2021.08.31

CARS

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これぞまさしく究極のドライバーズカー ベントレー・フライングスパーの洗練された走りを堪能する

ベントレーのフラグシップ・サルーンとして君臨するフライングスパー。ショーファー・ドリブンカーとして申し分ない立派な躯体ととろけるような快適性を備えながらも、ベントレーが誕生時から失っていないスポーティな走りを兼ね備えることでドライバーズカーとしても存分に楽しめる二面性を有する大人のサルーンだ。今回はフライングスパーのV8も駆り、モーター・ジャーナリストの高平高輝氏が動き始めたばかりのせわしない都会をあとに、安らぎを求めて高原を目指した。

BENTLEY FLYING SPUR V8
高級車に相応しい滑らかさ

目覚めたばかりのオフィス街の静寂を乱さぬように、深々とベントレー・フライングスパーは進む。交差点で一時停止すると、微かなV8ツインターボのざわめきがフッと消え失せ、朝の支度に忙しい鳥の声だけが静謐な室内を満たす。都心のビルの谷間を通り抜けているとは信じられないほどだ。ブレーキを放すとほんのわずかに身震いするだけでエンジンが再スタート、滑らかに粛々とフライングスパーは滑り出した。







一糸乱れぬ洗練された振る舞い

滑空するようにゆっくりと静かに移動する様子からは、このクルマが最高速300km/hを超える超高性能サルーンであることをうかがい知るのは難しいはずだ。強力無比の4.0リッターV8ツインターボ・エンジンを搭載するアクティブAWD車でありながら、この上なく従順で気難しさも猛々しさも一切見せない。歩むようなスピードから300km/hオーバーまでを一糸乱れぬ洗練された振る舞いでカバーするのが現代のベントレーである。スピードが出るだけでは高性能車ではない。今も昔も高性能車ほどゆっくりと滑らかに走るのが得意でなければ、ラグジュアリー・カーを名乗ることはできない。

もっとも、低く長く、スリークなボディの存在感は鮮烈で人目を引く。しかもこのクルマには外装の光り物がすべてグロスブラック・トリムとなる「ブラックラインスペック」と、「パティーナ」という新しいオプション・カラーが備わっているからなおさら。パティーナはゴールドのように見えるが実はベージュ系という。実際に金色ほど派手ではなく、光の具合でライムグリーンのようにも見える何ともエレガントな微妙なトーンで、それにブラックアウトされたグリルやフェンダー・ベントとの組み合わせは不思議な迫力を撒き散らしている。ちなみに“Patina”とは本来は緑青、あるいは古びたものの艶や風格を意味する言葉で、クラシック・カーの世界ではお馴染みの用語である。







“良い趣味”をベントレーが提案

2020年で生産中止となったミュルサンヌに代わってベントレーのフラッグシップ・サルーンを名乗るのがフライングスパーである。「コンチネンタル」が付いた復活初代のフライングスパーから数えて3代目の新型は、2020年にまず6.0リッターW型12気筒モデルが導入されており、続いてV型8気筒ツインターボ・モデルが追加された。今回試乗に連れ出したのはファーストエディション・スペックを装備したV8搭載のフライングスパーである。

「ファーストエディション」には、専用エンブレムと刺繡、デュアルフィニッシュヴェニア(ヴェニアとはウッドトリムのこと。ただしこのクルマはハイグロス・カーボンファイバー仕様)、イルミネーション付き電動格納式フライングB、ロテーティング・ディスプレイ、ディープパイル・マット、コントラスト・ステッチ、そしてマリナードライビングスペック(内容はダイヤモンドキルティング・レザー、3Dレザー・トリム、レザー・ヘッドライナー、22インチ・ホイールなど)、ツーリングスペック(ACCなどのADAS装備やナイトビジョン、ヘッドアップディスプレイ)、ムードライティング・スペックといったこれ見よがしに豪華絢爛ではない特別な装備が追加されている。

ただし、そもそもベントレーともなれば“吊るし”のままで乗る人はほとんどいないはず、それこそパイピングの色まで細かく指定するのが当たり前の“誂えもの”である。あらゆるビスポークに応えてくれるということは、発注するカスタマーのほうも相応の知識と経験、そして“良い趣味”を持たなければならない。かつて本拠地クルーを取材した時に、ビスポーク部門であるマリナーの責任者に「とんでもない突飛な色の組み合わせや、非常識な注文を受けた場合はどう対応するんですか?」と訊ねたら、「粘り強く説得します。ほとんどすべてのお客様が我々のお薦めに納得してくださいます」と平然と答えてくれた。それもよくある質問だったらしい。1品1品を自分ご好みにオーダーできるのがマリナー、そしてベントレーを選ぶ醍醐味ではあるが、さすがにすべての仕様を細かく選ぶのはちょっと手間という現代の顧客のためのベントレーの「お薦めセット」がファーストエディションなのである。







ベントレー・フライングスパーの詳細はこちらから

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