのオリヴィア・ロドリゴが世界中の音楽チャートを席巻している。爆発的人気の理由は一体、どこにあるのか?

思春期特有の感情をリアルに綴る


前々から気になっていたわけではない。気づいたときにはスーパースターになっていた。今年1月のデビュー曲「ドライバーズ・ライセンス」が全米全英で初登場1位を記録すると共に、Spotify史上最大のヒットに。5月(日本は6月)に出た初アルバム『サワー』も15カ国で1位を獲得し、現在18歳のオリヴィア・ロドリゴは「デビュー・シングルとデビュー・アルバムの両方で1位を獲得した最年少アーティスト」となった。言わば社会現象だ。



慌てて聴いてみたが、初めは今までいなかった新しいタイプという印象はなく、楽曲は90年代に流行ったポップやロックを想起させた。ただどの曲にも強力なフックがあり、そこから歌詞を気にしてみると、思春期特有の苛立ちや嫉妬心などが非常にリアルに綴られている。例えばバラードの「ドライバーズ・ライセンス」は、彼女の体験した切ない失恋を綴った日記のような歌詞。そこで歌われている元カレは誰で、浮気相手の「ブロンドの女の子」は誰なのかとゴシップ的な話題が大きくなったのもヒットの要因のひとつだった。アルバム1曲目の「ブルータル」は90年代オルタナ・ロックっぽい狂暴なギターリフとふてくされた歌い方が印象的で、「今が人生の黄金期だって言われるけど、私はいっそ消えてしまいたい」と、歌手デビュー後の自分にふりかかった出来事への不満を投げつけている。この曲のようなオルタナ・ロック調からフォーキーなバラードまで、アルバムは動と静、あるいは激情と冷静さを交錯させて進んでいく。


赤裸々な歌詞と澄んだ歌声がZ世代の共感を集め、全米全英を含む15カ国で1位を記録したデビュー作『サワー』(上が通常盤、左はデラックス・エディション)。敬愛するテイラー・スウィフトを始め、ロードやパラモアらの影響も濃く表れている。(ユニバーサル・ミュージック)

「ある価値観で縛られたくない」というのは全体に通底する主張だが、それを激情的に歌う曲も、切々と歌う曲も、達観したトーンで歌う曲もある。苛立つ日があれば、泣きたい日もあり、クールでいたい日もある。どれかひとつじゃないことが、ティーンにとってはリアルなのだ。そんなことを思いながら聴き返すと、現代的なソングライターとしての実力と、感情表現の優れたシンガーとしての実力、加えてMVやTikTok動画、ジャケットなどを通しての統一した美学を持ったアーティストであることがハッキリする。Z世代はもちろん、ミレニアル世代も惹きつけて彼女が爆発的な人気を得た理由は、そのあたりにあるのだろう。


文=内本順一(音楽ライター)

(ENGINE2021年9・10月号)

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