2021.09.02

CARS

635馬力の超ド級SUV、ベントレー・ベンテイガに残された唯一の12気筒モデル、スピードに試乗!

8気筒エンジンが中心となった新型ベンテイガに残された唯一の12気筒モデル、それが“スピード”だ。
635ps/900Nmのパワー&トルクを誇る超ド級SUVに試乗した。

12気筒でなければ気が済まない粋人に

新型になり、ノーマル・モデルはすべて8気筒になったベントレー・ベンテイガだが、世の中にはどうしても12気筒でなければ気が済まないという粋人もいる。その声に応えるべく残されたのが、この“スピード”だと考えればいいだろう。

それだけに、内外装ともに見るからに特別感たっぷりの贅が凝らされている。たとえば、スッキリとしたスポーティな顔つきになったノーマル・モデルに対して、ダークティントに塗られたフロント・グリルを持つスピードは、スポーティな中にも、いかにも高級車然とした威厳を漂わせている。標準装備されるタイヤはひと回り大きな22インチ。リアには巨大なテールゲート・スポイラーが装着され、只者ではない威圧感を至る所から放射しているのだ。



内装もハンパではない。ステアリングからシートまで、あらゆるところに同色のレザーとアルカンターラをうまく組み合わせ、異なる質感によるオシャレな雰囲気を醸しだしているのに加えて、シート・サイドなど要所要所にコントラスト・カラーのレザーをあしらって、特別感を演出している。さらに、シート上部のダイヤモンド・キルトのスティッチに至っては、わざわざメインのレザー色とコントラスト・カラーに合わせた2本の糸を使って縫っているという凝りよう。これはもう、マリナーという自前のビスポーク・アトリエを持つベントレーでなければできない技といっていいだろう。



そしてもちろん、何よりもスピードを特別なものにしているのは、フロント・フードの下の、これまたクルーにある自前の工場で熟練の職人により手組みされる6リッターW12エンジンだ。なんと組み上げには、1台のベンテイガ・スピードの完成に必要な作業時間の10分の1が費やされているという。そのパワー&トルクは635ps/900Nm。しかも、単にパワフル&トルキーなだけではなく、状況に応じて片バンクを停止させ、しかも温度低下を防ぐために停止させるバンクを切り替える気筒休止システムが付くなど、効率性が追求されている点も特筆すべきだろう。



ウルトラ・スムーズ

座り心地のいいシートに着き、スタート・ボタンを押してW12に火を入れると、その瞬間こそ存在を主張するかのようにブフォーンと大きな雄叫びを上げたが、すぐに安定したアイドリング状態に入って、高級車らしい静寂が室内を支配した。

走り出しはウルトラ・スムーズ。まさに高級車が動き出す時の厳かにスルスルと進んでいく感触そのものだ。エアサスのおかげで、22 インチの大径タイヤを履いているにもかかわらず、乗り心地は抜群にいい。といって、フワフワするような柔らかさではなく、タイヤが路面を捉えている感触はしっかりと伝えながら、しかし余計な振動や揺れは排除するスポーティなしなやかさとでも言えばいいだろうか。高速道路に乗り、少しアクセレレーターを踏み込んでみても、スクワットの姿勢をとることなどない。シューンという小気味いいサウンドを響かせながら、気持ち良く吹け上がっていくW12気筒の感触は本当に素晴しかった。





もちろん、2.5t超の車体は軽快とは言えない。どこから踏んでもスーッとスムーズに加速していくが、V8モデルのようなスポーティさとは明らかに違う。ステアリングを切った時にも、常に鼻先の重さを感じさせられる。それでもクルマが良くできているので、なんの違和感を感じることもなく曲がれてしまうのだ。

基本はメーカー推奨のベントレー・モードにしていれば、どんな時でも最適な設定がもたらされるが、スポーツ・モードも試してみた。それでもやや足が硬く、エンジンのピックアップが良くなるだけで獰猛な獣に変身するわけではない。ただし、スロットルを閉じた時にパンパンと排気管が音を立てるのに閉口して、すぐにベントレー・モードに戻した。



このクルマにはそんな走りは似合わない。むしろ、あり余るパワーを必要以上に使うことなく、それこそ気筒休止を存分に使って巡航するような走りを楽しむことにこそ、真骨頂があるように思うのだ。余裕っていいなぁ、私はそんな独り言をつぶやきながら、12気筒の気持ち良さを満喫して時間の許す限り走り続けた。

■ベントレー・ベンテイガ・スピード
駆動方式 エンジン・フロント縦置き4WD
全長×全幅×全高 5145×1995×1755mm
ホイールベース 2995mm
トレッド(前/後) 1690/1695mm
車両重量 2560kg(前軸1460kg、後軸1100kg)
エンジン形式 W型12気筒DOHCツインターボ
排気量 5945cc
最高出力 635ps/5000rpm
最大トルク 900Nm/1750-4500rpm
トランスミッション 8段AT
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン/エアスプリング
サスペンション(後) マルチリンク/エアスプリング
ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク
タイヤ(前後) 285/40R22
車両本体価格(税込) 3345万円

文=村上 政(ENGINE編集長) 写真=柏田芳敬

(ENGINE2021年9・10月号)

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

いますぐ登録

タグ:

advertisement

PICK UP



RELATED

advertisement